臨床症例報告No.40 (PDF版はこちら ホルモン療法とαβT細胞療法併用により、不変(SD)を維持している子宮体癌の症例 瀬田クリニックグループ / 瀬田クリニック大阪  臨床研究・治験センター長 神垣 隆

  • 種類:子宮

INTRODUCTION

子宮体癌は、50-60歳代で発症することが多く、その罹患数は年間約13000人を超え、増加傾向にある。早期(StageⅠ-Ⅱ)の場合、5年生存率は80%以上と良好であるが、進行症例の場合は25%と予後不良であり、再発症例の生存期間中央値(MST)は12ヶ月である。
今回、子宮体癌の患者に対し、ホルモン療法とアルファベータ(αβ)T細胞療法を併用し、2年半以上状態を維持している症例を経験したので報告する。

CASE

【70歳代、女性、子宮体癌、腹膜播種、PS=0】
特記すべき既往歴はなし。
2008年7月、不正性器出血のため婦人科受診。検査の結果、子宮体癌と診断され、同年8月に子宮全摘出術および両側付属器切除術を施行し、経過観察していた。

2013年1月、CTにて腹膜播種の疑いを認め、同年3月、腹腔鏡下腹腔内腫瘤摘出術を施行した。検査の結果、子宮体癌の腹膜播種(Gr1 ER(+) PgR(+) CDX-2(-))と診断され、同年4月よりmedroxyprogesteroneによるホルモン療法を開始した。

2014年6月、免疫細胞療法検討のため当院を受診された。FCM、HLA、免疫染色検査を実施し、8月よりαβT細胞療法を開始した。6回の治療後、治療間隔を延ばし、現在も3ヶ月毎に継続している。

RESULT

腹膜播種巣(Figure 1)は、徐々に増大傾向を認めるものの、臨床上のPDは認められず、経過は穏やかである。腫瘍マーカーは基準値以下を維持しており、体調変化もなく、PSも0である。

活性化リンパ球療法開始から2年半以上経過したが、現在もホルモン療法とαβT細胞療法を継続している。

Figure1:治療スケジュールとCTの推移

DISCUSSION

子宮体癌のうち、再発症例の生存期間中央値(MST)は約12ヶ月と報告されている。また、本例のように組織型でER/PgRが陽性でgrade 1の再発例の場合にホルモン療法も行われるが、その奏功率は37%程度であり、予後は不良である。

本例では、紹介元の主治医から手術検体を提供してもらい、免疫組織染色を施行してMHC class I陽性であることを確認した。樹状細胞ワクチンの適応と判断されたが、がん特異抗原の精査にて適切な合成ペプチドが使用できなかったために活性化リンパ球療法の一つであるαβT細胞療法をホルモン療法と併用することになった。その結果、約2年半にわたり腹膜播種巣の増加や増大は認められず、極めて長期の安定が得られており免疫細胞治療の効果が考えられる。現在も治療継続中であるが、特記すべき有害事象もなく経過は良好である。

REFERENCES

1. Thigpen JT, Brady MF, Alvarez RD, Adelson MD, Homesley HD, Manetta A, et al: Oral medroxyprogesterone acetate in the treatment of advanced or recurrent endometrial carcinoma: A dose-response study by the Gynecologic Oncology Group. J Clin Oncol 17:1736-1744, 1999