韓国での免疫細胞治療の現況報告①
院長ブログ
2023年11月23日に韓国ソウルで開催されたがん免疫療法のシンポジウムに参加して参りました。日本は祝日でしたが、韓国は平日でもあり16時から開始とされ、21時を過ぎるまで、活発な議論がかわされました。
国際シンポジウムですが、韓国国外から招待され講演をしたのは私と他の日本人1名、ドイツのボン大学から1名でした。また、韓国内からがん治療に携わる医師を中心として約150名が参加しました。
以前のブログでも報告しましたが、韓国では免疫細胞治療が医薬品として承認され、治療に使用されています。
Immuncell-LC®という商品名で肝臓がんに適応になっています。
Immuncell-LC®は免疫細胞治療の中のアルファ・ベータT細胞療法とほぼ同じ治療法です。大規模な第3相臨床試験で対照群と比較して死亡率を79%低下させ、術後の肝臓がん治療薬として承認されました。2021年に先進バイオ医薬品として再認可されています。Immuncell-LC®は現在、膵がんなどでの認可を目指して第3相の治験が進められています。開発は韓国の大手の製薬会社であるGC(Green Cross)Phama社により行われました。巨額な開発費用を要したために、治療費は日本での場合と較べると2倍以上になっています。最近、Immuncell-LC®を受けた患者は1万人程度であり、肝臓がんにかかわらず、適応外使用で多くのがん患者さんが治療を受けていることが報告されました。
私の講演では、アルファ・ベータT細胞療法のみならず、がん患者の免疫機能、がん細胞の免疫的性質を診断した上で、T細胞に限らず様々な免疫細胞を使った個別化した免疫細胞治療が必要なこと、また、低容量の免疫チェックポイント阻害薬を併用した免疫細胞治療の安全性及び有効性について報告しました。また、建陽大学病院血液腫瘍科のチェ・ジョングォン教授は免疫チェックポイント阻害薬、化学療法を併用した免疫細胞治療により、極めて進行してしまったがんに対しても治療に成功していることが、多くの実例を紹介しながら解説されました。
今回のブログはここまでとなります。
次回は、「韓国での免疫細胞治療の現況報告②」として、日本と韓国の免疫細胞治療の法制度の違いについてお話します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
◆院長ブログバックナンバー
-自然免疫=パトロール部隊と獲得免疫=精鋭部隊
-免疫力とは
-個別化免疫療法とCancer precision medicine
-免疫チェックポイント阻害剤【ドスタルリマブ】直腸がんに対する完全奏功率100%の驚異