卵巣腫瘍は、初期症状が出にくい病気の一つで、気付いたときには進行しているケースも少なくありません。卵巣腫瘍ができるとお腹の出方が変わることがあるとされていますが、誰にでも起こり得るものなのでしょうか。
本記事では、卵巣腫瘍の基本情報やお腹の出方が変わる原因、代表的な初期症状などを解説します。ぽっこり出たお腹の原因は、もしかすると卵巣腫瘍かもしれません。早期発見のためのポイントもご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
<この記事で分かること>
- ● 卵巣腫瘍でお腹の出方が変わる原因は、腫瘍の肥大や腹水の発生、お腹の張りなどが原因
- ● 卵巣腫瘍は必ずしも悪性ではないが、初期症状が出にくい病気で、気付いたときには進行しているケースも多い
- ● 卵巣腫瘍を早期発見するには、定期的な検診に加え、違和感を覚えたときに速やかに病院を受診することが大切
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卵巣腫瘍とは?
女性は子宮の左右に一つずつ卵巣を持っています。この卵巣にできた腫瘍が、卵巣腫瘍です。多くの場合は片側の卵巣に発生しますが、まれに両側に生じるケースもあります。
卵巣は通常2~3cmで、親指ほどのサイズです。しかし、卵巣腫瘍が発生して肥大すると、10〜20cmまで大きくなることも珍しくありません(※1)。
卵巣腫瘍の種類はさまざまで、主に以下のような種類があります。
- ● 嚢胞性卵巣腫瘍(液体がたまるタイプ)
- ○ 漿液性嚢胞腺腫(しょうえきせいのうほうせんしゅ)
- ○ 粘液性嚢胞腺腫(ねんえきせいのうほうせんしゅ)
- ○ 成熟嚢胞性奇形腫(せいじゅくのうほうせいきけいしゅ)
- ○ チョコレート嚢胞(チョコレートのうほう)
- ● 充実性卵巣腫瘍(固いしこりを伴うタイプ)
- ○ 線維腫(せんいしゅ)
- ○ 莢膜細胞腫(きょうまくさいぼうしゅ)
- ○ ブレンナー腫瘍(ブレンナーしゅよう)
また腫瘍の性質(悪性度)によって次の3つに分類されます。
- ● 良性
- ● 境界悪性(良性と悪性の中間)
- ● 悪性
「腫瘍=がん」と思われがちですが、悪性の卵巣腫瘍は全体の10%程度とされています(※2)。ただし、毎年13,000人程度が卵巣がんと診断され、5,000人程度の方が命を落としているという報告もあるため、油断は禁物です(※1)。
※1 参考:公益社団法人 日本産科婦人科学会.「卵巣の腫瘍とがん」.
https://www.jsog.or.jp/citizen/5715/
(参照2025-01-30)
※2 参考:公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会.「卵巣腫瘍」.
https://jsgo.or.jp/public/ransou.html
(参照2025-10-26)
卵巣腫瘍ができるとお腹が出る?
