抗がん剤治療と運動療法
看護師ブログ⑭

みなさま、こんにちは。
寒いとついつい室内にこもりがちでしたが、やっと外に出て身体を動かしたくなる陽気になりましたね。
みなさまは最近何か運動をしていますか?私は週に2回ジムに通って、筋トレをしています!
がんの治療を上手くいかせるためにも、運動は大切です。
そこで、今回は抗がん剤治療と運動療法についてお伝えしていきます!
抗がん剤治療に備える体力の重要性
がん治療のためには、治療強度に耐えられるだけの体力や筋力があることが重要です。
身体が弱ってくると強い治療を受けることで副作用が致命的になるリスクがあり、強度を落とした治療を選択せざるを得ません。
ある研究によると、抗がん剤治療前に体力・筋力が十分にある患者さんと、低下している患者さんの入院期間や生命予後を比較したところ、前者のほうが入院期間は短く、生命予後は長いという結果になりました。
がんの治療、とくに抗がん剤治療を受ける患者さんでは、治療前の体力・筋力が十分にあることが、治療を成功させるために大切なのです。
副作用による体力の低下~抗がん剤治療の落とし穴~
一方で、治療前に体力・筋力が十分にあっても、治療の経過とともに徐々に低下していく可能性があります。
抗がん剤治療では、程度は様々ですが多くの患者さんに副作用が出現します。その副作用の中で、幅広い薬剤で発生するものが倦怠感(だるさ)で、これは体力・筋力の低下と密接に関わっています。倦怠感が出現すると身体を動かすことが辛くなり、ベッドで横になって過ごす時間が増えていきますが、寝たきりの状態で1日過ごすと約3~5%の筋力低下が生じると言われています。つまり、倦怠感が強く出るほど体力・筋力は低下してしまうのです。
また、副作用として末梢神経障害(手足のしびれ)が出現する薬剤もあります。しびれの症状が強くなると、足裏の感覚が鈍くなり、身体を支えたり、バランスをとったりすることが難しくなります。そして、転倒リスクも高くなるため、動くことに恐怖を感じて活動を制限し、動かなくなることで体力・筋力は低下してしまいます。
抗がん剤治療を支える体力作り
先ほどもお伝えしたように、体力・筋力が低下して身体が弱ってしまうと、強い治療ができなくなり治療の選択肢が狭くなります。その結果として、治療が上手くいかず、生命予後にも影響が出てしまいます。
副作用と付き合いながら治療を進めていくためには、やはり体力や筋力を維持することが重要で、そのためには治療前あるいは治療中にも運動療法を取り入れる必要があります。
成人のがん患者さんに推奨される運動量は以下になります。
① 中強度の運動
- 時間:150分~300分/週
- 運動例:早足でのウォーキング、平地でのサイクリング、車いすの自走など
② 高強度の運動
- 時間:75分~150分/週
- 運動例:ハイキングなど上り坂歩行、ジョギング・ランニング、速いペースの水泳
運動療法を取り入れるために心掛けたい3つのこと
そうは言ってもなかなか続かないのが運動ですよね・・・!
運動療法を取り入れる際には、こちらのポイントも参考にしてみて下さい。
ポイント1普段の習慣の中に取り入れる
ペットの散歩、ゴミ出し、買い物など普段の生活の中で家から出ることがあると思います。こういった習慣の中に、いつもより遠回りをする、普段のペースより早く歩くなど工夫をして取り組んでみましょう。
ポイント2仲間と一緒に行う
一人では続けられなくてもご家族やご友人など誰かと一緒に行うことでモチベーションの維持につながります。
体調の良いときには仲間と一緒にハイキングに出かけるなど、楽しみながら運動を取り入れられると良いですね。
また、万が一運動中に体調不良を起こしても、サポートしてくれる人がいれば安心です。
ポイント3副作用の出ている時期は運動強度を下げる
抗がん剤の副作用で吐き気がある時や、貧血や血小板低下が起きている時には、頑張り過ぎてしまうことで、かえって身体が辛くなったり、転倒や出血のリスクが高くなったりするので無理はしてはいけません。このような時期は、強度を下げて運動することや、運動の代わりに掃除や洗濯などの生活活動で運動量を維持できると良いでしょう。
がん治療中に運動を取り入れよう!~運動療法で変わる抗がん剤治療~
がんの治療中に運動療法を取り入れることは、体力・筋力の低下を防ぐだけでなく、転倒予防やしびれの軽減、不眠や抑うつの改善など心身ともに良い効果が期待できます。
最近では、抗がん剤の効果自体をアップさせてくれる働きがあるとも言われています!
これまで運動習慣がなかった人が、いきなり強度の高い運動を始めることは難しいと思いますが、日常生活や普段の習慣に工夫するだけでも運動量はアップしていきます。もちろんそれぞれの身体症状に合わせて運動を工夫する必要があるため、今の治療に運動療法をプラスさせたい、運動したいけど何から始めれば良いか分からないという方は、ぜひ当院へ来院の際にご相談ください。
みなさまの治療が上手くいくよう、看護師一同で精一杯応援していきます!


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