「扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)」という言葉を耳にして、「どのような病気なの?」「他のがんと何が違うの?」と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。扁平上皮癌は皮膚や粘膜など、体のさまざまな場所に発生するがんであり、発生部位によって症状や特徴が異なります。
本記事では、扁平上皮癌の基本的な情報から部位別の特徴や症状、主な治療法まで、幅広く解説します。扁平上皮癌に関する知識を深めたい方は、参考にしてください。
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扁平上皮癌とは?その特徴と基本情報
扁平上皮癌は、皮膚やさまざまな臓器の粘膜に存在する「扁平上皮」という組織から発生する悪性腫瘍です。発生する部位によって症状や進行の仕方が異なり、肺や口腔、子宮頸部、皮膚など、さまざまな場所に現れることがあります。早期発見と適切な治療が重要となるがんの一つです。
扁平上皮とは何か?
私たちの体には「上皮」と呼ばれる細胞層があり、体の表面(皮膚)や臓器の内側、管腔臓器の内壁などを覆っています。このうち、細胞が平たく並んでいる細胞を「扁平上皮」と呼びます。
扁平上皮は、体の内外を守るバリアの役割を持っており、摩擦や外的刺激を受けやすい場所に多く存在します。具体的には、口腔や咽頭、食道、肺の一部、子宮頸部、皮膚などが挙げられます。扁平上皮癌とは、この扁平上皮から発生するがんであり、特徴や症状が異なります。
扁平上皮癌の定義と分類
病理診断では、顕微鏡で観察された細胞の形態や性質に基づいて診断が行われます。特徴的には、細胞同士が密に接着しており、角化(角質を作る性質)や間質への浸潤性がみられることが多いです。
発生部位に応じて、肺扁平上皮癌、頭頸部扁平上皮癌、子宮頸部扁平上皮癌、皮膚扁平上皮癌など、さらに細かく分類され、それぞれに適した診断と治療が検討されます。
悪性度と進行スピードの特徴
扁平上皮癌の悪性度や進行スピードは、発生する部位やがんの性質によって大きく異なります。一部の部位では比較的早期に発見されやすく、治療の効果も高いケースがあります。一方で、発見が遅れた場合はリンパ節や遠隔臓器への転移を起こしやすく、悪性度が高まる傾向もあります。
特にリンパ節転移が早期から見られる場合があり、進行が早いタイプのがんでは全身的な治療が必要になることも。そのため、早期発見と迅速な治療開始が重要とされています。
扁平上皮癌が発生する主な部位とその特徴
扁平上皮癌は体のさまざまな部位に発生します。それぞれの部位における扁平上皮癌の特徴を正しく理解することは、早期発見や適切な治療選択につながります。ここからは部位ごとの扁平上皮癌の特徴を見ていきましょう。
肺にできる扁平上皮癌
肺がんの一つの組織型として扁平上皮癌があります。特に肺の中心部に近い太い気管支の周囲に発生しやすいことが特徴です。喫煙との関連が非常に強く、喫煙歴のある方に多く見られます。咳が長引く、痰に血が混じる(血痰)、息切れ、胸の痛みなどの症状が現れることがあります。
がんが進行すると、気道が狭くなり、呼吸困難や感染症を引き起こすこともあります。
頭頸部にできる扁平上皮癌
頭頸部の扁平上皮癌は、口腔(舌・歯ぐき・頬の粘膜など)、咽頭(上咽頭・中咽頭・下咽頭)、喉頭、鼻腔・副鼻腔などに発生するがんです。
喫煙や飲酒との関連が強いことが知られており、最近ではHPV(ヒトパピローマウイルス)感染が関与するケースもあります。
症状は発生部位によって異なり、口腔内のできものや痛み、声のかすれ、飲み込みにくさ、首のしこりなどが現れることがあります。進行すると食事や会話に支障をきたすことがあるため、早期発見が重要です。
子宮頸部にできる扁平上皮癌
子宮頸がんの大部分は扁平上皮癌です。その主な原因はHPV感染であり、特にハイリスク型のHPVが長期的に持続感染することによってがん化します。
