悪性リンパ腫は血液のがんの一種です。ストレスとがんの発症には関連性があるという見方も存在しており、耳にした方の中には悪性リンパ腫もストレスと関わりがあるのではないかと考えている方もいるでしょう。
本記事では、悪性リンパ腫の概要やリスク要因を踏まえつつ「ストレスとの関係」に着目して解説しました。基本的な治療法と免疫細胞治療にも触れています。
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悪性リンパ腫とはどのような病気か
悪性リンパ腫は、人間の血液の中にある「リンパ球」と呼ばれる細胞ががん化する病気です。高齢者に多く、患者さんは年々増加傾向にあります。
本項ではリンパ球の性質と、悪性リンパ腫の主な症状、種類について解説します。
リンパ球の性質
リンパ球は、細菌やウイルスといった病原体や、がん細胞などの異物を攻撃・排除する「白血球」の一種です。白血球はリンパ球・顆粒球・単球に分かれており、それぞれが協力し合って、体を守る免疫システムの役割を果たしています。
リンパ球は、主にリンパ系組織に存在しています。リンパ系組織とは、免疫システムを統括する組織や臓器(リンパ節、胸腺、脾臓、扁桃腺など)です。
正常なリンパ球もがん化したものも、血液に乗って全身を巡ります。正常なリンパ球は体のあちこちで異物を排除しますが、がん化したものは「リンパ腫」と呼ばれる腫瘍を作ってしまいます。
悪性リンパ腫の主な症状
悪性リンパ腫の症状には、以下のものがあります。このような症状が続くときは、医師に相談しましょう。
- ●主にリンパ節(首、わきの下、足の付け根など)がゴムのような硬さに腫れる
(痛みはなく、リンパ節以外の部位が腫れることもある) - ●倦怠感
- ●発熱
- ●夜間の大量の寝汗(室温に関係なく起こる)
- ●体重の減少
- ●かゆみなどの皮膚症状
- ●おなかが張る、腹痛、吐き気、血便(腹部にリンパ腫ができた場合)
悪性リンパ腫の種類
悪性リンパ腫は細胞の性質や腫瘍の形態によって、100種類以上のパターンがあります。大別すると以下の通りです(※)。
| 大別 | 種類 |
|---|---|
| 非ホジキンリンパ腫 (日本人の患者さんの90%以上) |
B細胞リンパ腫 |
| T細胞リンパ腫 | |
| NK細胞リンパ腫 | |
| ホジキンリンパ腫(特殊な細胞が見られるリンパ腫) | |
リンパ球の中には、それぞれ役割の異なるB細胞・T細胞・NK細胞があります。非ホジキンリンパ腫は、がん化しているリンパ球の種類によって、大きく3つに分かれています。日本人ではB細胞リンパ腫が多く、その割合は悪性リンパ腫全体の約65%です。
※がん情報サービス(国立研究開発法人国立がん研究センター)
https://ganjoho.jp/public/cancer/ML/index.html
悪性リンパ腫が発症する主な原因とリスク要因
実は、悪性リンパ腫が発症する原因は解明されていません。しかし、悪性リンパ腫の細胞には、染色体(細胞の核にある遺伝情報が詰まった物質)の異常が見られることが分かっています。
染色体に異常が起き、がん化したリンパ球(悪性リンパ腫細胞)の増殖によって発症するのが悪性リンパ腫です。この遺伝子異常は後天性(生まれた後に起こるもの)のため、親から子への遺伝はしません。
悪性リンパ腫は高齢者に多く見られる病気で、70代が発症のピークです。そのため、加齢そのものがリスク要因として挙げられています。それ以外のリスク要因には、以下のものがあります。
- ●免疫不全
- ●自己免疫疾患
- ●ウイルス・細菌感染
- ●特定の化学物質
これらのリスク要因について、一つ一つ見ていきましょう。
免疫不全
免疫不全とは、何らかの理由で免疫システムが正常に働かず、感染症などにかかりやすくなった状態です。免疫不全の患者さんは、免疫細胞の異常が起きやすいため、悪性リンパ腫のリスクが高いといわれています。
免疫不全の原因には以下のようなものがあります。
- ●HIV感染症
- ●長期治療が必要な重い疾患
- ●免疫抑制作用のある薬や放射線
自己免疫疾患
自己免疫疾患は、体に侵入した異物しか攻撃しないはずの免疫細胞が、自分自身の細胞や組織を攻撃してしまう病気です。自己免疫疾患を持つ患者さんは、免疫細胞の異常が起きやすいとされています。
自己免疫疾患には以下のようなものがあります。
- ●関節リウマチ
- ●バセドウ病
- ●Ⅰ型糖尿病
- ●全身性エリテマトーデス
- ●血管炎
ウイルス・細菌感染
