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症例紹介-肺がんに対する免疫療法

Ⅳ期の肺癌に対し、分子標的薬と樹状細胞ワクチン療法、アルファ・ベータT細胞療法を併用することにより、長期間、病気の進行を抑えられた一例

患者さん:
60歳 女性
治療法:
樹状細胞ワクチン療法, アルファ・ベータT細胞療法

治療までの経緯

2011年1月にリンパ節転移・多発肺内転移のある右肺の腺癌(臨床進行期:Stage Ⅳ)と診断され、同年3月初旬より化学療法(シスプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ)による治療を4週間間隔にて開始しました。当院には同年2月末に受診、過去に採取した生検組織でがんの特徴を調べる免疫組織化学染色検査※を行ったところ、この患者さんのがん細胞には免疫細胞の攻撃の目印が出ている状態だとわかった為、自己がん細胞感作樹状細胞ワクチン療法が最良の治療法と判断されました。

※免疫組織化学染色検査

肺がんに対する免疫療法case_16_1がん細胞は免疫細胞の攻撃から逃れるために、がんの目印を隠してしまう場合があります。
そこで、検査によって免疫細胞が攻撃の目印とする分子(MHCクラスⅠ)ががん組織上にどの程度発現しているかを調べ、患者さんのがん細胞の状態に適した治療法を選択する為の検査です。

いろいろな種類の免疫細胞治療がありますが、がん細胞の特徴を捉え、最も効果的と考えられる治療法を選択することが重要です。

case_16_2この患者さんの場合は、約90%のがん細胞にMHCクラスⅠの発現が見られ、染色強度は中等度でした。

治療内容と経過

2011年3月初めに自己がん組織を使う為、右鎖骨上の転移リンパ節を切除し、そのがん組織から得た抗原を独自の最新技術(セル・ローディング・システム※)を使って樹状細胞に取り込ませ、5月末より樹状細胞ワクチン療法を2週間間隔で行いました。体内のT細胞を増加させる為、アルファ・ベータT細胞療法は、4月末に1回先行させ、その後は4週間間隔で治療を続けました。化学療法を6月始めまで4回行い、免疫細胞治療を3回行った後、6月のCTでは原発巣および転移巣のがんが縮小していると判断されました。(Fig.1〜2)その時点でシスプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブの化学療法は終了し、7月より維持療法としてベバシズマブのみの治療を3週間間隔で継続しました。樹状細胞ワクチン療法は12月までに12回行い、アルファ・ベータT細胞療法は2012年7月現在まで月に1回継続しています。2012年1月末、2012年5月末のCTでも腫瘍は増悪していませんでした。肺の原発巣においても腫瘍の増大は見られておりません。肺がんに対する免疫療法case16

考察

抗がん剤や分子標的薬を維持療法として長期に使用する場合、副作用のため継続できない場合があります。この患者さんはベバシズマブを使用していますが、ほとんど副作用がなく1年間という比較的長期の安定を維持しています。ベバシズマブには腫瘍に対する免疫応答が有利に働くことが報告されていて、ベバシズマブとがん免疫療法の併用も期待されています。この患者さんについても引き続き、ベバシズマブ+アルファ・ベータT細胞療法で経過を観察していく予定です。

治療の経過

2011年3月初め
自己がん組織を使う為、右鎖骨上の転移リンパ節を切除。そのがん組織から得た抗原を独自の最新技術(セル・ローディング・システム※)を使って樹状細胞に取り込ませる
2011年4月末
体内のT細胞を増加させる為、先行してアルファ・ベータT細胞療法を行う(4週間間隔で継続)
2011年5月末
樹状細胞ワクチン療法を2週間間隔で行う
2011年6月
CT検査(化学療法4回、免疫細胞療法3回治療済)でがんは縮小しているため、シスプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブの化学療法は終了
2011年7月
ベバシズマブのみで維持療法を開始(3週間間隔で継続)
2011年12月
樹状細胞ワクチン療法を12回目で終了する
2012年1月末
CT検査 がんは安定している
2012年5月末
CT検査 がんは安定している
2012年7月現在
アルファ・ベータT細胞療法を月1回継続治療中

肺がんとは

扁平上皮がん、腺がんなどの種類があり、この2つで肺がん全体の約8割を占める。扁平上皮がんは喫煙との関連が深く咳、血痰等がおもな自覚症状。腺がんは非喫煙者もかかり、早期には自覚症状がないのが特徴。

 
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