放射線治療は、がん細胞のDNAを死滅させることが期待できる治療法ですが、副作用として下痢が起こることがあります。これは、放射線が腸の粘膜にダメージを与えるためです。下痢が続くと、日常生活に支障を来すだけではなく、体力を消耗し、治療の継続が困難になる可能性もあります。
本記事では、放射線治療による下痢の症状、原因、そして日常生活でできる対処法について詳しく解説します。また放射線治療と組み合わせることでさらなる効果が期待できる免疫療法についてもご紹介します。
無料

- 資料請求・お問合せ
当院の免疫療法に関するパンフレットを無料でお届けします。医師が免疫療法のよくある質問にお答えする小冊子付き。
詳しくはお電話やフォームからお申込みください。
- メールフォームはこちら
資料請求
放射線治療による下痢の症状とは
放射線治療は、がん細胞に放射線を照射して破壊する治療法です。その副作用で下痢の症状が起きることがあります。
放射線治療の副作用による下痢の主な症状
放射線治療による下痢の主な症状は、以下の通りです。
- ●便が柔らかくなったり、水のような便が出たりする
- ●排便の回数が増える
- ●寝ているときでも便意を催す
- ●しぶり腹(便意を催しても出なかったり、便意が続くのに少量しか出なかったりする)になる
- ●肛門周辺に痛みや炎症が起きる
- ●血便が出る
- ●下痢と共に吐き気や嘔吐が起きる
- ●下痢と共に貧血が起きる
症状の推移
放射線治療による下痢は、治療開始後2~4週間から始まることが多いです。
治療を受けている間は症状が続きますが、終了すると2~4週間で腸の粘膜が回復し、下痢の症状が落ち着いていきます。
下痢の症状の度合いは、抗がん剤の併用の有無や放射線量、患者さんの体の状態などによって異なります。抗がん剤を併用していると、放射線治療の副作用が強くなったり、長く続いたりする場合もあるようです。
下腹部や骨盤部に照射する放射線の副作用で「放射線性腸炎」と呼ばれる炎症を起こす患者さんもいます。このようなケースでは、数カ月~数年以上が経過した後で下痢が始まることもあるため、注意が必要です。放射線性腸炎は「照射された放射線量が60グレイを超えると発症率が上がる」といわれています。
下痢の副作用が起こりやすいがんの種類
下腹部や骨盤部に放射線照射を行う以下のがんは、下痢の副作用が出やすいといわれています。
下腹部への放射線照射 | 膵臓がん、胆道がん、肝臓がん、腎臓がん、結腸がん、腹部リンパ節転移など |
---|---|
骨盤部への放射線照射 | 前立腺がん、子宮がん、膀胱がん、直腸がん、肛門がん、精巣腫瘍など |
放射線治療による下痢の原因
下痢の副作用は、体だけではなく心にも影響を与えます。QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を保ちながら治療を続けるには、副作用が起こる仕組みを知り、下痢の症状をコントロールするのが大切です。
ここでは、放射線治療によって下痢が起きる原因を解説します。
下痢の副作用が表れる理由
放射線治療は、がん細胞のDNAを破壊して死滅させる治療法です。その効果は、活動が盛んな細胞ほどより強く表れます。がんに放射線治療が有効なのは、がん細胞が細胞分裂を盛んに行っているからです。
腸の粘膜は、がん細胞同様に細胞分裂が活発なため、放射線治療の影響を受けやすいとされています。
腸に放射線が当たると、粘膜がただれたり炎症を起こしたりして、荒れてしまいがちです。その結果、腸が水分や栄養をスムーズに消化・吸収できなくなり、下痢の副作用が引き起こされます。
急性放射線障害と晩期放射線障害
放射線治療の副作用には、急性放射線障害と晩期放射線障害の2種類があります。
急性放射線障害
急性放射線障害は、放射線治療の開始直後から半年以内に発症し、照射を重ねるほどに重症化しやすくなる傾向にあります。
下痢や吐き気などの副作用は、急性放射線障害によるものが大多数です。治療の初期に表れやすい副作用ですが、一過性です。
晩期放射線障害
一方の晩期放射線障害は、治療が終了した後も少しずつ症状が進みます。こちらは急性放射線障害に比べて深刻なことが多く、特に注意が必要です。
腸の晩期放射線障害では、腸の中が狭くなったり癒着したりして、問題を引き起こす恐れがあります。主な症状は腸閉塞、腸管穿孔(腸に穴が開いてしまう)、腸からの出血などです。
