文字サイズ

メニュー

×閉じる

当院と連携している全国の医療機関

×閉じる

免疫療法(免疫細胞治療)と標準治療の併用について放射線治療との併用で相乗効果、アブスコパル効果とは

2016年10月12日

瀧澤 憲
がん研有明病院 前婦人科部長
瀬田クリニック東京・新横浜 医師
瀧澤 憲

 がん治療とQOL(Quality Of Life :生活の質)について

がんは、QOL(Quality Of Life :生活の質)を保ちながら治療するのが難しい病気です。外科療法(手術)、放射線治療、化学療法(抗がん剤など薬物を使用)などの標準治療では、いずれも一時的に患者さんの体力、気力を損ない、免疫力も低下することがあります。このような治療に伴う免疫力の低下は、がんの治療にとっては好ましいことではありません。また、副作用や後遺症によってQOLは大抵下がります。

一方、自らが持つ免疫細胞(T-リンパ球)を増やす免疫細胞治療は、副作用の出ることが少なく、むしろQOLが上がる場合も多く、標準治療と組み合わせることで、標準治療の効果を最大限に引き出すことが期待されます。

免疫細胞治療を標準治療と組合せることで、標準治療の効果をより増強させる。

特に標準治療では治癒が困難な進行したがんの場合は、免疫細胞治療を併用することで、標準治療の効果がより増強されると共に、副作用が軽減される可能性があります。進行がんに対して、標準治療を始める時から免疫細胞治療を併用することは、今後大いに期待できる戦略と考えています。

 標準治療の限界と、免疫細胞治療との併用について

まずは標準治療について、私の専門である婦人科がん(子宮頸がん)の治療を例に説明させていただきます。

子宮頸部に限局するⅠ期、膣へ拡がるⅡA期では、手術もしくは放射線で80%以上の治癒が期待できます。子宮周囲組織へ拡がるⅡB期以上の場合は、手術ではなく放射線治療が選ばれることが多いです。手術範囲が広くなると排尿障害が確実に起きますし、膀胱や直腸を損傷する合併症のリスクが高まるなどの理由もあります。最近では、放射線に化学療法を併用するCCRT(同時的化学放射線療法)を行うことが一般的です。

これらの標準的な治療法によって、ⅡB期70%、Ⅲ期60%、Ⅳ期20%の5年生存率が期待できます。

ただし、逆に言えば、Ⅰ期~Ⅳ期の子宮頸がん全体の3分の1の方は最終的にお亡くなりになってしまうということも現実としてあります。これは、一次治療を行った後に治らなかったり再発してしまうケースがあるからです。再発を防ぐために化学療法や放射線治療を行ったとしても、再発リスクの高いケースの一部は、再発を免れません。

再発した後の治療はほとんど標準化されていない、別の言い方をすれば実験的にならざるを得ないというのも問題です。大抵の場合、治療法が限られて、化学療法を反復せざるを得ません。それも、第2、第3、第4と繰り出す頃には、効果はないのに副作用ばかりが増えるということになりかねません。それでも患者さんの多くは、治療法がないと言われることを恐れてしまい、主治医が化学療法の中止を提案しても受け入れられず、場合によっては「がん難民」になってしまうことが少なくありません。

このように標準治療があってもその効果が限定的であったり、標準治療が無い場合には、免疫細胞治療を検討する価値があるでしょう。免疫細胞治療は、副作用の出ることが少なく、標準治療と組み合わせることで、QOLを保ちながら標準治療の効果を最大限に引き出すことが可能になります。特に放射線治療との組み合わせは、次に説明するように相性の良いことが知られています。

 放射線治療と免疫細胞治療の相乗効果・・・アブスコパル効果について

放射線治療は、がん細胞に放射線を当て、細胞のDNAを原子・分子レベルで切断、破壊することでがん細胞を殺そうとする治療です。ところが、放射線を当てた部位から遠く離れた部位にある腫瘍まで小さくなることがあります。このように放射線の当たっていない部位の腫瘍が小さくなる現象は「アブスコパル効果」と呼ばれています。1950年代から報告されていました。

この現象が見られるのは、放射線照射を受けて死んだり弱ったりしたがん細胞を免疫細胞が処理することによって、患者さんの免疫システムががんの特徴を認識し、その特徴を認識した免疫細胞が全身を巡っているうちに、同じ特徴を持ったがん細胞を見つけて攻撃を加えるからだと考えられています。

アブスコパル効果とは、放射線の当たっていない部位の腫瘍が小さくなる現象です。アブスコパル効果とは、放射線の当たっていない部位の腫瘍が小さくなる現象です。

つまり放射線治療により、がんを攻撃する免疫細胞の作用が高まる可能性があるのです。この現象を意図的に起こすことができたならば、全身に微小転移が散らばっているかもしれない進行がんの患者さんにも有利な効果が期待できます。ただし、がんの標準治療は免疫システムに大なり小なりダメージを与えるため、思うようにいかないのが現実です。放射線治療を行っている人に、免疫を強める治療も並行して行えるなら、上記のアブスコパル効果が誘導され、治療成績はもっと改善するかもしれません。

 免疫細胞治療をお勧めするケース

標準治療を終えた患者さんに免疫細胞治療をお勧めするかどうかは、再発のリスクがどの程度あるかによって変わります。再発リスクが25%以上の場合は、免疫細胞治療の有用性を期待できると思います。10%未満であれば、お勧めしないことが普通です。10~25%の場合は、患者さんが希望されるなら、有意義なこともあるでしょう。

また一度再発を経験し、その治療後に次の再々発を予防して元気に延命できるよう希望される場合も、考え方は同じです。

放射線治療を受ける患者さんの場合も、先ほど述べたとおり、その有効性を高めると期待できるため、お勧めします。

具体的には以下のような場合に、お勧めしています。

  1. ①再発リスクが25%以上あるが、そのリスクを下げる治療手段が現在ない場合
  2. ②再発してしまい、再々発のリスクを低くしたい
  3. ③色々な治療を試し、他に治療方法がないと言われた場合
  4. ④特に放射線治療と併用して効果を高めたい

瀬田クリニックグループでは、相談にいらした患者さん全員に免疫細胞治療を行うわけではありません。瀬田クリニックグループでは、長年、がん治療に携わった経験を持つ医師が診療を担当しています。したがって、標準的ながん治療で十分と思われる患者さんには、そのようにご説明します。

免疫細胞治療を行う場合も、主治医との連携を大切にしています。私のような婦人科がんの専門医、あるいは乳がんの専門医、肺がんの専門医、消化器がんの専門医というように、標準治療も熟知しているがんの専門家が免疫細胞治療も担当しており、標準治療の効果や副作用・後遺症を十分に理解した上で、主治医との連携を図ることが重要と考えています。

このページの先頭へ

 
このページの先頭へ
Facebookでも新情報を発信しています
×閉じる