「胆管がん(たんかんがん)とはどんな病気なの?」「初期症状はあるのだろうか?」といった不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。胆管がんは初期の段階では症状が出にくく、発見が遅れることもあります。少しでも早く気付いて治療を進めるために、胆管がんについて理解することから始めましょう。
本記事では、胆管癌の基礎知識や症状、主なリスク要因、検査や治療の選択肢などについて分かりやすく解説します。
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胆管がんとはどんな病気? 知っておきたい基礎知識

胆管がんは、「胆管」という臓器に発生するがんです。胆管は非常に細いため、がんができても初期には自覚症状が出にくい特徴があります。発生する部位やがんの種類によって病状や治療方針が異なるため、正しく理解するようにしましょう。
胆管の役割と胆管癌が発生する場所
胆管は、肝臓で作られた胆汁を十二指腸まで運ぶ細い管状の器官です。胆汁は脂肪の消化や吸収を助ける重要な役割を担っています。
胆管がんは、この胆管のどこに発生するかによって種類が分けられます。発生する可能性がある部位は、以下の通りです。
- ●肝内胆管(肝臓内の胆管)
- ●肝外胆管(肝臓の外に出た胆管)
発生する場所によって症状の出方や治療方針も変わってくるため、正確な診断が欠かせません。
胆管がんの種類と特徴
胆管がんは、発生する部位に応じて次のように分類されます。
- ●肝内胆管がん:
肝臓内の胆管に発生するがん - ●肝外胆管がん:
肝臓の外に出た胆管に発生するがん
さらに肝外胆管がんは、発生した部位によって肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんに分類されます。
- ●肝門部領域胆管がん:
肝門部と呼ばれる肝臓の欠陥の入口に発生するがん - ●遠位胆管がん:
胆管の下部や十二指腸近くの部分に発生するがん
周囲のリンパ節や肝臓、肺などに転移したり、膵臓などの周囲の臓器に浸潤したりするケースもあります。
日本における胆管がんの現状
胆管がんは日本では比較的まれながんですが、年間5,000人ほどが診断を受けているとされています。男女ともに発症する可能性がありますが、男性で高齢者の方の罹患が多い傾向にあるのが特徴です。
近年は医療の進歩により検査精度が向上していますが、それでもなお胆管がんは早期発見が難しいがんの一つとされています。死亡率も比較的高いことから、早期発見と適切な治療が重要といえるでしょう。
胆管がんの症状|早期にはなぜ気付きにくい?

胆管がんは早期段階では自覚症状が出にくいため、発見が遅れがちな病気です。ここからは、胆管がんを早期発見しにくいのか、どのようなサインに気を付ければよいのかを詳しく解説します。
胆管がんの初期に症状が出にくい理由
胆管がんによる症状は、がん細胞が大きくなり胆汁の流れを妨げることで生じるものが多いです。ただし胆管は細い管であり、がんが小さい段階では胆汁の流れを大きく妨げることはありません。そのため、胆管がんの初期には自覚症状がほとんど現れないケースが多いです。
早期に現れる可能性のあるサイン(特に黄疸に注意)
胆管がんは初期症状が出にくいがんですが、比較的早く現れる可能性があるサインもあります。その代表が「黄疸(おうだん)」です。黄疸は皮膚や白目が黄色くなる症状で、胆汁中の色素(ビリルビン)が血液中にたまることで起こります。胆管ががんによって狭くなり、胆汁の流れが悪くなるとビリルビンが処理できなくなるため、黄疸として現れます。その他にも以下の症状が現れたら、注意が必要です。
- ●尿の色が濃くなる:
ビリルビンが腎臓から排泄されることで、尿が茶色になったり濃くなったりする。血尿と間違えられるケースもある - ●便の色が薄くなる:
胆管が詰まり、胆汁が十二指腸に届かなくなるため便が白っぽくなる場合がある - ●皮膚のかゆみ:
血液中にビリルビンや胆汁酸が皮膚に蓄積されることで、かゆみが起こることがある
これらの症状は胆管がん以外の病気でも見られることがありますが、急に現れた場合や進行する場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
黄疸以外の、早期には見過ごされやすい症状
胆管がんでは黄疸に関する症状以外にも、ごく初期に次のような軽い症状が現れることがあります。
- ●軽い腹痛や腹部の違和感(特にみぞおちや右上腹部)
