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悪液質によって起こる症状とは?診断基準や治療方法を丁寧に解説

悪液質によって起こる症状とは?診断基準や治療方法を丁寧に解説

投稿日:2026年07月10日

更新日:2026年07月10日

がん治療を続ける中で、体重が減っていく様子に不安を感じている方もいるのではないでしょうか。「しっかり食べれば戻るはず」「努力が足りないのでは」と悩み、本人はもちろんご家族も戸惑ってしまうことがあります。

しかし、がん患者さんの体重の減少は、単なる栄養不足や気持ちの問題とは限らない場合があります。痩せてしまう原因の一つといわれているのが「悪液質」です。

この記事では、悪液質によって起こる症状や診断基準、検査方法、治療方法を丁寧に解説します。少しでも不安を減らし、適切な治療を受けるためのヒントとして、ぜひ役立ててください。

<この記事で分かること>

  • ● 悪液質とは何か、がん患者さんの体重減少との関係
  • ● 悪液質によって起こる主な4つの症状
  • ● 悪液質の検査方法や治療方法

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悪液質とは?

悪液質とは、がんなどの基礎疾患に関連して生じる複合的な代謝異常の症候群です。

悪液質は、代謝異常によって脂肪や筋肉が分解され、エネルギーが産生される状態が続くことで生じます。この過程では、エネルギー摂取量の低下と消費量の増加が同時に起こる点が特徴です。特に進行がんの患者さんに多くみられ、体重の減少を伴うとされています。

一般的な「体重減少」や「低栄養」と大きく異なるのは、脂肪量の減少の有無にかかわらず、骨格筋量が持続的に減少する点です。悪液質は、代謝の仕組みそのものが変化しているため、栄養補給だけでは体重や筋力が回復しにくく、進行すると日常生活の機能障害につながる可能性があります。

悪液質によって起こる変化

悪液質はさまざまな症状が現れることがあります。先述した体重減少を含め、代表的な症状は以下の通りです。

  • ● 食欲の低下
  • ● 体重減少
  • ● サルコペニア
  • ● 生活の質(QOL)の低下

ここでは、これらの症状について詳しく解説します。

食欲の低下

悪液質における食欲低下は、単に「食べたくない」と感じるだけではありません。少量でお腹がいっぱいになる早期満腹感が生じ、結果として食事量が自然に減ってしまうことがあります。

この変化は本人の意思や努力の問題ではなく、がんに伴って放出されるサイトカインという物質が脳内ホルモンのバランスに影響することで、食欲を抑制する生理的な反応と考えられています。

体重減少

悪液質による体重減少は、脂肪だけではなく筋肉量も同時に減少する点が特徴です。そのため頬がこけたり、目がくぼんだりといった外見の変化が現れることがあります。

筋肉量が減ると、立ち上がりや歩行などの日常生活の動作が難しくなり、自立性が低下する可能性があります。家族が「動きづらそう」「疲れやすくなった」と感じるのは、こうした変化の表れかもしれません。

また体重減少率やBMIの低下は、生存期間の短縮との関連が報告されているデータもあり、医療現場では体重変化が重要な指標の一つとされています。

サルコペニア

サルコペニアとは、骨格筋量の減少に伴い筋力や身体機能が低下した状態を指します。一般的には加齢によるものが知られていますが、悪液質では年齢に関係なく生じるのが特徴です。

悪液質は代謝異常により筋肉の分解が進みやすく、筋力低下や歩行困難、転倒リスクの増加につながる場合があります。階段の上り下りがつらくなる、物を持ち上げにくくなるといった変化が日常生活で現れやすい点もポイントです。

また骨格筋量の減少は治療に対する体力の低下や、副作用が出る要因になることがあります。そのため医療現場において、サルコペニアの有無は重要な指標とされています。

生活の質(QOL)の低下

悪液質は身体的な症状だけでなく、生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼすことがあるので注意が必要です。

がんそのものの症状や治療による負担に悪液質が加わることで倦怠感や疲労感が強まり、日常生活の動作が制限される場合があります。

また「食べられない」状況を巡って家族との関係にストレスが生じたり、外見の変化から外出や外食を控えるようになったりする場合もあります。こうした変化が、社会的孤立や精神的なつらさにつながることも少なくありません。

患者さん本人だけでなく、支える家族にとっても負担となるため、周囲の理解や支援が重要です。

悪液質と飢餓は何が違う?

