臨床症例報告No.18 (PDF版はこちら ゲムシタビン、少線量放射線に併用した活性化自己リンパ球療法(CD3-LAK法)が有効であった切除不能膵がんの1例 瀬田クリニックグループ/かとう緑地公園クリニック 院長  加藤 昭

  • 種類:すい臓

Introduction

活性化自己リンパ球療法は、毒性の乏しいがん治療法という意義のある反面、単独治療として行われた場合、抗腫瘍効果は化学療法などに比較して弱く、奏効率については10 ~ 20% 程度とする報告が多い 1)。したがって、治療効果を高めるための臨床的な工夫、試みが重要である。腫瘍細胞は化学療法剤あるいは放射線照射で修飾することで、lymphokine-activated killer (LAK) 細胞に対する感受性が増強されることが報告されている 2-4)。なお、釜洞によれば、かつての免疫療法の経験において、通常の1/4 ないし1/5 の線量でも、放射線照射を先行させておけば顕著な効果を見る場合が多いことが観察されている 5)。今回、単独では抗腫瘍効果の乏しいと考えられる線量の放射線療法を併用して活性化自己リンパ球療法を行い、興味深い結果を得た症例を経験したので、報告する。

Case

57才男性、膵がんの診断により、2001年7月手術となったが、開腹のみに終った。臨床進行度はStageⅣaで、組織型はadenocarcinomaであった。
術後、5-FUによる化学療法および放射線治療(50Gy)が施行され、引き続きgemcitabine(GEM()1,000mg/m2、triweekly、4週目は休薬)による治療が開始され、2002年10月の腹部CTではやや縮小を観察した。2003年4月以降は、副作用のため1,500mg/body隔週投与にて治療を継続した。しかし、正常範囲内に保たれていたCA19-9が、7月3日には42U/mlと上昇、その後も徐々に上昇を続けた。患者は免疫細胞療法を希望し2004年1月16日に当院を初診来院となった。
初診時、performance status(PS)は1で、CA19-9は302U/mlと高値を示していた。これまで行われていたGEMに活性化自己リンパ球療法(CD3-LAK法)を併用して治療する方針とした。2004年1月29日より、隔週での併用治療、2回後の2月18日のCA19-9は166U/mlと約45%の低下を観察したが、さらに2回の併用治療後の測定値は181U/mlと反跳に転じ、化学療法(GEM)と免疫細胞療法(LAK)併用による効果の限界を示すように思われた(Fig1)。
患者はすでに放射線療法を受けているが、総線量は50Gyにとどまっており、限界耐容線量を70Gyとすると、さらに20Gyの照射が可能と判断し、LAKを行う週の月、火、水、木の4日間に連日0.5Gyを照射して、木曜日の照射を終了したのちLAKを受ける治療スケジュールを立案し、香川県立中央病院内科ならびに放射線科の同意のもと、Fig2に示すように、2週間周期のchemoradioimmunotherapy(CRIT)が2004年3月22日からの照射開始とともに開始され継続された。
上昇傾向にあったCA19-9は第1回目のCRITの1週間後の4月1日には、181U/mlから124U/mlと低下を示した。その後、さらにCRIT治療は6月11日まで5回繰返され、その間、CA19-9は緩徐ながら減少を続けた。
患者はサリドマイドなどの治療を求めて転院を希望し、CRITは6回をもって2004年6月11日で終了となった。免疫細胞療法開始後約6ヶ月間、下痢も治まり、良好なQOLで経過した。その後は転院先病院にて加療、2005年9月29日時点で一般状態良好であることが確認されている。

