肝臓がんの痛みは進行度や腫瘍の大きさによって異なりますが、主に右上腹部に生じるケースが多いです。原因は、主にがん細胞が広がることによる肝臓被膜の圧迫や周囲の組織の炎症とされています。
本記事では、がん患者さんとそのご家族に向けて、肝臓がんの痛みの原因や進行別の症状、治療方法を解説します。
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肝臓がんの痛みの特徴とは?
肝臓がんは、肝臓にできるがんです。発症の要因には、B型・C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎の感染が主なものとして挙げられます。また、アルコールの過剰摂取の他、脂肪肝や肝硬変といった肝臓にダメージを伴う疾患も発症リスクを高める要因です(※)。
初期症状はほとんど自覚できない場合が多いですが、病状がひどくなると右上腹部やリンパ節が痛くなることがあります。また進行してがんが大きくなると、圧迫感があるような痛さを感じる可能性もあります(※)。
※参考:国立がん研究センター.「肝臓がん(肝細胞がん)について」.
https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/about.html ,(参照2023-10-06).
肝臓がんが引き起こす痛みの原因
肝臓がんが引き起こす痛みの原因には、主に以下の3つが挙げられます。
- ●肝臓がんが悪化している
- ●肝臓そのものが広がっている
- ●肝臓がん周辺で炎症が起こっている
原因1:肝臓がんが悪化している
肝臓がんが悪化すると、腫瘍が肝臓内部や周囲の組織を圧迫して痛みを引き起こす可能性があります。他にも倦怠感や黄疸、むくみなどが起きる可能性もあります。圧迫されるのは、肝臓内部だけではありません。内部の圧迫によって体の神経が刺激されることで、痛みを生じる場合もあります。
原因2:肝臓そのものが広がっている
肝臓そのものが拡張しているのも、痛みを引き起こす原因の一つです。
肝臓は薄い被膜に包まれており、腫瘍が大きくなって被膜が引き伸ばされると、右上腹部に鈍痛を感じる可能性があります。被膜には多くの感覚神経が存在しており、圧迫や引き伸ばしによる刺激で痛みが生じやすい構造になっています。
感覚神経とは、外部や体内からの刺激(温度、痛み、圧力など)を感知し、脳や脊髄に情報を伝える役割を持つ神経です。肝臓被膜がダメージを受けた際には、このような感覚神経の刺激により局所的な痛みが発生します。
原因3:肝臓がん周辺で炎症が起こっている
がんの進行や拡張以外にも、肝臓がん周辺で炎症が発生することで痛みが生じる場合があります。炎症が起こる原因としては、悪性腫瘍の成長による周囲組織への刺激や圧迫、また治療に使用される薬の副作用が挙げられます。
放置すると腫れや発熱を引き起こす可能性があるため、早めに主治医に相談しましょう。
肝臓がんの痛みの種類と進行した場合に見られる症状
肝臓がんの痛みの種類や症状には、以下のようなものが挙げられます(※1)(※2)。
- ●腹痛
- ●貧血
- ●腹部のしこり・圧迫感
- ●腹水
- ●下痢
- ●食欲不振
- ●倦怠感
- ●黄疸
- ●体重の大幅な変化
肝臓がんは、初期段階では症状がほとんど現れません。しかし、進行すると特定の部位に痛みが生じてきます。
また、さらに進行すると黄疸が現れる場合があります。黄疸とは、皮膚や白目が黄色く変色する症状です。発症する仕組みとしては、胆管が腫瘍によって圧迫されて胆汁の流れが妨げられ、ビリルビンという物質が血液中に増加するために起こります。尿や便の色が濃くなったり、薄くなったりする場合もあります。
がんがお腹の中で破裂すると、出血が起きて貧血を起こしたり、急激な痛みを伴ったりする場合があるため、上記のような症状が出た場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
※1 参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「肝臓がん(肝細胞がん)について」.
https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/about.html ,(参照2023-10-06).
※2 参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「肝がんの原因・症状について」.
https://www.ncc.go.jp/jp/information/knowledge/liver/001/index.html ,(参照2024-11-01).
