ご予約・お問合せ
平日10:00~17:00
お電話03-5280-0086

>アクセスマップ

メニュー

×閉じる

瀬田クリニック東京

〒101-0062
東京都千代田区神田駿河台2-1-45 ニュー駿河台ビル 3F MAP

  • JR中央線(快速)・中央総武線(各駅停車)「御茶ノ水駅」下車 御茶ノ水橋口徒歩2分
  • 東京メトロ丸ノ内線「御茶ノ水駅」下車  出入口2番より徒歩4分
  • 東京メトロ千代田線「新御茶ノ水駅」下車  B1出口より徒歩4分
  • 東京メトロ半蔵門線、都営新宿線・三田線「神保町駅」下車 A5出口より徒歩8分

03-5280-0086(平日10:00~17:00)

当院と連携している全国の医療機関

×閉じる

Vol.2 がん治療におけるランダム化比較試験と免疫細胞治療

<index>

 医薬品開発でのランダム化比較試験と他のがん治療におけるエビデンス

医薬品の承認、保険適応に関しては治験が必要となります。第1相では、はじめて人の体内に合成した物質が投与される(First in human)のですから安全性をみる試験から始まり、試験を段階的に第2相、第3相と進め、ランダム化比較試験で生存率や無増悪生存率の調査を行い、有効性を証明するという過程をとります。

すべての医薬品がこのような過程を経たわけではなく、経験的に有用であろうという判断から、使われている薬剤もあります。最近はがん治療の中でも副作用対策にも使われる漢方薬もその代表です。長い中国の歴史があるとはいえ、現在、日本で販売されているものはエキス剤が中心で、成分も使われ方も中国医学とはかならずしも同じではありません。しかし、経験的に有用であると医師は認識してがん治療現場でも広く、処方されています。一般の医薬品は合成された単一の分子ですが、漢方薬は単一な分子ではありません。また、人間が人工的に合成したものでもなく、自然界に存在する植物などから抽出した様々な成分からなるものです。

免疫細胞治療などの細胞を使った治療では、細胞はもちろん、単一な分子ではありません。たとえば、イリノテカンという抗がん剤の場合、その単一な分子から成る医薬品は、細胞分裂においてDNA合成に重要な役割を持つトポイソメラーゼという酵素を阻害します。その結果がん細胞に毒性を持って作用します。このように、作用は非常にはっきりしており、わかりやすいです。

一方、細胞医療はというと単一な分子による作用とは異なります。たとえば、T細胞を使った治療において、直接、T細胞ががん細胞を殺傷する機能が期待されますが、この殺傷の過程、方法もひとつではなく、がん細胞の抗原を標的としたり、ストレスタンパク、熱ショック蛋白を標的としたり、殺傷の方法もパーフォリンやグランザイムといった因子を使ったり、Fasという分子で結合したり、様々です。また、直接、がん細胞を殺傷することだけでなく、体内の、免疫応答を促進する様々な因子、インターロイキン2、インターフェロンγなど様々な因子を放出します。インターフェロンγという単一な分子はがん治療の医薬品として承認されていますが、T細胞の治療とはまったく次元が違うものです。細胞も医薬品のように注射で患者さんへ移入されますが、まったく異なる治療法であり、医薬品とは異なる評価基準、承認制度が構築されました。それについては後で、解説します。

医薬品においては、人類が意図的に合成した多くは自然界に存在しない物質が人の体内へ投与され、それが動物実験と同様に安全に、また、期待した作用を発揮するかはあまりにも予測がつかないことです。治験という過程で段階的に安全性、有効性を確認していくことは必要と思います。しかし、医薬品以外の治療については治験がかならずしも行われる訳ではありません。医薬品以外のがん治療で、標準治療として保険適応で行われている手術では治験やランダム化比較試験は多くの場合、行われずに認可されていますし、放射線治療も同様です。たとえば、非小細胞性肺がんの1期あるいは2期では切除するべきであり、切除しない場合とのランダム化比較試験を行うべきというわけではありません。ただ、放射線治療との比較などは行われておりませんし、また、様々ながんにおいてリンパ節郭清を行うことが有効かどうかなどのランダム化比較試験が行われている場合は少ないといえます。放射線治療の場合もその照射野をどの範囲にすべきか、遠隔転移への照射はどこまでが有効かなど、ランダム化比較試験を行うことは難しいです。ランダム化比較試験での結果を有効性判断の条件とすると、粒子線治療についても1994年に臨床試験が開始されてから、先進医療、自由診療で行われてきておりますが、現在までに保険適応となったものは骨軟部腫瘍など極めて限られた疾患のみです。
なお、免疫細胞治療を批判する方々は、この医薬品を承認する際に行われる第1相から第3相の過程を踏まない臨床研究は認めない、治験以外の研究論文も認めない、治験という過程以外では有効性を認めないという立場なのだと思います。

