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Vol.3 法律に基づく安全性の高い治療提供体制の構築

2013年10月、がんに対する免疫細胞治療などの再生医療の実用化をより安全・迅速に推進するための法律「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(以下、「再生医療等安全性確保法」)が成立し、翌年の2014年11月に施行されました。

今回は、その法律の内容と、当院の対応について紹介します。

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 免疫細胞治療の安全性確保のための法律が成立

細胞を活用して機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器の再生を図る「再生医療」。がん免疫細胞治療の他にも、心臓病に対する心筋シートや火傷に対する自家培養表皮など、様々な再生医療技術が研究されてきました。そして2010年代に入り、iPS細胞免疫細胞の一つである樹状細胞の研究に相次いでノーベル賞が授与され、「再生医療」は国内外から大きな期待と注目を集めるようになりました。

政府も再生医療の実用化を国策として推進すると表明し、2013年5月には、その理念法として「再生医療推進法」が成立し、再生医療の実用化にあたり生命倫理に配慮しつつ安全な研究開発や普及に向けて総合的に取り組むことが盛り込まれました。それを受け、同年10月に、その基本理念を具現化する制度的枠組みとして、医療法の下で「再生医療等安全性確保法」が成立(*)しました。

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(厚生労働省WEBサイトの図解を再構成)

再生医療等安全性確保法は、その名の通り再生医療の安全性の確保を図るため、免疫細胞治療を含む再生医療を提供する医療機関や、細胞を培養・加工する施設の基準を新たに規定したものです。この法律では、再生医療を人の生命及び健康に与える影響(リスク等)の程度に応じて「第1種再生医療等」「第2種再生医療等」「第3種再生医療等」と三分類し、それぞれの分類に応じた医療提供の手続きを定めているのが大きな特徴です。
免疫細胞治療は投与する細胞の機能や投与方法を鑑み、最もリスクの低い「第3種再生医療等」に分類されています。

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(厚生労働省WEBサイトの図解を再構成)

 当院の法対応

当院は免疫細胞治療の提供にあたり、この法律に基づいて以下の対応をしています。

【認定再生医療等委員会の設置】
「認定再生医療等委員会」とは、医療機関が提供する再生医療の倫理性、安全性、及び継続の妥当性等を審査するための委員会として設置が義務付けられています。医学または法律学の専門家等から構成され、治療実施に係る公正な審査業務能力を有することを厚生労働大臣から認定される必要があります。

当院は「再生医療等委員会」を法の施行に先駆けて設置し、2015年1月に厚生労働大臣より認定された「瀬田クリニックグループ認定再生医療等委員会」として活動を開始しました。
委員の構成は、再生医療等について科学的知見・医学的知識を有する医学・医療の専門家及び法律に関する専門家等の有識者の他、患者団体代表など一般の方も含めたものになっています。法律の生成の過程で、第3種再生医療等を審議する認定再生医療等委員会はお手盛り委員会になるとの危惧も指摘されておりましたが、当院では委員数も法律で義務付けられた5名以上より多い13名を確保し、かつ、約半数を外部委員とした構成で公平性を確保しています。また、審議内容の透明性を確保する努力を続けています。

→瀬田クリニックグループ認定再生医療等委員会の名簿(2017年3月現在)
→瀬田クリニックグループ認定再生医療等委員会のこれまでの議事録

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【細胞培養加工施設の届出】
再生医療等安全性確保法においては、医療機関内に設置される細胞培養加工施設の管理者情報、細胞加工物の種類など施設の詳細情報について厚生労働大臣に届け出ることが義務付けられています。
当院の細胞培養施設においては、2015年2月に細胞培養加工施設の届出が受理されました。なお、法律生成時においては、瀬田クリニック新横浜に併設されている細胞培養加工施設を多くの関係者が訪れ、施設基準作りにお役にたてたのではないかと考えております。

【厚生労働大臣への再生医療等提供計画の提出および定期報告】
医療機関が再生医療を提供する際には、法律が定める基準に則り再生医療等提供計画を作成し、上記の「認定再生医療等委員会」での審査・承認を経て、厚生労働大臣に提出する必要があります。本計画書は、治療の詳細を記した書類のほか、治療を提供する医師の略歴や業績、細胞加工基準、治療に関する国内外の研究成果など、詳細情報を添付する必要があり、内容は多岐に亘ります。

当院で提供している治療についても、認定再生医療等委員会での議論を経て再生医療提供計画を作成し、厚労大臣に提出しております。なお、提供計画を提出した治療については、その患者数や副作用の発生状況、治療の安全性と科学的妥当性の評価などを定期的に厚生労働大臣に報告する義務があります。

また、日々集積される診療データは、報告のためだけでなく、今後の臨床研究のために役立つ貴重なビッグデータとして活用しております。

 法整備以前から続けてきた自主的な安全性確保

免疫細胞治療の健全な普及にとって、安全性の確保は最重要事項です。
当院では1999年の開院当時よりこのような法整備の必要性を訴えると共に、安全性担保のための自主的な取り組みとして、徹底した品質検査の実施や細胞加工のSOP(Standard Operating Procedures:標準作業手順書)の制定、培養技術者認定制度の設立などの対策を講じてきました。
また、再生医療等安全性確保法が成立する3年前の2010年3月には、厚生労働省通知発出により、自家細胞・組織を用いた再生・細胞医療の実施要件が明確化されました。その一か月後には自己点検評価チームを発足させ、上記通知要件に基づき、医療実施体制の自己点検活動を実施しています。また、全国の連携医療機関の医療提供体制においても同様に自己点検活動を実施し、全国の医療機関が集う地域医療連携講習会等で点検結果を報告・共有しています。(安全性確保への取り組みは、別途、説明させていただきます)

このような活動の結果、当院は1999年3月の開院以来、患者さんに侵襲を与えるような医療事故は一度も経験しておりません。
今後も、免疫細胞治療の健全な普及のため、法律に基づいた安全性の高い治療を提供して参ります。

(*)併せて「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(改正薬事法)も成立しました。

2014年の再生医療等安全性確保法の施行にあたり、瀬田クリニックグループ広報誌『HOPE』16号内で医師による座談会を実施しました。こちらも併せてご覧ください。
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