「卵巣腫瘍ができるとお腹が出る」と聞いたことがある方もいるでしょう。しかし、卵巣腫瘍の発生によって、必ずしもお腹が出るわけではありません。
それほど大きくない卵巣腫瘍であれば、見た目に分かるほどお腹が出るのはまれです。ただし、病状の進行や腫瘍の性質によっては、下腹部がぽっこり出てきたり、腹部が張って見えたりすることがあります。
卵巣腫瘍でお腹の出方に変化がある原因
では、なぜ卵巣腫瘍によってお腹の見た目に変化が起こることがあるのでしょうか。以下で主な原因を3つご紹介します。
腫瘍の肥大
卵巣腫瘍によってお腹の形に変化が見られる主な原因の一つが、腫瘍そのものの肥大です。
卵巣腫瘍は人によって成長の度合いが異なりますが、中にはバスケットボールほどの大きさになるケースもあります。腫瘍があまりにも大きくなると、下腹部が前方に突き出し、妊娠しているかのように見えることもあります。
また腫瘍の肥大によって周囲の臓器も圧迫されるため、下腹部を中心としたお腹に違和感が生じるようになることも少なくありません。
腹水の発生
腹水の発生も、卵巣腫瘍でお腹の出方に変化がある原因です。卵巣腫瘍ができると、お腹の中(腹腔内)に「腹水」が発生することがあります。腹水とは、腫瘍から分泌される物質や炎症反応の影響で、お腹に水がたまった状態のことです。
腹水が増えてくるとお腹に張りや圧迫感が生じるようになり、見た目にも変化が出ることがあります。なお、腹水が多くたまるのは主に悪性腫瘍の場合です。良性腫瘍でも腹水を認めることがありますが、たまる量は一般的に少ないとされています。
お腹の張り
卵巣腫瘍が大きくなり、腸管を圧迫することでお腹が張り、外見上お腹が出て見えることがあります。
前述した通り、卵巣腫瘍が大きくなると、周囲の臓器も圧迫されます。この際に腸管が圧迫されると、腸はスムーズに働けません。すると、ガスや便が蓄積しやすくなるので、お腹が張ってしまいます。この際に、お腹の張りによって、通常よりもお腹が前方に出て見えることがあるのです。
このような腸の圧迫による張りが続くと、腸内環境のバランスが崩れやすくなります。その結果、消化や栄養の吸収効率が下がり、体調を崩しやすくなる場合もあるため注意しましょう。
卵巣腫瘍の初期症状
卵巣腫瘍は初期症状が出にくい病気といわれていますが、中には何らかの変化を感じ、早期発見につながる方もいます。
ここからは、卵巣腫瘍の代表的な初期症状について見ていきましょう。
腹部の違和感
卵巣腫瘍の代表的な初期症状の一つが、腹部の違和感です。
先ほども触れた通り、卵巣腫瘍が肥大すると臓器が圧迫されます。これによって、お腹の張りや膨満感が生じるケースは少なくありません。また腹水の発生や腸内環境の悪化によるお腹の張りも起こることがあります。
健康な状態の下腹部は、張りがなく柔らかい状態です。もし慢性的にお腹の張りや膨満感などの違和感が生じる場合は、卵巣腫瘍の可能性があります。
排尿トラブル
卵巣腫瘍ができると、排尿トラブルが起こることもあります。主な排尿トラブルは、以下の通りです。
- ● 頻尿
- ● 残尿感
- ● 夜間頻尿
腫瘍が大きくなると、こういったトラブルが起こることがあります。これらの症状は、膀胱炎などの感染症の引き金となることもあるため、注意が必要です。
排便トラブル
排便トラブルも、卵巣腫瘍の初期症状の一つです。
以下のような症状がある場合は、卵巣腫瘍の可能性があります。
- ● 便が出にくい
- ● 排便に時間がかかる
- ● 排便回数が減った
- ● 排便をしてもすっきり感がない
- ● 便の形状が変化した
- ● 強い排便痛がある
これらの症状は、腫瘍の肥大により直腸が圧迫されることが原因です。排便痛が起こると、日常生活の質の低下にもつながるため、小さな変化でも見過ごさないようにしましょう。
食欲不振・吐き気
卵巣腫瘍ができると、食欲不振や吐き気といった症状が現れることもあります。
食欲不振や吐き気は、肥大した腫瘍により、胃や腸などの消化器官が圧迫されることが原因です。急に食欲がなくなったときや、気持ち悪さがあるときは、放置しないようにしましょう。
特に卵巣がんが進行している場合、がん細胞が分泌する物質によって、吐き気を感じたり、実際に嘔吐したりすることもあります。
腰痛・下腹部痛
初期に感じることはまれですが、腰痛や下腹部痛が起こることもあります。これは、肥大した腫瘍が周辺の組織や神経を圧迫することが原因です。以下のような症状が出ている場合は注意しましょう。
- ● 腰の鈍い痛み
- ● 骨盤周辺の痛み・違和感