- ●食欲不振・吐き気・体重減少
- ●発熱・寒気
こうした症状は日常生活の中で見過ごされやすく、胆管がんとは結びつけにくいものです。しかし、これらが長引く、あるいは徐々に悪化する場合は注意が必要です。一度専門の医療機関で相談することをおすすめします。
進行した胆管がんで現れる具体的な症状
胆管がんが進行すると、がんが胆管をふさいだり周囲の臓器に広がったりすることでさまざまな症状が現れます。
初期には症状が出にくい胆管がんですが、進行すると日常生活に影響が出る症状が増えてきます。ここからは、進行期に現れやすい症状を具体的に解説します。
胆管の閉塞や周囲への影響による症状
胆管がんが進行してがんが大きくなると、胆管が狭くなったり詰まったりします。また、がんが周囲の臓器や組織に浸潤(しんじゅん)して影響を及ぼす場合も。この段階になると、次のような症状が現れることがあります。
- ●黄疸の悪化:
皮膚や白目の黄疸がさらに顕著になる - ●強い腹痛や背中の痛み:
胆管の拡張や炎症、がんが周囲の神経や臓器に広がることによって起こる。右上腹部や背中の中央に鈍い痛みが生じる - ●発熱:
胆管炎(たんかんえん)を併発した場合には発熱が見られることがあります。感染症を伴うため注意が必要 - ●吐き気・嘔吐:
胆管閉塞による胆汁うっ滞や周囲への圧迫によって消化機能が低下し、吐き気や嘔吐が起こることがあります。
これらの症状の場合、がんが進行している可能性があるため、早急に医療機関を受診しましょう。
がんによる全身への影響
胆管がんが進行すると、局所の症状だけではなく、全身状態にも影響が出てきます。代表的なものには以下が挙げられます。
- ●体重減少
- ●全身倦怠感・衰弱:
- ●腹水(お腹の張り)・しこり
病気が進行し腹膜にも及ぶと、お腹に水がたまる状態である腹水が発生したり、がんが大きくなった部分にしこりを感じたりすることがあります。これらの症状は生活の質(QOL)に大きく影響を及ぼすため、早期に対応することが求められます。
症状が出た場合の緊急性
黄疸の悪化や強い腹痛、発熱、著しい体重減少、腹部の張りといった症状が現れた場合は、胆管がんがかなり進行しているサインと考えられます。このような症状がある場合は、自己判断で様子を見るのではなく、できるだけ早く消化器専門の医療機関を受診し、必要な精密検査を受けましょう。早めの受診が、治療選択肢を広げることにもつながります。
胆管がんの主なリスク要因を知って予防につなげよう
胆管がんは発症メカニズムが完全には解明されていませんが、慢性的な炎症や特定の病気・状態がリスクを高めることが分かっています。自分にどのようなリスクがあるかを把握することは、病気の予防や早期発見において非常に重要です。
胆管がんと関連が深い病気や状態
膵液と胆汁の通り道が異常につながっている先天性の形成異常である「膵胆管合流異常症」は、胆管がんの発症リスクを高めることが知られています。また慢性の肝炎や肝硬変なども胆管がんの発症要因になるといわれています。
生活習慣やその他のリスク要因
胆管がんは慢性炎症や特定の病気だけでなく、生活習慣や環境因子も発症リスクに関係していることが分かっています。
主なリスク要因は以下の通りです。
- ●アルコール:
過度の飲酒は胆管や肝臓に負担をかけ、胆管がんのリスクを高めると考えられている - ●喫煙:
喫煙は胆管がんを含む多くのがんのリスクを高めることが知られている - ●肥満・糖尿病:
メタボリックシンドロームとの関連があり、肥満や糖尿病が胆管がんのリスクを上げる可能性がある - ●特定の化学物質への曝露:
印刷工場などで使われる化学物質「ジクロロメタン」や「1,2-ジクロロプロパン」に長期間・高濃度でさらされると、胆管がんのリスクが高まると考えられている - ●家族歴(遺伝的要因):
胆管がんの家族歴がある場合、遺伝的素因が関与している可能性があるため注意が必要です。
リスクを理解し、予防や早期発見につなげることの重要性
患者さんご自身の生活習慣や既往歴、家族歴などを振り返り、胆管がんのリスクが高いかどうかを把握することはとても大切です。リスク要因がある方は、たとえ症状がなくても定期的な健康診断の受診や消化器専門医への相談を検討しましょう。
また、日常の生活習慣を見直すことも予防につながります。例えば、過度な飲酒や喫煙を控え、適正体重を維持することや糖尿病の管理を徹底することなどがリスク低減に有効です。
早期発見のためにも、自分の身体に関心を持ち、適切な行動をすることが重要です。
胆管がんの主な検査方法・治療法