晩期放射線障害はまれにしか起こりませんが、難治性であり、発症すると回復が難しいといわれています。場合によっては、手術が必要になるかもしれません。気になる症状があるときは、遠慮したり一人で抱え込んだりせず、できるだけ早く担当医に相談しましょう。
放射線治療による下痢の対処法
下痢の症状にはさまざまな対処法があります。例えば、日々の症状や状態を記録するのは、体の変化を把握するために有効な方法です。
ここでは、放射線治療による下痢の対処法を、以下の項目に分けて解説します。
下痢の対処法
- ●食事と水分補給
- ●生活習慣
- ●スキンケア
食事と水分補給
放射線治療中は、食べたものの消化・吸収がしにくくなっています。腸に負担をかけない食事を取り、脱水にならないよう、水分を十分に補給しましょう。腸への負担を軽減するために、少しずつ小分けにして食べるのも良い方法です。
下痢の症状が出ているときにおすすめの食品は、以下の通りです。
炭水化物 | 消化の良い食品を選ぶのがポイントです。体のエネルギー源になってくれます。 | ごはん(柔らかめ)、おかゆなど |
---|---|---|
タンパク質 | 傷ついた粘膜を修復してくれます。なるべく油を使わずに調理しましょう。 | 卵豆腐、茶碗蒸し、豆腐、白身魚、ささみなど脂身の少ない肉(※1) |
野菜 | 野菜は柔らかく煮て食べるようにします。食物繊維が多いものは注意が必要です。 | 大根、白菜、かぼちゃ、なす、レタス、玉ねぎなど |
果物 | 消化の良い果物を選びます。食べ過ぎはお腹にガスがたまるため要注意です。 | バナナ、りんご、桃など |
水分(※2) | 熱い飲み物、冷たい飲み物、カフェイン、アルコール、炭酸飲料は腸を刺激するため避けましょう。 | 麦茶、番茶、具のない薄味の味噌汁、ナトリウムを含むスポーツ飲料(常温)など |
- ※1:生卵や固ゆで卵は消化が悪いため避けましょう
- ※2:下痢をしているときは、1日にコップ8~10杯程度が水分量の目安です
また、避けた方が良い食品は以下の通りです。
脂肪分 | 乳製品、脂が多い肉や魚、油揚げや練り物など |
---|---|
食物繊維 | ごぼう、きのこ類、海藻類、豆類、ドライフルーツなど |
刺激物 | スパイスが入ったもの、辛いものなど |
乳製品 | 牛乳、チーズ、ヨーグルトなど |
その他 | 人工甘味料、糖分や脂肪分の多い菓子など |
生活習慣
放射線治療によって下痢が続くときは、同時に体力も消耗しています。無理をせず、十分な休息を取りましょう。腸の状態が落ち着くと、体力を維持できるようになっていきます。
お腹を温めると、副作用のつらさや痛みを軽減できます。体を締め付けないよう、ゆったりとした服を着用するのも大切です。
気になる症状や悩みごとがあれば、遠慮せず医師や看護師に相談しましょう。
スキンケア
下痢が続くと、肛門周りの皮膚が炎症を起こしやすくなるため、注意が必要です。これは、下痢の便が酸性に傾いているために起こるものです。温水洗浄便座の使用には、肛門の周りを清潔に保つ効果が期待できます(ただし、水圧は下げておきます)。担当医に炎症予防の塗り薬を処方してもらうのもおすすめです。
トイレットペーパーを使うときは、強く拭き取るとこすれてしまい、痛みを感じます。肛門周りの皮膚に刺激を与えないよう、柔らかいペーパーを使い、強くこすらずそっと拭き取りましょう。
担当医や看護師に相談しにくいときは
排泄に関わる悩みを担当医や看護師に伝えるのは気が引ける方もいるでしょう。しかし、下痢は病気と体の状態に関する重要な問題です。決して恥ずかしい悩みではないため、勇気を出して話してみましょう。担当医も看護師も、きちんと相談に乗ってくれるはずです。
詳しい症状を説明しにくい場合は、日々の体調を記録しておくと、担当医や看護師に見せながら相談を進められます。
放射線治療と免疫療法の組み合わせ
放射線治療に免疫療法を組み合わせると、より多くのメリットが期待できます。ここでは、放射線治療の「アブスコパル効果」と、免疫療法との併用について解説します。
アブスコパル効果とは
放射線治療のアブスコパル効果とは、放射線を照射した箇所だけではなく、当たっていない部位のがん細胞にも治療効果が及ぶことです。
放射線治療を行うと、がん細胞から大量の「抗原」が放出されます。抗原とは、がん細胞の目印に当たるものです。この抗原により免疫細胞が活性化し、放射線を照射した部位以外のがん細胞も攻撃・破壊できるようになるといわれています。