考えられる症状には、不正出血やおりものの異常、性交時の出血や痛みなどが挙げられます。ただし、初期には症状が出にくいため、子宮頸がん検診(細胞診)による早期発見が非常に重要です。適切な検診の継続が予防と早期治療につながります。
皮膚にできる扁平上皮癌
皮膚にできる扁平上皮癌は、主に紫外線の長期曝露が原因とされています。特に顔や手など、日光にさらされやすい部位に発生しやすく、高齢者に多く見られます。
皮膚の病変としては、盛り上がったできもの、ただれ、硬いしこり、潰瘍などが特徴です。紫外線が原因で生じる日光角化症から進行して発生することもあるため、皮膚の異常に気づいた際は皮膚科を受診してください。
扁平上皮癌の主な要因とリスク因子

扁平上皮癌は、発生する部位ごとに異なる要因が関わりますが、いくつか共通するリスク因子があります。生活習慣や感染症、環境要因など、発症リスクを高める原因を知ることで、予防や早期発見に役立てることができます。
生活習慣との関連
扁平上皮癌と生活習慣との関係は深く、特に喫煙と飲酒は大きなリスク因子です。
肺がんや頭頸部がん、食道がんにおいては、喫煙が大きな要因の一つであり、タバコの煙に含まれる有害物質が扁平上皮に長期間作用することでがん化のリスクが高いとされています。
また、飲酒も頭頸部がんや食道がんのリスクを高めることが確認されており、喫煙との相乗効果によって発症リスクがさらに上昇する可能性があります。
さらに、食生活との関連性も指摘されており、ビタミン不足や偏った食生活がリスクを増加させる場合があります。日常の生活習慣の改善は、発症リスク低減のために重要な取り組みといえるでしょう。
ウイルス感染との関連
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸がんの主な原因として知られており、一部の頭頸部がんにも関連することが分かっています。HPVの感染が長期間持続することで、扁平上皮細胞ががん化するリスクが高まります。
また、EBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス)は、一部の上咽頭がんとの関連があるとされており、ウイルス感染も扁平上皮癌の発症要因の一つです。
環境要因と職業性曝露
皮膚の扁平上皮癌では、紫外線が主な原因であり、長年にわたる紫外線曝露が発症リスクを高めます。特に屋外での作業が多い方や日焼けを繰り返してきた方は注意が必要です。
さらに、特定の化学物質(アスベストや重金属、タールなど)や放射線への曝露がリスクとなることもあります。慢性的な炎症や刺激が長期間続く部位でも扁平上皮癌が発生することがあるため、注意が必要です。
扁平上皮癌の診断と検査方法
扁平上皮癌の診断では、画像診断や内視鏡検査、組織検査(生検)などが組み合わされます。これにより、がんの大きさや広がり、進行度が明確になり、患者さんに適した治療方針の決定につながります。発生部位に応じて検査内容が変わるため、専門医による的確な判断が欠かせません。
画像診断(CT・MRIなど)
扁平上皮癌の診断では、がんの大きさや形、周囲の組織やリンパ節への浸潤状況、さらには他の臓器への転移の有無を評価するために画像診断が活用されます。CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)、PET-CTなどが代表的な検査です。
画像診断では病変の全体像が把握できるため、治療方針の決定に必要な情報となります。
内視鏡検査や組織検査の重要性
扁平上皮癌の確定診断には、病変部位の直接観察と組織検査(生検)が欠かせません。発生部位によっては、胃カメラ(上部消化管内視鏡)や大腸カメラ(下部消化管内視鏡)、気管支鏡、耳鼻科用内視鏡などの内視鏡検査が行われます。
内視鏡を使って病変の形態や範囲を確認しつつ、組織の一部を採取(生検)して顕微鏡で詳細を観察します。扁平上皮癌かどうか、悪性度や進行度の評価を行う上で、このプロセスが重要なステップです。
ステージ分類と進行度の評価
確定診断後、がんの進行度を評価するために「ステージ分類」が行われます。一般的にはTNM分類が用いられ、以下が評価されます。