悪液質と飢餓は、どちらも体重が減少する点は似ていますが、体内で起きていることは大きく異なります。この違いを理解することが、体重減少への向き合い方を考える上で大切です。

飢餓は安静時のエネルギー消費量が低下し、体力を温存しようとします。脂肪が優先的に使われ、筋肉は比較的保たれやすい状態です。そのため十分な栄養を摂取できれば回復が期待できます。

一方、悪液質は炎症などの影響により、安静時でもエネルギー消費量が増加します。代謝異常があるので、脂肪だけではなく骨格筋の分解が進みやすく、栄養補給だけでは十分に回復しにくい場合があるのが特徴です。

悪液質が発生する代表的な要因

悪液質は複数の要因が関与する病態ですが、そのうちの一つとして、先述したサイトカインと呼ばれる物質が関与していると考えられています。サイトカインはがん細胞や周囲の免疫細胞から放出され、体内でさまざまな作用を及ぼす物質です。

サイトカインは脳の視床下部に働きかけ、食欲を促す神経を抑制し、反対に食欲を抑える神経を刺激します。その結果、強い食欲不振が生じることがあるのです。

また筋肉や脂肪の分解を促進し、安静にしていてもエネルギーが消費されやすくなります。味覚の変化や吐き気、痛み、抑うつ状態などが重なり、食事がさらに取れなくなる悪循環につながることもあるでしょう。

悪液質の診断基準

悪液質の診断は数値だけで決まるものではありません。前悪液質・悪液質・不応性悪液質といった段階ごとに基準が整理され、進行度を評価する目安として用いられます。

各段階の特徴を詳しく解説します。

※参考:日本がんサポーティブケア学会.「がん悪液質ハンドブック」.
http://jascc.jp/wp/wp-content/uploads/2019/03/cachexia_handbook-4.pdf ,(参照2026-01-27).

前悪液質

悪液質の初期段階に当たるのが前悪液質です。食欲不振や代謝異常の兆候が少しずつ現れ始めますが、外見上の変化が目立たないため見逃されやすい段階です。

診断の目安として、過去6か月間の体重減少が5%以下であることが一つの基準とされています。この段階では、体重や筋肉量の大きな減少がまだ起きていない場合も多いでしょう。

前悪液質は、早期に気付き医療的な介入や支援につなげれば、回復が期待できる段階とされています。体重変化や食欲の低下といった小さなサインを見逃さず、早めに医療機関へ相談することが、進行を防ぐためにも大切です。

悪液質

悪液質と診断される段階では、体重減少が明確になり、筋肉量の低下が進行している状態がみられます。全身性の炎症を伴うこともあり、生活機能への影響が出やすくなるでしょう。

診断の目安として、以下のいずれかを満たす場合が基準として用いられます。

  • ● 6か月以内に5%を超える体重減少がある
  • ● BMIが20未満で、かつ2%を超える体重減少がある
  • ● サルコペニアがあり、かつ2%を超える体重減少がある

これらの数値は状態を評価するための指標の一つであり、数値だけで判断されるものではありません。体力の程度や日常生活の動作が可能かどうか、治療の継続状況などを含め、総合的に評価されます。

不応性悪液質

不応性悪液質はがんが進行し、悪液質に対する治療効果を得にくくなっている段階です。異化亢進が強く、抗がん剤治療などに抵抗性を示す場合があるでしょう。

診断の目安として、予測生存期間が3か月未満とされる段階が該当します。この時期は体への負担を最小限にすることが重視され、積極的な栄養療法よりも痛みや苦痛を和らげる対応が優先される傾向にあります。緩和ケアと連携しながら、本人らしい時間を大切にする支援を行うと良いでしょう。