Discussion

GEM単独治療に抵抗性であった本症例は、腫瘍マーカーの推移からLAK療法、さらには少線量の放射線療法を併用することで良好な経過が得られたと考えられる。本症例では0.5Gy、4日間、つまり2Gy/wk、隔週という少線量の照射を行った。膵がんについては放射線療法の有効性がかならずしも高くはないこと、既に本例では過去に50Gyの照射が行われた上での再燃例であることから、このような少線量の照射が単独で有効であるとは考えにくい。
これまでin vitroでの検討において、5Gyの放射線照射によってLAK細胞に対する感受性が高まり、アポトーシスが増強されたことがYamamotoらやNakagawaらにより報告されている2、3)。また、Dybalらのマウスの治療実験での報告では、腎細胞がんを腎皮膜下に移植したマウスの腎腫瘍局所に3Gyという少線量の放射線照射を行い、IL-2あるいはLAK療法を併用することで、腎腫瘍の縮小および肺転移の減少が相乗的に生じることが観察されている4)。がん細胞が放射線照射によってLAK細胞に対する感受性が高まったこととともに、腫瘍局所での免疫抑制機構が解除されたことによる結果とも考えられている6)。
 今回の症例のように、一度放射線治療を受けた患者でも、耐容限界まで余裕を残している場合、再度の放射線治療を試みる可能性を開くものと思われる。今後、さらに症例の積み重ねが期待される。

※本ケースレポートはBiotherapy第20巻 第1号 87-90ページに掲載の症例報告「切除不能膵癌に、gemcitabine・少線量放射線・CD3-LAKによる集学的治療が有効であった1例」を要約したものです。

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References

1. Egawa K. Immuno-cell therapy of cancer in Japan. Anticancer Res. 24(5C):3321-6, 2004
2. Yamamoto T, Yoneda K, Ueta E, Doi S, Osaki T. Enhanced apoptosis of squamous cell carcinoma cells by interleukin-2-activated cytotoxic lymphocytes combined with radiation and anticancer drugs. Eur J Cancer, 36(15):2007-17 2000
3. Nakagawa K, Omori N, Hashimoto K, Yamamoto T, Tsunoda T, Nose T. The combined effect of lymphokine activated killer cell and radiation therapy on rat brain tumor in vitro. Biotherapy, 4(2):109-15 1992
4. Dybal EJ, Haas GP, Maughan RL, Sud S, Pontes JE, Hillman GG. Synergy of radiation therapy and immunotherapy in murine renal cell carcinoma. J Urol, 148(4):1331-7 1992
5. Kamahora T. Personal communication
6. Awwad M, North RJ Radiosensitive barrier to T-cell-mediated adoptive immunotherapy of established tumors. Cancer Res,50(8):2228-33 1999
  • がん免疫細胞治療について
    がん免疫細胞治療とは、身体のなかでがん細胞などの異物と闘ってくれる免疫細胞を患者さんの血液から取り出し、人工的に数を増やしたり、効率的にがんを攻撃するよう教育してから再び体内へ戻すことで、免疫の力でがんを攻撃する治療法です。この治療は患者さんがもともと体内に有している免疫細胞を培養・加工してがんを攻撃する点から、他の治療のような大きな副作用はなく、また抗がん剤や手術、放射線治療など他の治療と組み合わせて行うこともできます。治療の種類にもよりますが基本的には2週間おきに採血と点滴を繰り返す治療となります。当院では、治療に用いる細胞の違いや培養方法の違いにより、樹状細胞ワクチン療法、アルファ・ベータT細胞療法、ガンマ・デルタT細胞療法、NK細胞療法の四つの治療法を提供しています。
  • リスク・副作用について
    免疫細胞治療は患者さん自身の免疫細胞を治療に用いるので、軽い発熱、発疹等が見られる場合がありますが、それ以外は重篤な副作用は見られず、身体への負担がほとんどありません。副作用が少ないため、生活の質、いわゆるQOL(=Quality of Life)を維持しながら治療を続けることも可能です。
  • 費用について
    治療にかかる費用は、1クール6回~12回投与)実施の場合、治療法にもよりますが¥1,620,000~¥2,691,360が目安となります(初診料、検査費用等は除く)。