新型コロナウイルス感染と免疫不全
院長ブログ

新型コロナウイルス感染症やインフルエンザが流行する中、免疫機能が低下している方の感染リスクや重症化が懸念されています。
がんの治療に使われる抗がん剤や放射線は、免疫機能が低下する「免疫不全」の一因です。また一部のがんなどの病気が、直接的に免疫不全を引き起こす場合もあります。
本記事では、免疫不全の基礎知識から新型コロナウイルス感染症における注意点、対策まで解説しました。免疫細胞治療についても触れています。
免疫不全とは?
免疫不全とは、何らかの理由で体の免疫機能が正常に働かなくなり、ウイルスなどの異物の侵入から体を守る力が低下した状態を指します。大きく分けて、原発性(遺伝子の変異によるもの)と続発性があります。
続発性免疫不全は、重篤な病気や薬が主な原因です。例えば糖尿病、HIVの感染などが挙げられます。特に白血病のような骨髄のがんでは、免疫システムに重要な「白血球」を作る機能が阻害されるため、注意が必要です。
免疫不全の主な症状は、感染症にかかりやすくなることです。感染症は呼吸器系から始まるケースが多く、治りにくかったり再発を繰り返したりします。鼻風邪が肺炎に進行するなど、重篤な合併症を伴う可能性もあるため、体の状態をよく観察するのが大切です。
また続発性免疫不全は抗がん剤やステロイドなど、免疫を抑制する作用がある薬も一因になっています。体調に変化を感じたら、すぐに医療機関へご相談ください。まれに放射線治療が原因になる場合もあります。
新型コロナと免疫不全のリスク
免疫不全の患者さんが新型コロナに感染すると、そうでない方に比べてリスクが高くなります。どのような問題が起こり得るのかを見ていきましょう。
感染期間の長期化とウイルスの変異
もし、免疫不全の患者さんが新型コロナに感染すると、一般の方より重症化または長期化しやすいとされています。特に造血幹細胞移植や臓器移植を受けた方や、抗20CD抗体薬によるB細胞除去療法を受けている患者さんは重度の免疫不全状態の場合があり、リスクが高いため要注意です。
新型コロナウイルスに感染した免疫不全の患者さんからは、長期間にわたって、感染力のあるウイルスが排出されると判明しています。また感染が1年半続いた患者さんのウイルスが、ワクチンを回避するための変異を起こしていたという報告もありました。これはウイルスが変異を起こし、薬に対して耐性を持つ可能性があると示すものです。
ワクチンの効果への影響
新型コロナウイルスのワクチンについて、免疫不全者は効果が少なく、4回の接種が推奨されているとされています。
この記事では、がん治療などで中程度から重度の免疫不全の症状がある人について、ファイザーやモデルナのmRNAワクチンの4回目の接種を受けることになるかもしれないと指摘されています。米ジョンズ・ホプキンス大学がこの夏に実施した調査では、ワクチンを接種した免疫不全者は、それ以外の人と比べて入院や死亡の確率が485倍に上ることが判明したとされています。
免疫細胞治療の役割
免疫細胞治療は、患者さんに備わっている免疫システムの力を向上させて、がん細胞を攻撃・排除する治療です。免疫細胞は体の中で、自分の細胞と病原体などの「異物」を見分けることで、攻撃するべきかどうかを判断しています。
免疫細胞は体の中で発生したがん細胞や、外から侵入してきた細菌・ウイルスなどの病原体を見つけて攻撃します。一部の免疫細胞治療は、この攻撃力を強化するものです。
それなら、免疫細胞治療は「異物」である新型コロナウイルスにも威力を発揮するのでしょうか。
免疫細胞治療と新型コロナウイルス感染の実態
これまで25年以上免疫細胞治療を行ってきましたが、その間、治療を受けている患者さんでインフルエンザに罹患した方は極めてまれでした。がん患者さんですから、化学療法を受けて白血球減少をきたしている方も少なくないにもかかわらずです。家族中がインフルエンザにかかったが、自分はかからなかったとおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。