悪液質の検査方法

悪液質の評価は、特定の検査だけで確定するものではありません。体の変化や炎症の状態、生活状況などを複数の視点から確認し、総合的に判断されます。

まず行われるのが身体測定です。体重減少率の算出やBMIの計算により、体重変化の経過を把握します。血液検査では炎症の指標となるCRPの上昇があるか、栄養状態を反映するアルブミン値が低下しているかなどを確認します。

次に行われるのが画像診断です。CTやMRIを用いて骨格筋量の減少を客観的に評価します。見た目では分かりにくい筋肉量の変化を把握できる点が特徴です。併せて食欲や食事量、生活の質(QOL)の変化について、問診で詳しく確認します。

これらはいずれも診断確定ではなく、状態を把握するための指標です。定期的に確認を行い、変化を追うことが重要とされています。

悪液質の治療方法

悪液質に対する標準治療は現時点では確立されていません。そのため薬物療法・栄養療法・運動療法を組み合わせ、患者さんの状態や段階に応じて検討します。

ここからは、それぞれの治療方法について詳しく見ていきましょう。

薬物療法

悪液質に対する薬物療法では、いくつかの選択肢を検討します。代表的なのが、アナモレリン(エドルミズ®)です。これは日本で承認された初のがん悪液質治療薬で、グレリン様作用により食欲増進や筋肉量の増加、生活の質(QOL)の改善が期待されており、非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がんが対象です(※)。

またステロイドや食欲増進剤などの対症療法薬を一時的に使用することもあります。これらは副作用への配慮が必要なため、慎重な判断が求められるでしょう。

※参考:小野薬品工業株式会社.「エドルミズ®錠50mgの適正使用に関するお願い」.
https://www.suizou.org/pdf/210322-2/file1.pdf ,(参照2026-01-22).

栄養療法

悪液質における栄養療法の基本は、食べられるときに食べられるものを無理なく摂取することです。高エネルギー・高タンパクの食事が推奨されますが、量や内容は体調に合わせて調整することが大切です。

また少量でも栄養を補いやすい栄養補助食品を活用する方法もあります。特にBCAA(分岐鎖アミノ酸)やEPA(オメガ3脂肪酸)を含む製品は、筋肉維持や抗炎症作用に役立つ可能性があるとされています。

ただし、不応性悪液質の段階では、点滴などの無理な栄養投与が体の負担になることもあるでしょう。そのため患者さんの嗜好や体調を考慮しながら、医師や管理栄養士と相談して治療を進めることが重要です。栄養療法は、あくまで治療を支える補助的な役割として考えられています。

運動療法

筋肉量の維持や身体機能低下を防ぐ目的で、運動療法を検討することもあります。筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせると、生活の質(QOL)の向上が期待できるでしょう。

ただし運動は必ずしも筋肉量を増やすことを目的とするものではありません。体調や病状に合わせ、無理をしないことが最優先です。医師や理学療法士の指導の下、安全性を確認しながら行うことが重要とされています。

また日常生活の中では、短時間の散歩や椅子に座ったままできる体操など、負担の少ない運動から始めるケースもあります。体力の維持や気分転換につながる可能性があるため、状況に応じて取り入れると良いでしょう。

まとめ

悪液質は体重減少だけで判断できる状態ではなく、検査・治療・生活支援を組み合わせて考える必要がある病態です。身体測定や血液検査、画像診断、問診を通じて状態を把握し、状況に応じて薬物療法・栄養療法・運動療法を検討します。

悪液質への対応や、がん治療と並行した治療選択について悩んだ際には、専門の医療機関へ相談することも大切です。

瀬田クリニック東京では、長年にわたる経験と24,500例を超える治療実績を持ち、一人ひとりの状態に合わせた治療提案を行っています。

がん治療の選択肢としてどのような治療方法が適切か検討したい方、標準治療と並行して併用や追加の選択肢を考えたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

瀬田クリニック東京について

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