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免疫チェックポイント阻害剤【ドスタルリマブ】
直腸がんに対する完全奏効率100%の驚異院長ブログ

2022年7月8日

一流の医学誌であるThe New England Journal of Medicineの6月23日号にとても興味深い論文が掲載されました。[PD-1 Blockade in Mismatch Repair–Deficient, Locally Advanced Rectal Cancer;DNAミスマッチ修復機構欠損iを有する局所進行直腸がんにおけるPD-1阻害剤]というタイトルの直腸癌に対する免疫療法の研究報告です。12例の直腸癌に対してドスタルリマブというお薬で治療したところ、全例でがんがすべて消失(完全奏効)し、6ヶ月から25ヶ月間、経過観察されているが再発はみられていないというものです。

ドスタルリマブは免疫チェックポイント阻害剤の1つでニボルマブ(オプジーボ®)と同系列の医薬品です。もちろん、細胞治療である免疫細胞治療とは異なる治療法で、その違い、関係などは過去の院長ブログ「免疫細胞治療とオプジーボ®」をご覧下さい。

免疫細胞治療とオプジーボ®

特殊な血液のがんなどを除くと、抗がん剤で完全奏効率100%という話は聞いたことがありません。直腸癌においてもこれまで完全奏効どころか部分奏効を含めても100%なんて結果はありません。

それでは、この驚異的な効果がはたしてなぜ、起こったのでしょう。

この治療でとても良い結果が得られた大きな理由の1つは、直腸癌の中でもDNAミスマッチ修復機構欠損を有するケースのみを対象としたことです。このような欠損のあるケースではがん細胞に免疫の攻撃の標的となるがん抗原(ネオアンチゲン)が多く存在し、免疫療法が効きやすいことが知られています。下表は日本でもよく使われているペムブロリズマブ(キイトルーダ)とドスタルリマブの完全奏効率であり、ドルタルリマブは高い有効性が報告されています。

免疫チェックポイント阻害薬名 完全奏効率(奏効率)
ペムブロリズマブ(キイトルーダ) 4.8%(34.9%)
ドスタルリマブ 9.1%(41.6%)
→ がん治療効果の指標を表す『がん治療の効果測定基準~CR、PR、PD、SD~』についてはこちら

しかしながら、今回の研究結果での完全奏効率100%はDNAミスマッチ修復機構欠損が対象ということでは説明は出来ません。他に考えられる理由は、手術で切除できる2期ないし3期という遠隔転移のないステージにおいて、初回の治療として行われたことでしょう。

すなわち、早い段階で治療を開始したことが良い結果に繋がったということです。このような早い段階での治療は抗がん剤では手術前に行う術前化学療法として行われています。ただし、術前化学療法として行われた場合の奏効率と進行したがんでの奏効率は、ここまで著しい違いではありません。

一方、免疫療法は身体の異物(がん)を攻撃排除する機能を使った治療法です。したがって、この研究では、この機能が損なわれる前に治療が行われたことがよい結果につながったというのが免疫学的に自然な考えです。免疫療法はあまりにご病気が進行してしまうあるいは非常に長期にわたって受けた化学療法により身体の機能が衰えた状況になる前に受ける方が得策と言えます。瀬田クリニック東京および連携医療機関では初回治療として抗がん剤に免疫細胞療法を併用する治療を積極的に取り入れています。当院の特定連携医療機関 福岡メディカルクリニック 内藤恵子院長が取材を受けた『化学免疫細胞療法で、がん治療は新たなステージへ』の記事もご参考ください。

化学免疫細胞療法で、がん治療は新たなステージへ

なお、さらには今回の研究結果は、手術を受けずにがんを治すことが可能となるかもしれないことをも示唆しています。最近、先駆け審査指定を受け、2つの画期的ながん治療薬が日本で早期承認されました。以前にこれらの治療薬等を開発した二人の先生各々と治療についてじっくりお話しをさせてもらう機会がありました。両先生ともに共通しておっしゃっていたのは「がんは手術で切除しなくとも治せる時代が来る」と言うものでした。

これまで手術で大勢のがんを治してきた私は、その時、違和感をおぼえました。「切除できるがんは手術」という考えには微塵も疑いを持っていませんでした。凡人の私にはこの固定観念から簡単には脱却できません。直腸がんは場合によっては手術により人工肛門を作らなくてはならないなど、手術せずに治せたら、患者さんに取って大きな福音です。強い信念を持って新たな治療法のパイオニアとなる先生方へあらためて、エールを送りたいと思います。

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細胞分裂する時には、細胞のDNAをコピー、複製し、2つの細胞に受け継ぐことになります。このコピーに際してコピーミスも起こりますが、それを修正するDNAミスマッチ修復機構が備わっています。この機構に異常があると、コピーミスを修復できなくなります。細胞分裂を繰り返すごとに、DNAの異常、つまり遺伝子の異常(変異)が蓄積され、がん化が引き起こされます。このようにして発生したがん細胞は遺伝子変異が多く、免疫の攻撃の標的となるがん抗原(ネオアンチゲン)が多く、免疫療法が効きやすくなります。
また、DNAの中で塩基配列が繰り返す部分であるマイクロサテライトのコピーミスも起こりやすくなり、その結果、がん細胞と正常細胞でマイクロサテライトの反復回数に違いが生じます。これをマイクロサテライト不安定性(Microsatellite Instability:MSI)とよび、DNAミスマッチ修復機構欠損ではMSI-highとなります。また、この異常(MSI-high)はリンチ症候群で高頻度に認められます。

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