肝臓がんによる痛みを軽減する方法
痛みをどのように軽減するのかは、患者さんの体の状態や希望によって異なります。痛みを和らげる方法の一つに、薬物療法や非薬物療法があります。
薬物療法を活用して痛みを緩和する
薬物療法とは、抗がん薬やホルモン療法薬などを使用して痛みを抑える治療法です。化学療法や内分泌療法として知られ、がんの悪化を抑えたり、腫瘍を小さくすることで痛みの軽減を図ります。また、放射線でがん細胞を攻撃する放射線治療と併用される場合もあります(※1)。
薬物療法は、直接がんを取り除くのが難しいときに推奨されている方法です。肝予備能(肝臓の機能がどれほど維持できているのかを示す指標)が良好な患者さんにも適用される場合があります(※2)。
※1 参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「薬物療法」.
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/index.html ,(参照2024-12-16).
※2 参考:一般社団法人日本肝臓学会.「肝癌診療ガイドライン2021年版」.
https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/medical/guideline_jp_2021_v3.pdf ,(参照2024-12-16).
非薬物療法でできることとは?
非薬物療法は、薬を使わずに肝臓がんによる痛みや不快感、メンタル面の不安を緩和する方法です。肝臓がんは、進行するにつれて腹痛や倦怠感、発熱などの症状がひどくなる可能性があります。非薬物療法では、直接的な痛みの緩和だけでなく、痛みから来る将来への不安を少しでも和らげるためのメンタルケアとしても実施されます(※1)。
非薬物治療法の例は、以下の通りです(※2)。
非薬物療法の具体例 | どのような治療法か |
---|---|
マッサージ | 筋肉の緊張をほぐし、血行を改善して痛みを軽減する |
内関(手首の内側に位置するつぼ)の指圧 | 手首の内側にあるつぼを刺激することで、痛みや不快感を和らげる |
TENS(経皮的末梢神経電気刺激) | 電気刺激を使って神経を活性化し、痛みを抑える |
ショウガ | 食べ物のショウガに含まれている成分を使って症状による不快感を軽減する |
漸進的筋弛緩法 | 全身の筋肉を順番に緩めることでリラックス効果を得る |
音楽療法 | 音楽によるリラクゼーション効果で、心理的な負担を和らげる |
イメージ療法 | 患者さんの心の中にあるイメージを膨らませながら、ポジティブな感情を引き出す |
医療者による相談・カウンセリング | セルフケアや薬の使用方法などを医療者から患者さん、ご家族に説明して不安を軽減する |
非薬物療法は、身体的な負担を和らげるだけでなく、患者さんの精神的な安定や生活の質の向上にも役立ちます。直接的に痛みを取り除く方法ではありませんが、療養期間を少しでも快適に過ごすためのサポートとして実施されます。
※1 参考:国立がん研究センター.「肝臓がん(肝細胞がん)治療」.
https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment.html ,(参照2024-12-16).
※2 参考:日本緩和医療学会.「非薬物療法」.
https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/gastro_2011/04_02.pdf ,(参照2024-12-16).
肝臓がんの治療法には、主な6つの選択肢がある
肝臓がんの治療法は、主に以下の6つです。
- ●手術療法
- ●塞栓療法
- ●放射線治療
- ●穿刺局所療法
- ●薬物療法
- ●免疫細胞治療
1. 手術療法:がんを直接取り除く
手術療法とは、肝臓がんを直接切除する肝切除、もしくは臓器移植者の肝臓を移植する肝移植で治療を進めていく方法です。
肝切除は、肝臓内のがんの数が1~3個のケースに当てはまる際に適用されます。切除後の肝不全になるリスクが高い腹水を除いて、がんが門脈や制脈などの脈管に転移しているときにも適用される可能性があります(※1)(※2)(※3)。
肝移植は、臓器提供者の肝臓を移植する治療法です。肝移植を受けるには、以下のいずれかの条件を全て満たす必要があります。
ミラノ基準 |
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---|---|
5-5-500基準 |
|
手術療法は根治を目指す方法ですが、肝予備能や患者さんの体調によって適応可能かが決定されます。
※1 参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「肝臓がん(肝細胞がん)治療」.
https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment.html ,(参照2024-12-16).