一部のウイルスや細菌はリンパ球に感染して、染色体に異常を引き起こします。このような感染が疑われる場合は、悪性リンパ腫の発症を防ぐためにも、早めに医療機関に相談しましょう。
悪性リンパ腫の発症リスクを高めるウイルス・細菌には、以下のようなものがあります。
- ●EB(エプスタイン・バー)ウイルス
- ●ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)
- ●C型肝炎ウイルス
- ●HIVウイルス
- ●ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)
特定の化学物質等
特定の化学物質等の中には、悪性リンパ腫の発症リスクを高めるものがあります。
- ●抗がん剤
- ●放射線
- ●一部の除草剤、害虫駆除剤、肥料など
悪性リンパ腫とストレスの関係性(ストレスががん発症に与える影響)
悪性リンパ腫では、発症とストレスの明確な相関関係を示す研究結果は報告されていません。しかし、ストレスと広い意味でのがんの発症には、少なからず関わりがあると考えられています。
本項では、ストレスががん発症に与える影響を解説します。
がんとストレスとの関係を示す具体的な事例
診療の現場で働いている医師は、ストレスとがんの因果関係を実感するときがあるといいます。
実際に「経過の良かった患者さんが、トラブルに巻き込まれた途端に再発した」といった事例が起きているそうです。明るく前向きな患者さんの中には、再発の予想に反し、長期にわたって元気に過ごしている人もいます。
がん治療専門機関が、ストレスの強さとがんの罹患の関係を調べたデータもあります。それによると、常に強いストレスにさらされている人のがん罹患リスクは、ストレスをあまり感じない人の約1.1倍でした。特に肝臓がんと前立腺がんは、この傾向が強かったそうです。(※)
※がん対策研究所 予防関連プロジェクト(国立研究開発法人 国立がん研究センター)
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8088.html
ストレスが体に与える影響①・活性酸素
ストレスががんを発症させるプロセスはまだ不明ですが、何が影響を与えているのかについては、明らかになっていることもあります。その一つが活性酸素です。
体にストレスがかかると、免疫細胞の中の「顆粒球」と呼ばれる白血球の一部が増加します。顆粒球は、体の中で見つけた異物を食べて除去しますが、その過程で活性酸素を発生させることが分かっています。
活性酸素は強い酸化力を持つ物質で、本来の役割は体内の異物除去や細胞間の情報伝達です。しかし、活性酸素が増え過ぎてしまうと、異物ではない正常な細胞を傷つけてしまいます。
ストレスが体に与える影響②・自律神経の乱れ
自律神経は血圧、心拍、体温、消化など、体内のあらゆる機能を調整している神経系です。自律神経は役割の相反する「交感神経系」と「副交感神経系」から成り立ち、両者はお互いにバランスを取りながら機能しています。
- ●交感神経系:
ストレス状態や緊急事態で優位になる - ●副交感神経系:
日常的な状況下で優位になる
ストレスは自律神経を乱れさせ、免疫力の低下や炎症の持続を招きます。そして、体がこのような状態になると、時としてがんができやすくなると考えられています。
それでは、どうして自律神経が乱れると、免疫力の低下につながってしまうのでしょうか。
ストレスが免疫系に与える影響とリンパ腫との関連
ストレスによる自律神経の乱れは、以下のような影響を及ぼします。
- ●免疫細胞の機能抑制
- ●自己免疫疾患の発症
本項ではこれらの影響と、悪性リンパ腫との関係を解説します。
免疫細胞の機能抑制
慢性的なストレスは、交感神経を長期にわたって優位にする原因の一つです。交感神経の興奮状態が続くと、免疫細胞の働きが抑制されてしまうため、がん細胞に対する抵抗力が下がります。
またEB(エプスタイン・バー)ウイルスは、悪性リンパ腫を発症するリスク要因の一つです。EBウイルスは日本でもごく身近な存在ですが、多くの場合は感染しても、免疫の働きにより自然に治癒します。
しかし、免疫細胞の機能が抑制されている場合は、この限りではありません。
自己免疫疾患の発症
強いストレスは、免疫システムが誤って自分自身の細胞を攻撃する「自己免疫反応」を引き起こす可能性があるといわれています。
ストレスを抱えていると、体の中の炎症反応が過剰になる場合があります。そして、炎症は自己免疫疾患(クローン病、多発性硬化症など)の発症要因です。実際に、ストレス関連の障害を抱えている患者さんは、そうではない人より自己免疫疾患の発症割合が高かったという研究結果も存在します。(※)