胆管がんの早期発見には、適切な検査を受けることが不可欠です。初期段階では自覚症状が現れにくい、リスクが高い方や気になる症状がある方は早めに検査を受けるようにしましょう。
どのような検査で胆管がんを見つけるのか
胆管がんの診断に用いられる主な検査は以下の通りです。
- ●血液検査:
腫瘍マーカー(CA19-9、CEAなど)や肝機能検査を行い、胆管がんの可能性を示唆する。ただし、これだけで確定診断はできない - ●超音波検査(腹部エコー):
胆管の拡張や腫瘍の有無を確認する初期的な検査 - ●CT検査・MRI検査:
より詳しくがんの大きさや広がり、周囲の臓器への影響を把握する - ●ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影):
胆管内の詳細な画像を得るとともに、組織や細胞を採取できることもある - ●超音波内視鏡(EUS)・胆道鏡検査:
高精度の画像診断や生検が可能 - ●生体検査(組織診・細胞診):
がん細胞の有無を確認するため、組織や細胞を採取して顕微鏡で詳しく調べます。確定診断として受ける
これらの検査を段階的に組み合わせ、胆管がんかどうかを診断します。
胆管がんの主な治療法
胆管がんの治療法は、がんの進行度(ステージ)や発生部位、患者さんの全身状態などを考慮して選択されます。ここからは、胆管がんの主な治療法とその考え方についてご紹介します。
治療方針の決定要素
胆管がんの治療方針は、さまざまな要素を総合的に考慮して決められます。
主な決定要素には以下があります。
- ●がんの進行度(ステージ):
がんがどの段階にあるのか(早期か進行しているか)により、根治を目指す治療が可能か、あるいは症状緩和を重視する治療となるかが決まる - ●発生した部位(肝内胆管・肝外胆管・乳頭部など):
がんが胆管内のどの部位に発生したかにより、手術方法や治療方針が変わる - ●がんの大きさや周囲臓器への浸潤状況:
がんが大きくなって周囲の臓器や血管に浸潤している場合は、手術の可否や治療の難易度が変わる - ●患者さんの全身状態(年齢や体力):
治療に耐えられる体力があるか、基礎疾患がないかなども重要な判断材料となる - ●肝機能の状態や併存疾患:
肝機能が十分に保たれているかどうかや、他に治療に影響を及ぼす疾患がないかも考慮される
これらを総合的に判断した上で、患者さん一人ひとりに適した治療法が選択されます。
標準的な治療法
胆管がんに対して現在行われている標準的な治療法には、いくつかの選択肢があります。中心となるのは手術で、がんを切除することで根治(治癒)を目指す治療法です。特に早期発見された場合には、手術によってがんを完全に取り除ける可能性があり、根治が期待できる治療法ともいわれています。ただし、がんの進行度や発生部位によっては手術が難しいケースもあり、その場合には他の治療法が検討されます。
手術が難しい場合や、再発・進行した胆管がんに対しては、化学療法(抗がん剤治療)が行われるケースが多いです。薬剤を用いてがん細胞の増殖を抑える治療法であり、標準治療の一つとして位置付けられています。
また、放射線療法も選択肢の一つです。放射線を照射することでがん細胞を攻撃する治療であり、単独で用いる場合もあれば、手術や化学療法と組み合わせて行う場合もあります。
さらに、がんそのものの治療に加えて、症状緩和を目的とした治療も重要です。例えば、胆管が詰まることで起こる黄疸や痛みなどの症状を和らげるために、細い管を入れて胆汁を体外に出す胆道内瘻術や胆管ステント留置術などの処置が行われるケースもあります。
このように、患者さんの病状や全身状態に応じて、これらの治療法が単独または組み合わせて選択され、個別の治療方針が決定されます。
専門医との相談の重要性
胆管がんの治療は非常に専門性が高いため、専門医のいる医療機関で相談することが重要です。患者さん一人ひとりの病状やライフスタイル、価値観に応じた治療法を選ぶためにも、専門医としっかりと話し合い、適した治療法を選ぶことが大切です。治療法の概要やメリット、デメリット、副作用などについて十分な説明を受け、納得した上で治療に臨むことを心掛けましょう。
胆管がん治療における「免疫細胞治療」という選択肢
胆管がんの治療法としては、手術や化学療法が一般的ですが、近年は免疫細胞治療という新しい選択肢にも注目が集まっています。免疫細胞治療は、患者さんご自身の免疫細胞の力を利用してがんと闘う治療法であり、標準治療とは異なるアプローチとして期待されています。
免疫細胞治療とは?