※2 参考:国立研究開発法人国立がん研究センター「肝がんの治療について」.
https://www.ncc.go.jp/jp/information/knowledge/liver/003/index.html ,(参照2024-12-16).
※3 参考:一般社団法人日本肝臓学会.「肝癌診療ガイドライン2021年版」.
https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/medical/guideline_jp_2021_v3.pdf ,(参照2024-12-16).
2. 塞栓療法:がんへの血液供給をとめ、細胞の成長を抑える
塞栓療法とは、カテーテルを用いて肝臓がんを養う血管を食いとめ、がん細胞への栄養供給を断つ方法です。具体的には、カテーテルを通じて動脈から薬剤や塞栓物質を注入することで血流を遮り、がんの進行を抑えます(※1)(※2)(※3)。
大きさが3cmを超える1〜3個のがん、または大きさに関わらず4個以上のがんがあり、直接がんを取り除けない場合に実施できる治療法です。
具体的には、抗がん薬を血管内に注入してから塞栓物質で血流を遮断する肝動脈化学塞栓療法(TACE)、もしくは抗がん薬を使わず血流遮断のみ行い、がんの増殖を抑える肝動脈塞栓療法(TAE)などの方法で治療を進めていきます。発熱や吐き気などの副作用が出る可能性があるため、数時間から半日ほどは安静状態を保つ必要があります。
※1 参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「肝臓がん(肝細胞がん)治療」.
https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment.html ,(参照2024-12-16).
※2 参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「肝がんの治療について」.
https://www.ncc.go.jp/jp/information/knowledge/liver/003/index.html ,(参照2024-12-16).
※3 参考:一般社団法人 日本肝臓学会.「肝癌診療ガイドライン2021年版」
https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/medical/guideline_jp_2021_v3.pdf ,(参照2024-12-16).
3. 放射線治療:がん細胞を放射線で攻撃する
放射線治療は、放射線の照射によってがん細胞を攻撃する治療法です。直接がんを摘出できない場合に選ぶ方法になります。骨に転移したがんによる痛みの軽減、脳への転移の防止を目的に実施されるケースもあります(※)。
以前は、放射線は肝臓に強い影響を与えるとして肝臓がんの治療には適していないとされていました。しかし、医療が進んで特定のがん細胞にピンポイントで照射できるようになったため、新しいがん治療法として適用されるケースが増えています。
がんの進行が著しく進んでいる場合は、陽子線や重粒子線を用いた放射線治療が行われる場合もあります(※)。
※参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「肝臓がん(肝細胞がん)治療」.
https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment.html ,(2023-07-21).
※参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「肝がんの治療について」.
https://www.ncc.go.jp/jp/information/knowledge/liver/003/index.html ,(2023-12-12).
4. 穿刺局所療法:針を使ってがんに直接処置を施す
穿刺局所療法とは、お腹に細い針を刺して、がんに直接処置を行う治療法です。3cm以下のがんが3個以下の場合に適用されます。代表的なものに、ラジオ波焼灼療法(RFA)や経皮的エタノール注入療法(PEIT)があります(※)。
RFAでは、針の先端から電気を流し、その高温でがん細胞を焼き切り死滅させる方法です。PEITは、注射針からエタノールを注入してがん細胞を死滅させます。体への負担は比較的少ないですが、発熱や腹痛などの副作用が一時的に見られる場合があります。
※参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「肝臓がん(肝細胞がん)治療」.
https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment.html ,(参照2024-12-16).
