臨床症例報告No.20 (PDF版はこちら 免疫細胞療法(CD3-LAK療法)単独治療により寛解をみた4期、細気管支肺胞型肺腺癌症例 瀬田クリニックグループ/ 瀬田クリニック 院長  後藤 重則

  • 種類:肺

Introduction

肺がんは組織学的に扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、小細胞癌に分類され、腺癌の頻度がもっとも多い。腺癌はさらに、腺房型(acinar)、乳頭型(papillary type)、細気管支肺胞型(または、肺胞上皮細胞型) (bronchioloalveolar type (or alveolar cell type))、粘液産生充実型腺癌(solid adenocarcinonma)、混合型腺癌(adenocarcinoma with mixed subtypes)、 とその他の特殊型(Variants) に分けられる 1)。細気管支肺胞型に関しては、臨床的に胸部X 線写真で肺炎様陰影を呈し、喀痰が多量に喀出されるという点で、独立した疾患概念としてとらえる立場があり、新WHO分類では腺癌の亜型として分類されている。今回、細気管支肺胞型の肺腺癌に対してCD3-LAK 療法単独治療で一部の病変の寛解を観察し、長期に進行を抑えた症例を報告する。

Case

症例は77歳、男性、既往歴として30代に結核、60代より高血圧を指摘されていた。
2001年11月、咳、痰症状あり、感冒として治療を受けたが軽快せず、同年、12月1日に某大学病院を受診、胸部X線写真上、肺炎を疑われた。抗生剤などで治療するもX線写真上、軽快せず、入院精査となった。喀痰細胞診にてクラスV、気管支鏡下での肺生検にてbronchioloalveolar cell adenocarcinomaが同定された。胸部CTにて右上葉、下葉、左下葉に腫瘍陰影が観察され(Figure1)、4期肺がん、手術適応なしと診断された。担当医よりBest Supportive Careの上、免疫細胞療法と外来化学療法を勧められ、2002年2月6日に瀬田クリニックを受診となった。受診時のPSは1で、症状は軽度の咳、痰のみで全身状態は良好であった。血液検査では血算、生化学検査では特に異常なく、腫瘍マーカーはCA19-9が37U/mlと軽度、上昇していた。5-FUによる化学療法も勧められていたが、高齢であり、本人の希望により活性化自己リンパ球療法(CD3-LAK療法)単独での治療を開始し、その後の経過によっては化学療法を併用することになった。
2002年2月12日の胸部X線写真では2001年12月に比較して明らかな変化はなかった。2002年2月21日より2週間間隔で活性化自己リンパ球療法を施行、4回の治療が行われた後の4月12日の胸部CTの結果は、右上葉の陰影の消失が観察されたものの、右下葉、左下葉の陰影はStableであった(Figure2)。活性化自己リンパ球療法が有効と考え、その後も化学療法は施行せず、単独での治療を継続する方針となった。5月17日まで7回の治療を2週間間隔で施行、その後は2~3週間間隔で継続した。7月9日の胸部CTでは消失していた右上葉の腫瘍の再燃が疑われたが、右下葉、左下葉はSDと判断された。その後、2002年9月13日まで、13回の活性化自己リンパ球療法を施行したが、胸部X線写真上、陰影の軽度増強が観察され、また、CA19-9も72U/mlと上昇傾向があった。化学療法を併用する方針とし、10月1日、8日にGEM,CBDCAによる化学療法を2回、施行した。
10月22日のCTでは7月9日に比較して変化はみられなかった(Figure3)。その後、活性化自己リンパ球療法単独での治療を2週間間隔で継続、2003年4月23日までに23回の治療を行った。画像上、腫瘍の進行が考えられ、また、CA19-9の上昇も明らかになったことより2003年5月8日より、ゲフィチニブの併用を開始した。しかし、その後も腫瘍はProgressiveであり、6月23日に行った25回目の治療をもって免疫細胞療法は終了とした。

Discussion

細気管支肺胞癌は、細胞密度が小さく腫瘍内に含気を保っているため、精密CT画像では、淡いすりガラス状の陰影 Ground glass opacity (GGO)を呈する。これは、間質性肺炎の時にもよく見られる陰影であるが、臨床経過から鑑別は困難ではない。本症例は抗生剤に抵抗性の両側、多葉におよぶ陰影を観察し、最終的には肺生検により診断された。手術適応のない肺がんに対しては、化学療法を中心として治療が施されるが、本性例は本人の希望によりQOLを損なわない治療として、免疫細胞療法(CD3-LAK 療法)が選択された。治療により、部分的奏効を認めTTPは4ヶ月近くに至った。また、2002年2月に治療開始より、1年2ヶ月間、臨床的に病勢のコントロールが可能であった。現在、高齢者に伴った進行肺がんに対して、酒石酸ビノレルビン単剤による治療が主体とされ、この場合、MSTはおよそ9ヶ月である 2)。このことからCD3-LAK療法はQOLを損なうことなく高齢者に使用でき、予後延長に寄与できるものと考えられた。

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References

1. Travis WD, Colby TV, Corrin B, Shimosato Y, Brambilla E. Histological typing of lung and pleural tumours, 3rd ed. World Health Organization International Histological Classification of Tumours. Berlin: Springer, 1999
2. Gridelli C, Perrone F, Gallo C. Chemotherapy for elderly patients with advanced non-small-cell lung cancer: the Multicenter Italian Lung Cancer in the Elderly Study (MILES) phase III randomized trial. J Natl Cancer Inst. Mar 5; 95(5):362-372. 2003
  • がん免疫細胞治療について
    がん免疫細胞治療とは、身体のなかでがん細胞などの異物と闘ってくれる免疫細胞を患者さんの血液から取り出し、人工的に数を増やしたり、効率的にがんを攻撃するよう教育してから再び体内へ戻すことで、免疫の力でがんを攻撃する治療法です。この治療は患者さんがもともと体内に有している免疫細胞を培養・加工してがんを攻撃する点から、他の治療のような大きな副作用はなく、また抗がん剤や手術、放射線治療など他の治療と組み合わせて行うこともできます。治療の種類にもよりますが基本的には2週間おきに採血と点滴を繰り返す治療となります。当院では、治療に用いる細胞の違いや培養方法の違いにより、樹状細胞ワクチン療法、アルファ・ベータT細胞療法、ガンマ・デルタT細胞療法、NK細胞療法の四つの治療法を提供しています。
  • リスク・副作用について
    免疫細胞治療は患者さん自身の免疫細胞を治療に用いるので、軽い発熱、発疹等が見られる場合がありますが、それ以外は重篤な副作用は見られず、身体への負担がほとんどありません。副作用が少ないため、生活の質、いわゆるQOL(=Quality of Life)を維持しながら治療を続けることも可能です。
  • 費用について
    治療にかかる費用は、1クール6回~12回投与)実施の場合、治療法にもよりますが¥1,620,000~¥2,691,360が目安となります(初診料、検査費用等は除く)。