 機能・品質が採取する患者さんの細胞ごとに異なる免疫細胞治療は、ランダム化比較試験を行うことが困難

現在、がん治療薬である医薬品を開発し保険承認を受ける際には、先程ご説明した通りその有効性を証明するためにランダム化比較試験という臨床試験の実施が必要です。このランダム化比較試験について更に詳しく解説します。

このランダム化比較試験とは、ある条件下で対象として集められた数百名以上のがん患者さんの集団において、2種類の治療法についてどちらの治療を受けるかをくじ引きで決めた上で、治療を受け、生存期間が延長するという結果が求められます。この証明を持ってはじめて有効性が確認されたとして扱われています。

医薬品におけるこのようなランダム化比較試験は「治験」(法律上の製造販売の承認を取る試験)として行われます。治験は膨大な費用を要しますが、これはほとんどの場合、企業の開発費から賄われます。医薬品となった後にその開発費を企業は医薬品を売ることで回収しています。早期の段階で医師自らが研究費を獲得できた場合は、医師主導治験として行われるものも含まれますが、その場合でも医薬品として承認されるまでには、企業治験に移行することがほとんどです。

一方、民間の医療施設である当院でこのような大規模な実験的な試験を行うには、人材面・資金面からも困難(*1)ですし、更には、多数の患者さんを集めて、治療実施群と非実施群に分けるという倫理的な問題もクリアしなければなりません。

(*1)免疫細胞治療の場合は個々の患者さんから細胞を採取して、約2週間かけて個別にオーダーメイドな細胞培養(調整・加工)を経て作成します。したがって、多数例で比較試験を行うと極めて膨大な資金が必要となります。
一つの事例があります。ホルモン療法が無効な前立腺がんの患者さんを対象に免疫細胞治療のランダム化比較試験が行われました。多施設共同の二重盲検という、ランダム化比較試験の中でもより質の高い方法がとられました。結果は免疫細胞治療を受けた場合、プラシーボ(偽薬)を受けた場合に比較して生存期間が延長するというものでした。この試験はもっとも権威有る医学誌の1つであるNew England Journal of Medicineに掲載されています。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1001294
この結果を受けて、2010年に米国でFDA(米国の承認機関)が前立腺がんに対して、この免疫細胞治療をプロベンジという名前の医薬品として正式に承認しました。ただ、その開発コストは900億円以上と膨大で、そのため、治療費は1回の注射で31,000ドル(350万円)と高額となり、また治療回数も複数回に及ぶ為に、残念ながら普及することはありませんでした。我が国では、世界に先駆けて2014年に施行された改正薬事法によって、開発期間の短縮とコストの低減にも配慮した承認審査制度(いわゆる早期承認制度)が出来ました。

そして、最大の問題として、患者さんの細胞を使った治療においては、一般の医薬品の評価手法による治療効果の証明が難しいことが挙げられます。

臨床試験において、一般の医薬品であれば、一定の原材料で化学合成された均一な製剤を最適と思われる一定の質と量で患者さんに投与します。
一方、患者さんご自身の細胞を体外で加工してご自身の治療に使う免疫細胞治療では、患者さんの元々の免疫状態の違いにより原材料となる細胞の品質も違い、そのために投与する細胞の質も一人ひとり異なります。医薬品でいえば、患者さんごとに様々な質の医薬品を投与して臨床試験を行うようなことになってしまいます(*2)。

(*2)治療効果については、もちろん、均一な医薬品を投与した場合でも個人差がありますが、免疫細胞治療の場合はもっと大きな個人差が生じることになります。すなわち、免疫細胞治療では効果としての生存期間が大きく延長する方とそうでない方の個人差が大きくなります。

よって、比較試験を行ったとしても、生存期間の平均値(中央値)を用いて延長を証明することがどうしても難しくなってきます。たとえば、生存期間が六ヶ月延長したという結果が出たとしても、医薬品に比べて免疫細胞治療ではこの六ヶ月の中央値の元となるデータにばらつきがあるので、統計学的な証明が非常に難しくなるのです。

免疫細胞治療において、治験を行って、最終的にはランダム化比較試験を行って承認を得るには、だれが、いつ、どのように行うかを決めなければなりません。治験は現在では医師主導治験も求められていますが、ほとんどの場合、企業が行います。これには膨大な費用を要し、通常は企業が開発費で賄い、医薬品となった後にその開発費を企業は医薬品を売ることで回収しています。
免疫細胞治療においては一般の医薬品と同様の治験を行うことは不可能とはいいませんが、大変に困難ということを述べてきました。プロベンジでの失敗、また、遺伝子改変したT細胞を使ったCAR-Tというがん治療は非常に大きなコストを要し、治療費が45万ドル(5,000万円)にもなるといわれています。免疫細胞治療においては、医薬品とは別な分野で、再生医療等製品としての開発を行っていくことになると思います。