また風邪をぜんぜんひかなくなったという声もよく聞きます。これはがんを患っている方々は感染症への警戒感から人混みを避けるなど、罹患しにくい環境で生活を送っているためかもしれません。免疫細胞治療がウイルス感染症を予防できるかどうかを実際に証明するには無作為化比較試験などを行わなければなりません。もちろん、そんなことを行うのは現実的にはほとんど不可能です。
なお、当院の患者さんで新型コロナウイルスに感染した方は数名いらっしゃいますが、いずれの方も極めて軽症で、治癒しています。中には80歳代というご高齢でがんを煩い、肺にも病気をお持ちで、さらには糖尿病などの持病を持っているにもかかわらず軽症で済んでいます。
新型コロナウイルスに感染しない人の共通点
感染リスクが高い医療従事者の中にも、新型コロナウイルスに感染したことがない人がいます。かつてロンドンで、感染経験がない医療従事者の血液を調べる調査が行われました。
その結果、彼らの血液の中では、攻撃・排除を担う免疫細胞である「T細胞」が増加していたそうです。彼らが感染を免れたのは「数多く存在するT細胞が、感染の早い段階で新型コロナウイルスを排除したため」と考えられます。
数ある免疫細胞治療の中でも「アルファ・ベータT細胞療法」では、患者さんのT細胞を取り出して活性化し、増殖させてから体内に戻します。T細胞を増やすだけでなく、その働きを高めるため、免疫力の向上が期待できる治療法です。
免疫不全者のための新型コロナ対策(予防策・生活習慣)
免疫不全の患者さんは、新型コロナはもちろん、人から感染するあらゆる呼吸器系のウイルス疾患に注意が必要です。
最初の予防策として、お住まいの地域に新型コロナやインフルエンザなどの流行がないか、常に直近の状況を確認しておきましょう。
新型コロナを予防する生活習慣
新型コロナを予防するには、生活習慣に基本的な感染対策を取り入れるのが大切です。
- ●部屋の換気:
換気扇を回したり窓を開けたりする - ●マスクの着用:
特に病院などの医療機関、電車など混雑した場所に注意 - ●手洗い、手指の消毒:
咳やくしゃみ、鼻をかんだ後の手洗いも忘れずに - ●ソーシャルディスタンス:
人が多く集まる場所を避ける
もし熱が出たり、咳など呼吸器の症状が出たりしたら、早めに医療機関に相談しましょう。
新型コロナを予防する食習慣
免疫力は、食習慣と密接な関係があります。体の状態や症状に合わせて、免疫力向上が期待できる食習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。
- ●できるだけ欠食をしない:
栄養状態が保てるため、免疫力を維持しやすい - ●タンパク質を摂取する:
タンパク質が足りないと免疫力が低下しやすい
なお、未加熱の魚や卵、野菜の摂取については、医療機関の判断を仰ぎましょう。その他、食事に関する不安や問題がある場合も、医療機関への相談をおすすめします。
瀬田クリニック東京が提供する免疫細胞治療について
がん患者さんにおいて免疫機能が低下あるいは障害されていることは古くから知られています。がんという病気に罹患することによって免疫の障害が生じるとともに、化学療法および放射線療法などの治療によっても障害を受けます。
瀬田クリニックではがん免疫療法を専門とする立場からも、がん患者さんにおける免疫機能の研究を続けて参りました。
瀬田クリニックホームページ内の論文紹介ページNo.44でも論文を報告しています。
がん患者さんにおいて細胞免疫の状態が障害されていること、免疫細胞治療(アルファ・ベータT細胞療法)によりその障害から回復できることがわかりました。

がん細胞に対する免疫応答と同様にウイルスに対してもT細胞が関与する細胞免疫が重要です。したがって、前述していますが、細胞免疫を強化するアルファ・ベータT細胞療法がウイルスへの免疫も強化すると考えられます。


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