- ●T(Tumor:腫瘍の大きさと広がり)
- ●N(Node:リンパ節転移の有無)
- ●M(Metastasis:遠隔転移の有無)
ステージ分類により、がんが初期段階にとどまっているのか、進行しているのかが明確になり、治療方針の決定に重要な役割を果たします。
扁平上皮癌の治療法
扁平上皮癌の治療法は、発生部位や進行度(ステージ)や患者さんの全身状態、年齢、合併症の有無、患者さん自身の希望などを総合的に考慮して選択されます。
主に外科的治療法である手術の他、放射線治療や化学治療などが選択されるケースが多いです。ここからは主な治療法について、詳しく見ていきましょう。
外科的手術の特徴
早期の扁平上皮癌では、外科手術によるがんの切除が治療の中心となります。発生部位によっては、内視鏡を使った低侵襲手術が可能な場合もあります。一方で、扁平上皮癌が進行した場合には、化学療法や放射線療法といった他の治療法との併用が行われることもあります。
また、手術による体の負担や、治療後の機能温存(例えば、喉頭がんの場合の発声機能など)の観点から、手術の適応や範囲は慎重に検討されます。患者さん自身の希望も踏まえたうえで、治療方針が決定されます。
放射線治療の特徴
放射線治療は、高エネルギーの放射線をがん細胞に照射して破壊する治療法です。手術が難しい場合や、手術後にがんの再発を防ぐ目的で補助的に行われるケースもあります。特に頭頸部がんや子宮頸がんなどの扁平上皮癌では、放射線治療が主な治療手段となることも多いです。
治療に伴う副作用としては、照射部位の皮膚炎や粘膜炎、疲労感などが挙げられます。
化学療法(抗がん剤治療)の特徴
化学療法(抗がん剤治療)は、抗がん剤を点滴などで投与して全身のがん細胞の増殖を抑える治療法です。扁平上皮癌では、進行がんや手術後の再発予防、または放射線治療との併用療法として行われることが多くなっています。主に用いられる抗がん剤には、シスプラチンやパクリタキセルなどがあり、治療効果が期待されています。
一方で副作用もあり、吐き気や脱毛、骨髄抑制(白血球・赤血球・血小板の減少)、しびれなどが生じることがあります。副作用のコントロールも含め、患者さんの体調を見ながら治療が進められます。
免疫療法の可能性
近年、がん治療の選択肢として大きな注目を集めているのが「免疫療法」です。これは患者さん自身の免疫力を高めることで、免疫細胞が攻撃できる状態をつくり出す治療法です。がん細胞は本来、免疫の監視をかいくぐる仕組みを備えていますが、免疫療法はこの「免疫のブレーキ」を解除したり、免疫細胞そのものを活性化させたりすることで、がんに対する自然な攻撃力を取り戻すことを目的としています。
こうした治療法は、がんの進行を抑えるだけではなく治療の選択肢を広げ、生活の質(QOL)を維持しながら治療を継続できる可能性ももたらします。
免疫療法の一種である「免疫細胞治療」は、採血によって患者さん自身の免疫細胞を抽出して、人工的に増殖・活性化させてから点滴や注射などで体内に戻す方法です。患者さんの免疫細胞を使うため大きな副作用がなく、手術や放射線治療、化学療法などと組み合わせることもできます。
まとめ
扁平上皮癌は、肺・頭頸部・子宮頸部・皮膚などさまざまな部位に発生するがんであり、部位によって症状や治療方針が大きく異なります。喫煙などの生活習慣・感染症やウイルス感染(HPV、EBウイルス)・環境要因がリスク因子として知られており、早期発見のためには定期的な検査が欠かせません。画像検査や内視鏡、生検で検査を行い、治療は手術・放射線治療・化学療法などから、患者さんの状態や希望に応じて慎重に選択されます。
また、標準治療に加えて「免疫療法」という新たな選択肢も広がってきました。瀬田クリニック東京では、患者さん自身の免疫力を高める「免疫細胞治療」を専門に行っており、一人ひとりの病状や体質に合わせた個別化医療を実施しております。ご興味のある方はどうぞお気軽にご相談ください。
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