 “研究する医療機関”としてのマインドを持ち、エビデンスを蓄積

1999年の開設当時、一般の医薬品のような比較試験を実施し、承認を得た上でクリニックを開院し治療を実施することがベストだったというご意見もあろうかと思います。
しかし当時、創設者の故江川滉二博士は前述のような課題に対して免疫細胞治療にふさわしい法的枠組みが整備されていないとの思いが強く、一方で、多くの患者さんにこの治療を早く届けたいとの強い想いから、まずは医療法の下で正当な医療として認められていた、医師の裁量によって治療ができる「自由診療」でスタートする(*3)という選択をしました。

(*3)その後、2013年には免疫細胞治療を含む再生医療の迅速かつ安全な提供を目的とした「再生医療等安全性確保法」が成立、翌年に施行されました。当院では同法に基づき、認定再生医療等委員会の設置や再生医療等提供計画の提出、さらには厚生労働大臣への定期報告などを実施しています。
同法は、再生医療等を提供しようとする者が講ずべき措置を明らかにするとともに、リスクに応じた再生医療等の分類、再生医療等の提供に係る手続きや適正な提供のための措置、更には特定細胞加工物の製造委託等について規定しています。免疫細胞治療の健全な普及にはこうした適切な規制が欠かせないとの考えから、当院では従来より法制度の整備が必要であることも訴えてまいりました。(詳しくは「当院は、法律に基づく安全性の高い治療提供体制を整備しています」をご覧ください)

しかしながら、免疫細胞治療を社会に健全に普及させ、患者さんのご負担を少しでも軽減すべく、そして将来的に公的保険の適用を受けるためには、エビデンスの提示、すなわちその有効性を証明していくための努力は欠かせません。

そのため、瀬田クリニックでは開院当初から基礎研究及び臨床研究を実施する研究部門を設置し、患者さんに治療を提供する一方で、研究活動も多くの大学病院や地域の中核医療機関等と並行して行ってまいりました。

外部の大学病院やがん専門病院等の先生方には、共同研究に参画頂くとともに、実際の医療現場での診療も担当頂いています。いずれの先生もがん診療に関する高いスキルと研究マインドを有し、標準治療に従事しながら免疫細胞治療への理解も十分お持ちの方々です。保険外診療のクリニックで勤務していることで批判を受ける可能性もある中、がんに苦しむ患者さんを救いたいという強い意志を持ち、免疫細胞治療に取り組んでくださっている先生方ばかりです。有名一流大学の地位の高い医師を宣伝目的で大勢集めていると、逆の立場の、保険外診療に反対の方々から批判されることもありますが、全くの誤解です。当院で長年に亘って診療いただいている先生も多く、当初は高い地位になかったものの、その後の業績で現在の地位に就かれた方も少なくありません。

創設者の故江川滉二博士は開院当時のことをこう振り返っています。
「当時、まだまだ免疫細胞治療は発展途上でした。しかし、末期がんが治った人が少数でもいるならば、そこには何らかの理論的根拠があるはずだ。先入観を捨てて、そういった事例も観察し、研究を続けてみる必要がある」(『がん治療第四の選択肢』河出書房新社刊)

開院当時は瀬田クリニック内の小さなラボからの取り組みでしたが、2009年の創立10周年を機に臨床研究・治験センターとして組織を拡大し、現在では全国の免疫細胞治療を実施する50を超す医療機関と共同で研究を行う組織体(がん免疫細胞療法評価グループ:CITEG)も立ち上げ、更なるエビデンスの構築に努めています。

繰り返しになりますが、従来のランダム化比較試験の評価基準では細胞治療の有効性の評価を行いづらいという課題がありました。そのため、免疫細胞治療など細胞を用いた治療にふさわしい評価基準が議論され、改正薬事法(*4)でもその特性を踏まえた規制が構築されました。また、2013年には、厚生労働省による医薬品の審査を迅速化するための事業「革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業」において、“がん免疫療法開発のガイダンス”が示され、免疫細胞治療分野における研究のあり方も示されました。

目の前にいらっしゃる患者さんに最適な治療を実施しながら、同時に、将来的には公的保険の適用も視野に入れ、有効性のエビデンスを示すために、研究活動を続けていくこと。当院は、この二つの取り組みを真摯に続けてまいります。

(*4)再生医療等製品の薬事開発もその普及の点から重要である。再生医療等製品は通常の薬物療法で使用される均一な医薬品とは異なり、不均一な細胞を原材料として、培養という製造工程を経て、治療に使用される最終製品が作られる。したがって、最終製品の品質が不均一であり、一定数の限られた症例では評価が困難であるという特性を有する。治験が長期化することや比較臨床試験が困難な場合が多いことも指摘されている。そのため、薬事法改正法(医薬品医療機器等法)の中に、再生医療等製品に関しては有効性が推定され、安全性が確認されれば、条件及び期限付きで特別に早期に承認できる仕組み(早期承認制度)が導入された。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/organbio/23/2/23_189/_pdf
この早期承認制度は国際的にも注目され、有用な治療を患者へできるだけ早く届ける上で意義深い制度である。

このページの先頭へ

 
×閉じる