- ● 片方の下腹部のみの痛み
また腫瘍が破裂したり、卵巣・卵管がねじれたりすると、かなり激しい痛みを感じることもあります。
卵巣腫瘍を早期発見するために
初期症状が出にくい卵巣腫瘍は、気付いたときには進行しているケースも少なくありません。ここからは、卵巣腫瘍を早期発見するために心掛けたいことを解説します。
定期的に検診を受ける
卵巣腫瘍を早期発見するためには、定期的な検診を受けるようにしましょう。
初期症状が全くなくても、検診を受けたことで卵巣腫瘍が見つかるケースは少なくありません。少なくとも年に一回は婦人科検診を受けるようにしましょう。
定期的に検診を受ければ、その他の婦人科系疾患の早期発見につながる可能性もあります。特に40代以降は卵巣がんの発症リスクが上がるため、毎年の習慣にしておきましょう。
違和感があればすぐに病院を受診する
違和感があった際にすぐ病院を受診することも、卵巣腫瘍の早期発見につながります。
お腹の張りなどの違和感は、生活習慣の乱れなどによっても起こることがあるため、放置する方も少なくありません。しかし、知らず知らずの間に、卵巣腫瘍が大きくなっている可能性もあります。また卵巣腫瘍以外の病気が原因かもしれません。
できるだけ早く適切な対処をするために、違和感を覚えたらすぐに病院で診てもらうようにしましょう。
卵巣腫瘍と間違いやすい病気
卵巣腫瘍と間違えやすい病気の一つに「子宮筋腫」があります。
子宮筋腫とは、子宮の筋肉の層に発生する良性の腫瘍のことです。30歳以上の女性の30%程度に、子宮筋腫ができるとされています(※)。良性の腫瘍ですが、過多月経や不妊につながる恐れがあるため、油断はできません。
また「腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ)」も、卵巣腫瘍と間違われることがあります。
これは、虫垂などにできた腫瘍が破裂し、お腹の中に粘液と腫瘍細胞が広がってしまう病気です。お腹にたまった粘液が卵巣を腫れさせてしまうため、卵巣腫瘍と誤診されることがあります。またまれに卵巣自体に粘液を分泌する腫瘍ができることもあり、これも腹膜偽粘液腫が卵巣腫瘍と混同される理由です。
腹膜偽粘液腫が起こると、お腹が出る他、粘液が硬くなって大きな塊となり、周辺の臓器を圧迫することがあります。腸閉塞を引き起こし、栄養失調につながることもあるため、注意が必要です。
いずれの場合も自己判断は難しいため、何らかの違和感を覚えたら、病院を受診するようにしましょう。
※参考:公益社団法人 日本産科婦人科学会.「子宮筋腫」.
https://www.jsog.or.jp/citizen/5711/
(参照2025-01-30)
卵巣腫瘍の治療法
卵巣腫瘍の治療法には、主に以下の方法があります。
| 治療法 | 内容 |
|---|---|
| 経過観察 | 特別な治療は行わず、定期的に腫瘍の変化をチェックする。 |
| 薬物療法 | 点滴や内服薬などを用いる、進行した卵巣腫瘍や悪性腫瘍に行う方法。悪性の場合は、抗がん剤治療が中心。 |
| 手術療法 | 腫瘍の他、子宮や卵巣、卵管、リンパ節などを切除する。切除範囲はがんの悪性度や進行レベルによって異なる。場合によっては、問題のない子宮や卵巣は温存が可能。 |
| 免疫細胞治療 | 患者さん自身が持つ免疫細胞を使って行う治療。患者さんの血液から採取した免疫細胞を増殖させたり、がんを攻撃するように覚えさせたりして、再び体内に戻すことでがん細胞を攻撃する。 |
| 緩和ケア | 痛みや吐き気、精神的な苦痛を取り除くためのサポートを行い、患者さんの生活の質を高める。がん治療後だけでなく、治療中にも行われることがある。 |
どのような治療を行うかは、卵巣腫瘍のタイプや進行レベルなどによって異なります。まずは医師と相談して、ご自身に合った治療法を選ぶことが大切です。
卵巣腫瘍の治療における選択肢について
卵巣腫瘍は初期症状が出にくい病気ですが、卵巣が大きくなったり腹水がたまったりすると、お腹が膨らんだり突き出したりすることがあります。「太ったわけではないのにお腹の出方が気になる」という方や、何らかの違和感がある方は、できる限り早く病院を受診しましょう。
もし卵巣腫瘍と診断された場合でも、治療法は一つではありません。腫瘍の種類や進行度、体調などを踏まえ、医師とよく相談しながら適切な治療を選択することが大切です。
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