免疫細胞治療とは、患者さん自身の免疫細胞を活性化させ、がん細胞を攻撃させる治療法です。標準治療(手術や化学療法)とは異なる作用メカニズムを持つのが特徴です。使用される主な免疫細胞には以下があります。
- ●樹状細胞
- ●アルファ・ベータT細胞
- ●NKT細胞
- ●2DG・キラーT細胞
- ●ガンマ・デルタT細胞
- ●NK細胞
治療の流れは、まず採血で免疫細胞を採取し、専門施設で人工的に活性化・増殖させた後、体内に戻してがんと闘う力を引き出します。この一連のサイクルを複数回繰り返します。
この治療は患者さんの体への負担が比較的少ないとされており、患者さんの状態に合わせて柔軟に取り入れられるのが特徴です。
胆管がん治療における免疫細胞治療の位置付けと期待
免疫細胞治療は、胆管がんの治療において、がん細胞を直接攻撃する働きが期待されています。患者さんご自身の免疫細胞を活性化させて体内に戻すことで、免疫系の働きを強化し、がん細胞を標的とした攻撃力を高めるのが特徴です。
さらに、治療後の再発を予防する役割も注目されています。標準治療(手術・化学療法)で目に見えるがんは除去できた場合でも、体内に残る微小ながん細胞を免疫細胞の力で排除することが、再発リスクを減らすことにつながります。
また、免疫力全体が回復することで患者さんの体力維持や生活の質(QOL)向上にも寄与するといわれており、がん治療後のサポート的な役割も期待されています。
標準治療に代わる選択肢ではなく、患者さん一人ひとりの状況に合わせた補完的な治療法として検討されるケースが増えています。
標準治療との併用
免疫細胞治療は、手術や化学療法などの標準治療と組み合わせて行われることが多いです。標準治療によってがん細胞をできる限り取り除いた上で、免疫細胞治療を併用することで、取りきれなかったがん細胞に対する追加の攻撃が期待できます。
また、免疫細胞治療によって患者さん自身の免疫力が高まることで、再発予防につながる効果も見込まれています。
こうした併用治療は、患者さん一人ひとりの病状や体力、治療経過によって適応が異なるため、担当医とよく相談しながら治療計画を進めていくことが大切です。
免疫細胞治療を検討する際のポイント
免疫細胞治療を始める前に、いくつか確認しておきたいポイントがあります。まず、専門の医療機関で詳しい説明を受けた上で、ご自身の病状や体の状態に合った治療法であるかを、担当医としっかり相談することが大切です。また、自分に適した治療計画を立ててもらうことも重要です。
まとめ
胆管がんは胆汁の通り道である胆管に発生するがんで、初期には症状が出にくく発見が遅れやすいという特徴があります。しかし、黄疸などのサインやリスク要因に注意することで、早期発見の可能性が高まります。
検査では血液検査、超音波検査、CT検査・MRI検査、内視鏡検査、細胞診などを組み合わせて診断し、治療では手術や化学療法、放射線療法などが状況に応じて選択されます。また近年では、胆管がん治療の一つとして、免疫細胞治療も注目されています。
免疫細胞治療は、患者さんご自身の免疫細胞を活性化させることで、免疫力を上げてがん細胞への攻撃力を高める治療法です。体への負担が少なく、再発予防やQOL(生活の質)の向上にもつながります。
瀬田クリニック東京は免疫細胞治療の専門クリニックとして、25年以上の歴史と実績があります。患者さんの免疫機能やがん細胞の免疫的特性を診断し、お一人おひとりに適した免疫細胞治療を行っているので、免疫細胞治療に興味がある方はお気軽にお問い合わせください。

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