人間の体には病原菌やウイルスの侵入を防ぐ免疫機能が備わっていますが、何らかの理由で免疫力が低下すると、がんをはじめとしたさまざまな病気に罹患するリスクが高まります。逆にいえば、病気を予防するためには、生活習慣を見直す他、免疫機能の維持・向上を目指すことが大切です。
本記事では免疫が下がる代表的な病気を紹介する他、免疫機能の役割や免疫力を維持するための方法などをまとめました。
<この記事で分かること>
- ● 免疫が下がる代表的な病気には、糖尿病と膠原病、HIV、血液のがんなどがある
- ● 生活習慣が乱れたり、特定の病気の罹患・治療の影響を受けたりすると免疫が下がることがある
- ● 免疫力を維持するためには、食生活や運動習慣、睡眠などを見直すことが大切
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免疫機能とは? 基本的な役割と主な種類
免疫とは、病気の原因となる細菌やウイルスなどの体内への侵入を防ぐシステムのことです。
人の体は約60兆個もの細胞で構成されていますが、外から細菌やウイルスが入ってくると個体が破壊されたり、体内に寄生されたりして細胞を健全に保つのが難しくなってくることがあります。
そこで人の免疫機能は正常な細胞を維持できるよう、外部から侵入してきた細菌やウイルスに攻撃する働きを担っています。
免疫機能の種類
免疫機能は大きく分けると自然免疫と獲得免疫の2つに分類されます。
自然免疫とは、体内に侵入してきた細菌やウイルスをいち早く察知し、これを排除しようとする免疫のことです。自然免疫を司る代表的な細胞が、好中球やマクロファージ、樹状細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞などです。これらの細胞は病原体を自ら食べて排除(貪食)したり、感染した細胞を破壊したりして初期の防御を行います。
一方の獲得免疫は、一度感染した病原体を見分け、それを記憶することで、再び同じ病原体が侵入してきた際、より効果的に排除する作用があります。
獲得免疫を司る主な細胞が、T細胞とB細胞といったリンパ球です。これらの細胞が、体に侵入した病原体を記憶することで、同じ病原体を発見したときにスムーズに排除できるようになるのが獲得免疫の仕組みです。そのため、一度感染した病原体の感染や発症を未然に防ぐ効果が期待できます。
なお、自然免疫と獲得免疫は互いに密接な関係にあり、相互作用によって免疫反応を高めています。
免疫が下がるとどうなる? 免疫低下のリスク
免疫力が低下すると、外部から侵入してくる細菌やウイルスへの抵抗力が落ち、感染症に罹患しやすくなります。元々人に害を及ぼす細菌はもちろん、通常なら害にならないはずの菌も、免疫力が低下している間は病気の原因になる可能性があります。
さらに、病気の症状が悪くなる、治りが遅くなるなど、さまざまな不調が出やすくなるため、十分な注意が必要です。
免疫力が下がる原因
免疫力が低下する原因は、現代の医療でも全て明らかになっているわけではありません。ただし、原因として考えられる要素は大きく分けて2つあります。
1つ目は生活習慣です。日常生活で以下のような状態が続くと、通常よりも免疫が低下しやすい傾向にあるといわれています。
- ● 偏った食生活
- ● 運動不足
- ● 睡眠不足
- ● 過剰なストレス
例えば、食生活の乱れによってタンパク質やビタミン、ミネラルなどの栄養素が不足すると、免疫細胞の働きが鈍くなり、免疫力の低下につながります。また運動不足の慢性化は、免疫機能の維持に必要な酸素や栄養素が行き渡りにくくなる原因の一つです。上記のいずれか、もしくは複数の要素に当てはまっている場合は、生活習慣を見直した方が良いでしょう。
2つ目は、免疫低下を招く病気への罹患です。病気の中には、症状や治療に使用する薬剤の影響により、免疫力が下がることがあるといわれています。
免疫力が下がる代表的な病気
免疫力の低下を招く代表的な病気は、以下の通りです。
糖尿病
糖尿病は、体内のインスリンが働かず、血中のブドウ糖(血糖)が増え過ぎてしまう病気です。
体内の血糖が増え過ぎた状態(高血糖状態)が続くと、免疫細胞の中でも中心的な役割を担う好中球の機能が低下し、免疫力が低くなります。
糖尿病に罹患すると、動脈硬化などの合併症を引き起こすリスクが高くなります。血液の役割は免疫系に必要な酸素や栄養素を供給することです。そのため、動脈硬化によって血流障害を引き起こした場合、間接的に免疫低下を招く恐れがあります。
膠原病
膠原病は、自己免疫の異常によってさまざまな症状を引き起こす病気です。
膠原病にかかると外部から侵入した異物だけではなく、正常な自己組織まで攻撃する自己抗体が産生されます。自己抗体によって正常な細胞がダメージを負うと、炎症物質によって結合組織が傷つけられ、発熱や倦怠感、関節痛、リンパの腫れ、皮膚の発赤・炎症といったさまざまな症状が現れるようになります。
膠原病の治療では炎症を抑えるステロイド薬とともに、免疫機能の過剰な働きを抑える免疫抑制薬を使用するのが一般的です。そのため、治療中は免疫機能が低下しやすく、入念に感染症対策する必要があります。
エイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)
エイズとは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって免疫不全が生じた結果、さまざまな症状・病気が合併している状態のことです。
