臨床症例報告No.17 (PDF版はこちら 肺転移を有するIV期肝細胞がんに対し 免疫細胞療法(CD3-LAK療法)単独にて部分寛解となった症例 瀬田クリニックグループ/新横浜メディカルクリニック 院長  金子 亨

  • 種類:肝臓

Introduction

遠隔転移を有する進行肝細胞がんには主に全身化学療法が行なわれるが、標準的治療法は確立しておらず、肝予備能の低下により肝局所や全身への抗がん剤使用が不可能な例も多い。他療法との併用が困難であったが、免疫細胞療法単独で治療開始し、非常に良好な経過をたどっている症例を報告する。

Case

症例は59 歳男性で、家族歴は特記すべきことなし。HCV 陽性の感染由来は不明で、1989年慢性肝炎にて加療後特にフォローアップはなかった。2004年6月頃、右季肋部痛を自覚したため精査を行いS2・S7・S8 の肝細胞がんを指摘された。
同年7月26日にTAE(+Epirubicin)施行も、8月5日CTで無効と判定され、食道静脈瘤と肝機能障害のためにTAEの再施行を断念された。肺転移も発見されたため8月12日よりUFTの内服による治療の開始となったが、8月30日に PIVKA-II(<40):203000mAU/ml、AFP(<5):40830ng/mlと急激に増加したため、免疫細胞療法施行の依頼にて当院を紹介された。
2004年9月1日に当院を初診された。PS は1、食事は7割程度を摂取していた。8月5日の腹部CT上、肝右葉を中心とした大小の腫瘍影と著明な肝肥大を認め、S7 の径7×5cm の主病巣を評価病変とした。9月9日の胸部X-Pでは両肺野に粟粒状の無数の陰影を認め、血液検査ではGOT(<38):366IU/l、GPT(<43):118 IU/l、血小板:9.5 万/μl であった。2週に1回のスケジュールで活性化自己リンパ球療法(CD3-LAK 法)を開始した。UFT は肝機能悪化のため中止となった。HCVサブタイプは2型であった。治療により、C型肝炎ウイルス定量値の抑制傾向および腫瘍マーカーの著明な減少を見た。2005年1月31日のCTでは、肝全体の腫瘍と肝肥大の著明な縮小とともに、主病巣も3×2cmに縮小しPR と判定した。胸部X-P 上、肺転移巣は2004年11月16日には寛解を認め、さらに2005 年6 月28 日にはほぼ消失した。
さらに、7月7日の上部消化管内視鏡にて食道静脈瘤の消失も認められた。7月12日、GOT(<38)131 IU/l、GPT(<43):101 IU/l、血小板:7.0 万/μl であった。CD3-LAK も2005年1月19日の第9回目からは4 週に1回の頻度とした。右季肋部痛に対してはデュロテップパッチを使用していたが、2005年6月頃よりは不要となりつつあり、全身倦怠感や食欲不振も消失し、PSは0、摂食もほぼ通常どおり可能となった。現在肝機能はGOT:97 IU/l、GPT:82 IU/l、血小板数は8.8 万/μl と徐々に改善傾向にある。CD3-LAKによる副作用は特に認められなかった。2006年1月11日現在、CD3-LAKは月に1回行っており、総施行回数は23回であった。

Discussion

本症例の経過中には、HCV-RNA定量値が比較的抑制されていた。本症例のHCV サブタイプは2型であったが、サブタイプの型によっても定量値の制御率が異なるとの指摘もある。
治療前の検査が施行されていなかったが2005年4月13日のIAP(免疫抑制酸性蛋白;<500)は113IU/l と非常に低値であった。他治療の適応のない状態から開始して肝および肺病巣の寛解とともにQOLの改善に寄与した効果は特筆すべきであろう。今後も画像所見と合わせて、少なくともAFP値とPIVKA-II 値の正常化までは、多少頻度を下げても継続治療をしていく方針である。

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References

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2. 柿原幸司,持田智,大西久仁彦,藤原研司. C型肝硬変症例における肝細胞癌の発生に対するインターフェロン治療の効果.埼玉医科大学雑誌第29巻第4号
3. Ebina T, Ogama N, Shimanuki H, Kubota T, Isono N. Life-prolonging effect of immunocell BAK (BRM-activated killer) therapy for advanced solid cancer patients: prognostic significance of serum immunosuppressive acidic protein levels. Cancer Immunol Immunother. 2003 Sep;52(9):555-60.
4. Takeda T, Watanabe M, Umeshita K, Goto M, Monden M. Long-term prognosis of hepatocellular carcinoma patients treated with adoptive immunotherapy. Gan To Kagaku Ryoho.2004 Oct;31(11):1646-8. Japanese.
  • がん免疫細胞治療について
    がん免疫細胞治療とは、身体のなかでがん細胞などの異物と闘ってくれる免疫細胞を患者さんの血液から取り出し、人工的に数を増やしたり、効率的にがんを攻撃するよう教育してから再び体内へ戻すことで、免疫の力でがんを攻撃する治療法です。この治療は患者さんがもともと体内に有している免疫細胞を培養・加工してがんを攻撃する点から、他の治療のような大きな副作用はなく、また抗がん剤や手術、放射線治療など他の治療と組み合わせて行うこともできます。治療の種類にもよりますが基本的には2週間おきに採血と点滴を繰り返す治療となります。当院では、治療に用いる細胞の違いや培養方法の違いにより、樹状細胞ワクチン療法、アルファ・ベータT細胞療法、ガンマ・デルタT細胞療法、NK細胞療法の四つの治療法を提供しています。
  • リスク・副作用について
    免疫細胞治療は患者さん自身の免疫細胞を治療に用いるので、軽い発熱、発疹等が見られる場合がありますが、それ以外は重篤な副作用は見られず、身体への負担がほとんどありません。副作用が少ないため、生活の質、いわゆるQOL(=Quality of Life)を維持しながら治療を続けることも可能です。
  • 費用について
    治療にかかる費用は、1クール6回~12回投与)実施の場合、治療法にもよりますが¥1,620,000~¥2,691,360が目安となります(初診料、検査費用等は除く)。