臨床症例報告No.38 (PDF版はこちら エルロチニブ耐性となった後、免疫細胞治療(アルファ・ベータT細胞療法)併用により安定を維持している4期、肺がん症例 瀬田クリニックグループ / 瀬田クリニック東京  後藤 重則

  • 種類:肺

INTRODUCTION

非小細胞性肺がんに対してEpidermal Growth Factor Receptor Tyrosine Kinase Inhibitor (EGFR-TKI)の有効性が報告され、特にEGFR遺伝子変異陽性例ではFirst Lineとしても使用されている。遺伝子変異陽性例では奏効率も60%以上という良好な結果も報告されているが、奏効期間はかならずしも長いとはいえない。奏効例においても耐性が出現して腫瘍の再燃が生じた後は、短期間で不幸な転帰を取る場合も少なくない。EGFR-TKIは副作用として骨髄抑制は乏しく、免疫療法との併用が行いやすい。また、EGFR抑制による抗腫瘍免疫応答への作用も報告されており、がん免疫療法との相乗効果が期待される(1,2)。

CASE

症例は39歳、女性、過去に喫煙歴あり、既往歴は特記すべきことなし。2011年1月、咳症状あり、3月より腰痛が出現し、4月より下肢のびれ、さらに下半身麻痺が出現、歩行不能となった。精査にて右肺がん、下位胸椎転移による病的骨折、cT4N0M1b, Stage IVと診断された。組織型は腺癌、EGFR遺伝子変異あり、エルロチニブ150mg/日による治療を6月より開始した。4ヵ月後の2011年10月のCTでは部分寛解(PR)を観察した(Fig.1,2)。その後、エルロチニブ併用での免疫細胞治療の効果を期待して、瀬田クリニック東京を受診となった。受診時の状態は摂食は良好、エルロチニブの副作用としての皮疹を観察した。病的骨折、麻痺のため立位をとることは不能であった。エルロチニブ併用の免疫細胞治療としてアルファ・ベータT細胞療法を選択、11月より開始した。開始1ヶ月後の2011年12月のCTでは10月に比較して進行(PD)が観察され、エルロチニブに対して耐性が出現していると考えられた(Fig.3)。エルロチニブを中止、Second Lineとしての化学療法の開始を考えたが、免疫細胞治療の併用による効果の出現を期待して、そのままエルロチニブと免疫細胞治療の併用治療を継続した。その後、2012年1月、2月のCTでは安定(SD)、さらに5月のCTでも安定(SD)を観察(Fig.4)、2012年6月現在まで著変なく経過している。なお、皮疹も改善、エルロチニブによるその他の副作用も乏しく、下半身麻痺も徐々に回復、現在、リハビリ中で杖歩行が容易な状況となっている。

DISCUSSION

本症例ではエルロチニブが奏効するも、開始6ヵ月後にはPDを観察し、奏効期間は短かった。PDを観察した時点は免疫細胞治療を開始して、6週間が経過していた。併用治療も無効と考え、Second Lineの化学療法の開始の選択も検討したが、免疫細胞治療の効果は遅延して発現すること(Delayed Response)を考慮して、そのままの治療を継続した。その結果、腫瘍の進行は観察されず、SDが維持されている。進行がんに対する免疫細胞治療は化学療法などの標準治療と併用することでの上乗せ効果が報告されている(3)。近年、骨髄抑制の乏しい分子標的薬も多数、登場してきており、今後、分子標的薬との併用による有効性が期待される。

REFERENCES

1. Sharafinski ME, Ferris RL, Ferrone S, Grandis JR.: Epidermal growth factor receptor targeted therapy of squamous cell carcinoma of the head and neck. Head Neck. 32(10):1412-1421., 2010
2. Garrido G, Rabasa A, Sánchez B, et al.: Induction of immunogenic apoptosis by blockade of epidermal growth factor receptor activation with a specific antibody. J Immunol., 187: 4954-4966, 2011
3. Iwai K, Soejima K, Kudoh S, et al.: Extended survival observed in adoptive activated T lymphocyte immunotherapy for advanced lung cancer: results of a multicenter historical cohort study. Cancer Immunol Immunother.,DOI: 10.1007/s00262-012-1226-4,Mar 16,2012

  • がん免疫細胞治療について
    がん免疫細胞治療とは、身体のなかでがん細胞などの異物と闘ってくれる免疫細胞を患者さんの血液から取り出し、人工的に数を増やしたり、効率的にがんを攻撃するよう教育してから再び体内へ戻すことで、免疫の力でがんを攻撃する治療法です。この治療は患者さんがもともと体内に有している免疫細胞を培養・加工してがんを攻撃する点から、他の治療のような大きな副作用はなく、また抗がん剤や手術、放射線治療など他の治療と組み合わせて行うこともできます。治療の種類にもよりますが基本的には2週間おきに採血と点滴を繰り返す治療となります。当院では、治療に用いる細胞の違いや培養方法の違いにより、樹状細胞ワクチン療法、アルファ・ベータT細胞療法、ガンマ・デルタT細胞療法、NK細胞療法の四つの治療法を提供しています。
  • リスク・副作用について
    免疫細胞治療は患者さん自身の免疫細胞を治療に用いるので、軽い発熱、発疹等が見られる場合がありますが、それ以外は重篤な副作用は見られず、身体への負担がほとんどありません。副作用が少ないため、生活の質、いわゆるQOL(=Quality of Life)を維持しながら治療を続けることも可能です。
  • 費用について
    治療にかかる費用は、1クール6回~12回投与)実施の場合、治療法にもよりますが¥1,620,000~¥2,691,360が目安となります(初診料、検査費用等は除く)。