前述した通り、自己免疫疾患は悪性リンパ腫のリスク要因だとする見解もあります。ストレスが直接的に悪性リンパ腫を引き起こすわけではありませんが、このような形で遠因となっているかもしれません。
※ストレス関連障害とその後の自己免疫疾患との関連
https://pmc.carenet.com/?pmid=29922828&keiro=journal
悪性リンパ腫治療における免疫細胞治療の可能性と役割
悪性リンパ腫の治療は、病気のタイプや広がり方、がん化したリンパ球の種類、患者さんの状態などを総合的に判断して決められます。
本項では、悪性リンパ腫の標準治療と免疫細胞治療の可能性を解説します。
悪性リンパ腫の治療
悪性リンパ腫の治療の中心は、薬物療法(化学療法)と放射線治療です。場合により、造血幹細胞移植や手術が行われることもあります。
薬物療法
薬物療法は、抗がん剤や分子標的薬などの薬剤を組み合わせる「多剤併用療法」が主流です。悪性リンパ腫の薬剤には多様なパターンがあり、病気のタイプや患者さんの状態に合わせて組み合わせられます。
悪性リンパ腫の薬物療法は、多くの患者さんに効果が期待できる治療法で、中には完治した例もあります。
放射線療法
放射線療法は、放射線をスポット照射して、がん細胞をねらい打つように攻撃する治療法です。通常は薬物療法と併用しますが、病気の進行が局所的で遅い場合は、放射線療法だけを行うケースもあります。
免疫細胞治療とは
免疫細胞治療は、薬剤や放射線など外部の力ではなく、人間の体にあらかじめ備わった免疫細胞を生かす治療法です。患者さんの体から免疫細胞を取り出して、がん細胞や病原体に対する攻撃力を高める加工を施し、培養して体の中に戻します。
がん細胞を強い薬で攻撃する薬物療法は、強い副作用が問題になります。一方で免疫細胞治療は、患者さんが元々持っている免疫細胞を用いるため、薬物療法に比べて副作用が現れにくいです。免疫細胞治療は、ほとんどのがんが治療対象となっています(一部のがんを除く)。
免疫細胞治療には、仕組みや特徴が異なるいくつかの種類があります。医師は患者さんのがん細胞の性質や体の状態を詳しく検査して、免疫細胞治療の中から適切なものを選択します。
※免疫細胞治療の種類や仕組みを詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください
瀬田クリニック東京「免疫細胞治療の種類について」
悪性リンパ腫における免疫細胞治療の症例
実際に、悪性リンパ腫に対して免疫細胞治療を行った症例をご紹介します。
症例
80代 男性
びまん性大細胞B細胞型悪性リンパ腫
(骨破壊を伴うタイプ)
治療法:アルファ・ベータT細胞療法
80代 男性患者さんの最初の症状は、歯ぐきにできた痛みのある潰瘍でした。そこで歯科医を受診し、生検を行ったところ、診断結果は「慢性壊死性炎」。鎮痛剤と抗生剤を処方されましたが、潰瘍はさらに大きくなり、痛みも増してしまいます。そこで再検査を行い「びまん性大細胞B細胞型悪性リンパ腫」であることが判明しました。
患者さんは薬物療法を希望しなかったため、放射線療法での治療が始まりました。しかし痛みの副作用がひどく、小線量の放射線(通常の線量に比べて5分の1以下)しか使用できなかったそうです。そこで、アルファ・ベータT細胞療法による免疫細胞治療を2週間に1回の間隔で実施することになりました。
1クール(2週間おき × 6回)の治療終了後に行った、CT検査とPET検査の画像診断では、がんが確認できないほど小さくなっていました。その後は月に1回のペースでアルファ・ベータ細胞療法を継続していますが、8年経過時点で再発は見られていません。
まとめ:悪性リンパ腫の発症とストレスの関連性は否定できない
今回の記事では、悪性リンパ腫の特徴やリスク要因、ストレスとの関連性などを解説しました。
悪性リンパ腫とストレスの直接的な因果関係は不明ですが、ストレスとがんの発症には関連性があると見られています。ストレスは自律神経のバランスを乱し、免疫力を低下させて、悪性リンパ腫の発症に影響を及ぼしている可能性があります。
免疫細胞治療は、免疫力を上げてがんと闘う力を引き出す治療法です。瀬田クリニック東京では、患者さん一人ひとりの体質やがん細胞の状態に合わせた「個別化医療(オーダーメイド医療)」を実施しています。
免疫細胞治療を検討している方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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