5. 薬物療法:薬でがんの進行を抑える
薬物療法は、抗がん薬や分子標的薬などを使用してがんの進行を抑える治療法です。手術療法や穿刺局所療法などが適用できない場合に選択されます(※1)。
初めて薬物療法を行う場合は、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法を一次治療として適用します。一次治療が効果を示さなかった場合や副作用が強い場合は、ソラフェニブやレンバチニブなどの他の薬剤に切り替えて治療を継続していく流れです(※2)。
薬ごとに副作用が異なるため、主治医と相談しながらどう進めていくのか決めていきましょう。
※1 参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「肝臓がん(肝細胞がん)治療」.
https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment.html ,(参照2024-12-16).
※2 参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「肝がんの治療について」.
https://www.ncc.go.jp/jp/information/knowledge/liver/003/index.html ,(参照2024-12-16).
6. 免疫細胞治療:体の免疫力を利用してがん細胞を攻撃する
免疫細胞治療は、患者さんの免疫システムを活性化させ、がん細胞を攻撃する治療法です。他の治療法とも併用でき、比較的体への負担が少ない治療法として近年注目されています(※)。
免疫細胞治療は、免疫チェックポイント阻害薬でがん細胞を攻撃するT細胞の働きを高めることを目的としています。免疫チェックポイント阻害薬とは、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにするための薬です。
現在、免疫チェックポイント阻害薬以外での治療は効果があるものとして科学的根拠が立証されていません。しかし、進行がんにも効果的とされており、副作用も少なく効果が持続的に続くとされています(※)。このような特徴があることから、「副作用が怖い」「少しでも体の負担を減らして治療を進めたい」といった方に適している治療法です。
ただし、必ずしも副作用が出ないとは限りません。免疫細胞治療が適用できるのかは、患者さんの体の状態によって決まるため、まずは主治医に相談してみましょう。
瀬田東京クリニックでは、免疫細胞治療による肝臓がんの治療を行っています。一人ひとりに合ったオーダーメードの治療をご提案いたしますので、ぜひ当院にご相談ください。
※参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「肝臓がん(肝細胞がん)治療」.
https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment.html ,(参照2024-12-16).
肝臓がん患者さんの生活を支えるためにできる工夫・取り組み
肝臓がんを含む全てのがん患者さんとそのご家族は、常に不安と隣り合わせの状態です。お互いが少しでも治療に対して前向きになれるよう、痛みを軽減するための環境整備をしながら進めていきましょう。
例えば、寝具を工夫して体に負担の少ない姿勢を保てるようにしたり、温湿布や保冷剤などで血管の動きを調整したりする方法があります。また、ご家族は患者さんの話に耳を傾け、本人の希望や気持ちに共感しながら寄り添うことが大切です。不安や症状の変化があれば、すぐに主治医に相談しましょう(※1)(※2)。
がん治療は、心身共に負担がかかります。少しずつ気持ちを落ち着かせ、医師やご家族と話し合いながら適切な治療法を決めていきましょう。
※1 参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「痛み もっと詳しく~がんの治療を始める人に、始めた人に~」.
https://ganjoho.jp/public/support/condition/pain/ld01.html ,(参照2024-12-16).
※2 参考:国立研究開発法人国立がん研究センター.「家族ががんになったときに知っておきたいこと」.
https://ganjoho.jp/public/support/family/fam/fam01.html ,(参照2024-12-16).
肝臓がんの痛みの原因を特定し、適切な治療法で生活の質を向上させよう
肝臓がんの痛みは、がんの悪化や肝臓の拡張、炎症が原因となっている可能性があります。痛みを軽減し生活の質を向上させるためには、原因に基づいた適切な治療法を選択することが重要です。
手術や塞栓療法、薬物療法などの他、比較的体への負担が少ない免疫細胞治療なども近年は注目されています。それぞれ適用条件が異なるため、主治医と相談しながらがん治療を進めていきましょう。
瀬田クリニック東京は、がん免疫細胞治療の専門医療機関です。患者さんのお体や症状の進行に合わせて個別化治療を提案いたします。大学病院やがん専門病院での豊富な経験を持つ免疫治療の専門医が治療を担当し、患者さんの体への負担が少ない治療を心掛けています。肝臓がんの治療でお悩みの患者さんは、ぜひ当院にご相談ください。
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