臨床症例報告No.23 (PDF版はこちら CD3-LAK療法にホリナート・テガフール・ウラシル療法を併用することによる大腸癌の肺、肝転移の長期寛解例 瀬田クリニックグループ/かとう緑地公園クリニック 医師  明山 燿久

  • 種類:大腸

Introduction

大腸癌は消化管の悪性腫瘍の中では、胃癌についで頻度が高く、しかも年々増加傾向にある。大腸癌の予後を最も左右するのは肝転移で、有効な治療が施されなければ予後は2年以内とされている。

Patient and present illness

80歳(2006/6/7)、男性。 既往歴:60歳時に緑内障、70歳時に膵炎。 初診時(1/23)身体所見:眼瞼がやや浮腫調。表在リンパ節腫脹なし。肝脾腫なし。右側下顎前歯部歯肉に潰瘍と生検による欠損と同部位の抜歯後の状態を認めた。呼吸音・心音異常なし。四肢浮腫なし。病歴:2005年12月上旬頃より右側下顎前歯部歯肉に小潰瘍出現し、同部の軽度自発痛を伴うため近医の歯科を受診。右下3,2 部唇側歯肉部に径2cm、周囲硬結(-)の潰瘍を認め、生検の結果はchronic necrotizing inflammationと診断されていたため消炎鎮痛剤および抗生剤の投与を受けていた。しかし、その後も次第に潰瘍部のサイズ増大を認め自発痛も増強してきたため、再度同部位の生検を施行。最終的にびまん性大細胞B細胞型悪性リンパ腫(stage1E)と診断された。 

Case

70歳男性で、2004年9月のドッグで便潜血陽性を認め、精査の結果、回盲部癌と診断された。
2004年11月11日、右半結腸切除、SS,N4,P0H0M(+)、StageIV、SMA周囲および旁大動脈リンパ節転移(+)、両肺多発転移を認めた(Figure1)。
2004年12月15日よりCD3-LAK療法を2週間に1回のスケジュールで開始。
2005年3月15日、CEA上昇し、CTでは肺の転移巣は不変であったが、肝にも転移を認めた(Figure2)。そのため、テガフール・ウラシル(UFTR)とホリナート(ユーゼルR)を6週間投薬、2週間休薬で併用開始した。
2005年5月10日、CEA下降し、CTでは肺・肝の転移病巣の部分寛解を観察した。 
2005年7月5日、CEAは正常範囲まで下降し、CTで肺病巣は完全寛解、肝病巣はφ2cmからφ3mmに縮小した(Figure3)。
2005年9月、CD3-LAK療法の間隔を、4週間に1回で継続した。
2006年7月24日現在まで、ホリナート・テガフール・ウラシル療法にCD3-LAK療法を併用し、寛解を維持している(Figure4)。 

Discussion

異時性の肝転移に対しては外科的な切除などが有効と考えられているが、本症例では肺転移も認めたため、肝転移部の局所治療はされなかった。大腸癌に対する化学療法はこれまで5FUにchemical modulator であるLeucovorinを加えたRegimenが標準的治療法であったが、多発肺、肝転移症例に対
する著効例は稀である。本症例は、CD3-LAK 療法1クールでは無効かと思われたが、ホリナート・テガフール・ウラシル療法を併用することにより、著効が得られ1年以上維持されている。

report023_1.jpg

  • がん免疫細胞治療について
    がん免疫細胞治療とは、身体のなかでがん細胞などの異物と闘ってくれる免疫細胞を患者さんの血液から取り出し、人工的に数を増やしたり、効率的にがんを攻撃するよう教育してから再び体内へ戻すことで、免疫の力でがんを攻撃する治療法です。この治療は患者さんがもともと体内に有している免疫細胞を培養・加工してがんを攻撃する点から、他の治療のような大きな副作用はなく、また抗がん剤や手術、放射線治療など他の治療と組み合わせて行うこともできます。治療の種類にもよりますが基本的には2週間おきに採血と点滴を繰り返す治療となります。当院では、治療に用いる細胞の違いや培養方法の違いにより、樹状細胞ワクチン療法、アルファ・ベータT細胞療法、ガンマ・デルタT細胞療法、NK細胞療法の四つの治療法を提供しています。
  • リスク・副作用について
    免疫細胞治療は患者さん自身の免疫細胞を治療に用いるので、軽い発熱、発疹等が見られる場合がありますが、それ以外は重篤な副作用は見られず、身体への負担がほとんどありません。副作用が少ないため、生活の質、いわゆるQOL(=Quality of Life)を維持しながら治療を続けることも可能です。
  • 費用について
    治療にかかる費用は、1クール6回~12回投与)実施の場合、治療法にもよりますが¥1,620,000~¥2,691,360が目安となります(初診料、検査費用等は除く)。