HIVに感染した当初は、ほとんどの場合、自覚症状が生じません。しかし、HIVの感染後に無治療のままで過ごすと免疫機能が低下してきて、発熱やリンパ節の腫れ、急激な体重の減少、下痢といった症状が現れ始めます。
さらに免疫機能が低下すると、健康な状態であればほとんど影響のない病気(日和見感染症)にかかりやすくなります。また悪性リンパ腫などの悪性腫瘍や、認知症、運動障害といった神経障害などを発症するケースも多いです。なお、無症状の段階でHIVの感染が発覚した場合は、エイズではなく「HIV感染症」と診断されます。
現段階では、エイズを完全に治療する方法や、HIVの感染を予防するワクチンは存在しません。しかし、近年は早期に服薬治療を受ければ、免疫力を落とさずに通常の生活を送ることも可能になってきています。
血液のがん
血液のがんとは、赤血球・血小板・白血球で構成される血液細胞の遺伝子に異常が起こり、がん細胞が増殖したことによって発症する病気です。具体的には、白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などが該当します。
血液のがんが進行すると、正常な白血球(リンパ球や好中球など)の産生が困難になり、免疫機能の低下を招く原因となります。また、血液のがんの治療に用いる抗がん剤には、白血球などの免疫に関わる血液細胞を産生する骨髄の働きを低下させる副作用がある点にも注意が必要です。
免疫力を維持・向上するためのアプローチ方法
免疫力が低下しないようにするには、日常生活の見直しや治療法の選択など、さまざまな工夫を取り入れることが大切です。
ここでは、免疫力を維持・向上するために実践したいアプローチ方法をご紹介します。
1. 食生活の見直し
食生活が乱れている場合は、まずバランスの良い食事を取るところからスタートしましょう。
免疫細胞の多くは腸内に存在するため、腸内環境を整える食事を意識するのがポイントです。具体的には、便通を良くしてくれる水溶性食物繊維を多く含んだ海藻類や野菜、果物をはじめ、善玉菌優位の腸内環境に整えてくれる乳酸菌を含む納豆やヨーグルトなどの発酵食品、乳酸菌のエサになるオリゴ糖などを積極的に摂取しましょう。
ただし、抗がん剤の影響で白血球が著しく減少している場合は、生ものや発酵食品を摂取することによって感染症のリスクを高めてしまうことがあります。既にがんの治療を始めている場合はかかりつけの医師に相談し、食生活についてアドバイスや指示を仰ぎましょう。
2. 適度な運動をする
運動不足が慢性化すると筋力が落ち、血液が滞りやすくなるため、適度な運動を習慣にしましょう。例えばウォーキングや軽いジョギング、水泳といった有酸素運動を定期的に行うようにすると免疫力アップに役立ちます。
ただし、普段運動不足の方がいきなり激しい運動をすると、かえって体を痛めることがあります。また、激しい運動習慣はかえって免疫力を低下させるリスクがあるという説もあるようです。無理のない範囲で、長く続けるように意識しましょう。
3. 良質な睡眠を取る
睡眠不足は免疫機能を落とす要因の一つですが、ただ長く眠れば良いというわけではありません。睡眠の質と免疫には密接な関係があるといわれているため、良質な睡眠を取るように心掛けましょう。
睡眠の質を上げるために大切なのが、体内のリズムを整えることです。特に普段から夜更かしをしている方や、平日と休日で起床・就寝の時間に大幅なずれがある方は、体内リズムが乱れている可能性があります。まずは、体内時計をリセットする習慣を付けるのがおすすめです。具体的には、起床時に朝日を浴びる、朝食をきちんと取る、寝る前にスマートフォンやパソコンを使わないなどして、徐々に睡眠の質を上げましょう。
【がん治療中の場合】免疫細胞治療を検討する
がん治療中の場合は、治療方法の一つとして免疫細胞治療を検討するのも良いでしょう。
免疫細胞治療は、患者さん自身の免疫細胞を培養し、その働きを強化させる治療法のことです。患者さんの免疫細胞を使用するため、抗がん剤のような副作用のリスクが少なく、免疫力の低下を抑制する効果が期待できます。
なお、免疫細胞治療は他の標準治療との併用が可能です。例えば抗がん剤と免疫細胞治療を組み合わせれば、がん細胞を縮小させつつ、再発リスクを低減させる効果が期待できるケースもあります。まずは、医療機関などで相談してみてはいかがでしょうか。
免疫が下がる病気を防ぐために、日頃から免疫力の維持に努めよう
免疫は人に元々備わっている防御機能ですが、生活習慣の乱れや特定の病気の影響を受けると、免疫力が低下する恐れがあります。免疫が低下するとさまざまな感染症にかかりやすくなるため、生活習慣を見直すなど免疫力を維持するための工夫を取り入れましょう。
また、免疫は感染症だけでなく、体内で発生した異常ながん細胞を監視・排除する役割も担っています。がん治療の選択肢を広げたいと考えている方は、免疫細胞治療を検討するのも一つの方法です。
瀬田クリニック東京では、患者さんの免疫機能やがん細胞の免疫的特性を診断した上で、一人ひとりに適した免疫細胞治療を行う「個別化がん免疫療法」を実施しています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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