放射線治療と免疫療法を組み合わせるメリット
放射線治療と免疫療法を組み合わせると、以下のメリットが期待できます。
- ●放射線治療のバックアップ効果
- ●アブスコパル効果の増強
- ●患者さんの不安の軽減
放射線治療のバックアップ効果
放射線治療は、がん細胞を破壊して進行を抑えますが、効果の表れ方は患者さんによって違います。一般的には、数週間から数カ月で効果が確認できるケースが多いです。
しかし、がん細胞の位置や病状によって放射線治療ができなかったり、それだけでは効果が現れなかったりする患者さんもいます。
放射線治療と免疫療法の併用には「放射線の治療効果を早く感じられる」「放射線治療では足りない部分を補える」といったメリットがあります。
アブスコパル効果の増強
前述の通り、放射線治療を行うと、がん細胞から抗原が大量に放出されます。免疫療法は患者さんの免疫力をより高めるため、放射線治療と組み合わせることで、アブスコパル効果を増強できる可能性があります。
患者さんの不安の軽減
がんが早期に見つかった患者さんでは、抗がん剤を使わず、手術と放射線治療で画像上の病状をなくせるケースがあります。しかし、画像で確認できないほどの微小ながん細胞が体内に残っている確率はゼロではありません。
そのような患者さんは、抗がん剤治療をしないことに対し「ここで治療を終えて大丈夫なのか」と不安を覚える可能性があります。免疫療法を行うと、体が本来持っている免疫力が高まるため、患者さんの不安を軽減できます。
免疫細胞治療とは
免疫細胞治療とは、体の中から取り出した免疫細胞を使って行う治療です。患者さん自身の免疫細胞を用いるため、大きな副作用が起こりにくいのが特長です。
治療を行う際は、採血によって体の中から免疫細胞を取り出し、培養や加工をしてから再び体内へ戻します。これにより、免疫細胞はより効率的にがん細胞を攻撃・破壊できます。
免疫細胞治療は、標準治療(手術、抗がん剤治療、放射線治療)との併用が可能です。標準治療と免疫細胞治療を組み合わせることで、より高い治療効果が期待できます。
免疫細胞治療には、特定のがん細胞の抗原を狙い撃ちにするものや、免疫機能を全体的に高めるものなど、仕組みの異なる複数の治療法が存在します。前者は「樹状細胞ワクチン」、後者は「アルファ・ベータT細胞療法」などが代表例です。
なお、免疫細胞治療の分野は研究が進んでおり、新しい免疫療法も登場しています。
【まとめ】
放射線治療による下痢は対処法を工夫しよう
今回の記事では、放射線治療の副作用として表れる下痢の症状と原因、食事や生活習慣の工夫による対処法などを解説しました。標準治療以外の選択肢である、免疫療法についても触れています。
放射線治療はがん細胞だけではなく、正常な細胞にも悪影響を及ぼしてしまいます。特に、腸の粘膜は活動が活発なため、放射線の影響を受けやすいです。
放射線治療の副作用として表れる下痢には、さまざまな対処法があり、取り入れることで症状を軽減できます。しかし、それでも症状がつらかったり、病気に対する不安を感じたりしているなら、迷わず担当医や看護師に相談しましょう。
また、放射線治療と免疫療法を組み合わせると、アブスコパル効果が増強するといったメリットが期待できます。しかし、がん細胞の性質や状態には個人差があるため、治療の効果は患者さんによって異なる、という点には注意が必要です。
がん治療はたとえ新たな治療法が登場しても、どの患者さんに対してもそれがベストとは限りません。「ある人には新しい治療が効きやすいが、別の患者さんには従来の治療法が効果的」ということも起こります。免疫療法を検討する際は、自分に合った適切な方法を見極めることが必要です。
瀬田クリニック東京では、患者さん一人ひとりに合わせた治療法を提案する「個別化医療(オーダーメイド医療)」を行っています。免疫細胞とがん細胞の状態を詳細に検査し、そのデータに基づき適切な免疫細胞治療を個別に組み合わせることで改善を目指します。免疫療法について気になる方は、ぜひお問い合わせください。


無料

- 資料請求・お問合せ
当院の免疫療法に関するパンフレットを無料でお届けします。医師が免疫療法のよくある質問にお答えする小冊子付き。
詳しくはお電話やフォームからお申込みください。
- メールフォームはこちら
資料請求