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卵巣がんの治療解説と症例紹介

卵巣がんの治療に関する解説や、瀬田クリニックグループでがん免疫療法(免疫細胞治療)を受けられた卵巣がんの患者さんを紹介します。症例は治療前後のCT 画像や腫瘍マーカーの記録など客観的データに基づき記載しています。

 婦人科がん専門医の解説

がん研有明病院 前婦人科部長 瀬田クリニック東京非常勤医師 瀧澤 憲
がん研有明病院 前婦人科部長
瀬田クリニック東京、新横浜 医師
瀧澤 憲 経歴

卵巣がんは、がんが大きくなるまで自覚症状に気づかず、進行がんとなって初めて見つかるケースが多いがんです。治療法は標準治療を可及的に上手に行うのが原則です。卵巣がんの多く(約3/4の症例)は比較的抗がん剤が良く効くこともあり、早期であれば標準治療のみで完治が期待できます。

ただし、再発のリスクが高い(あるいは既に再発している)場合や、発見されたときに既に進行しているがんの場合は、標準治療だけでは十分な成果が得られない可能性があります。そこで、期待されるのが免疫細胞治療です。

免疫細胞治療は、自己の免疫細胞を活用する治療のため標準治療の効果を損ねることなく併用による良い効果が期待できます。また、手術で取り残したり術前の検査で発見できず再発の原因となってしまう微小ながんに対して、全身的に大きな副作用を伴わずに作用するため、再発予防には特に適していると考えられます。

瀬田クリニックグループに来院された卵巣がんの患者さんの治療成績は以下の通りです。

当院の免疫細胞治療の治療効果【対象:卵巣がん】

(註)
  • 有効性評価は、RECISTガイドライン(国際的に使用される治療効果判定のためのガイドライン)に準じ、画像評価による腫瘍縮小効果をもとに行い、以下の基準を満たす画像での病変の比較が可能であった1,198例を対象に治療効果調査を実施しました。
    1. (1)治療前の画像:治療開始の60日前から2回目投与開始前までに撮影したもの
    2. (2)治療後の画像:5回目投与以降で6回目投与後30日以内に撮影したもの
    3. (3)上記の画像が保管されている、あるいは保管がなくとも明確な記録、または主治医からの報告書があるもの
  • 1999年4月から2009年3月に、瀬田クリニックグループまたは連携医療機関に来院し、免疫細胞治療を6回(1クール)以上受けた5,460例の中で、原発臓器が肺、胃、大腸、肝、膵、乳、子宮、卵巣の症例について示しています。
  • 上記治療効果調査の対象となった1,198名の患者さんのうち、(1)完全奏効(17名)、(2)部分奏効(143名)、(3)長期安定(145名)と判定された合計305名の症例を有効(有効率25.5%)と判断しています。
  • 百分率は小数点以下第2位を四捨五入して算出しています。四捨五入の関係で、百分率の合計が100%にならない場合があります。
  • なお、治療成績データは論文『Egawa K. Immuno-cell therapy of cancer in Japan. Anticancer Res. 2004 24(5C):3321-6.』を参照。その後の症例の追加に伴い更新しています。
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症例①
女性53歳 女性
IIIc期の卵巣の明細胞がんに対して、化学療法後、樹状細胞ワクチンを施行。その後、8年間、化学療法を実施せずに悪化無く経過している症例

治療までの経緯

卵巣がんに対する免疫療法

2007年初めより、腹部膨満あり、精査したところ、卵巣がんと診断されました。2007年3月に手術で子宮、付属器切除、骨盤リンパ節郭清を行いました。リンパ節転移あり、また、術後、傍大動脈リンパ節の転移が増大し、水腎症をきたし、初回手術の約1ヶ月後に再手術により傍大動脈リンパ節の一部の切除が行われました。再手術前に免疫細胞治療についての相談のため、当院に受診されました。

治療内容と経過

卵巣がんに対する免疫療法

再手術で切除するがん組織の一部を樹状細胞ワクチン療法を実施する際の、樹状細胞の抗原(がん特有の目印)として使用することとしました。2007年4月に再手術をし、その後、化学療法(パクリタキセル+カルボプラチン)を6コース施行し、残存腫瘍は部分寛解、さらには2007年11月から化学療法(イリノテカン+ネダプラチン)を行いましたが、肺転移が出現、2009年2月には化学療法は終了となりました。

その間にがん細胞を免疫組織化学染色検査によりMHCクラス1の発現を検査、発現があり、樹状細胞ワクチンの適応であることを確認しました。2009年6月から2009年8月まで樹状細胞ワクチンを施行しました。2009年6月のCTに比較して2009年9月のCTでは、肺転移は消失、また、傍大動脈リンパ節転移の大きさは安定でした。また、自己のがん細胞の免疫反応を調べる皮内反応(DTH)では樹状細胞ワクチン後には陽性でした。自己がん細胞に対する強い免疫反応が誘導されたと考えられました。
それ以降は化学療法も行うことなく、経過観察、2017年8月まで再発の所見無く、まったくお元気で経過しています。

考察

IIIc期で初回手術後、まもなく再手術した症例です。
当初、残存腫瘍に対して化学療法をセカンドラインまで施行するも病気は進行、その後、樹状細胞ワクチン療法を実施し、8年間進行無く経過しています。明細胞がんは卵巣癌の中でも化学療法が効きにくく、早い段階での免疫細胞療法への移行がよい結果を出せる場合があると思われます。

卵巣がんに対する免疫療法

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症例②
女性38歳 女性
再発した卵巣がんに対し、放射線療法に引き続いて免疫細胞治療を行い、寛解(がんが画像上見られなくなった)にいたった一例

治療までの経緯

平成12年3月に右側の卵巣に腫瘍が見つかり、手術で腫瘍とともに右側の卵巣・卵首を切除。境界悪例(良性腫瘍とがんの中間)だったため経過観察を行っていました。平成13年12月に再発が見つかったため、抗がん剤治療後に子宮と周辺臓器を手術で全摘出。ステージⅢcの漿液性乳頭状腺がんと診断されました。
その後化学療法を行い、一時は腫瘍マーカー(CA125)の値も正常の範囲になりましたが、再発が見つかったため、放射線療法を60グレイ行いました。しかし腫瘍マーカーの値は高値が続き、食事量は健常な人の3割程度にとどまり、全身の健康状態も思わしくありませんでした。同年6月に瀬田クリニックグループを受診。

治療内容と経過

アルファ・ベータT細胞療法を2週間に1度の頻度で開始。6回終了時に画像検査にて再発部が小さくなっていることがわかりました。また、腫瘍マーカーも72→45.2→24.6と減少をたどりました。12回行った後には、食事量が健常な人の5割にまで回復し、全身状態も改善。
その後2~4週間に1回の頻度で活性化自己リンパ球療法を続け、平成16年4月のMRI検査では転移巣が見つからず、CR(完全寛解)と判断しました。

卵巣がんに対する免疫療法ovarian_cancer

考察

抗がん剤が効かなくなった卵巣がんに対し、放射線療法に続けて免疫細胞治療を行ったところ(化学療法との併用はなし)、完全寛解が得られ、腫瘍マーカーの上昇も抑えることができました。
放射線療法が功を奏したという考え方もありますが、免疫細胞治療の開始後に腫瘍マーカーの上昇が抑えられ、照射野外の病巣も制御できていることから、免疫細胞治療も有効に作用したのではないかと考えられます。また、放射線療法後に患者さんの食欲や全身状態がよくなり、生活の質(QOL)を高めながら治療が続けられたのは特筆に値すると考えられます。

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