臨床症例報告No.8 (PDF版はこちら 腎細胞がん術後両側肺転移に対する単独の免疫細胞療法 (CD3-LAK)による長期不変例 瀬田クリニックグループ/新横浜メディカルクリニック 院長  金子 亨

  • 種類:腎

Introduction

腎細胞がんの好発年齢は50歳台後半で男女比は約2対1。 通常は片側発性で主症状は血尿・疼痛・腹部腫瘤であり、転移場所としては、肺・骨などが多い。Gerota皮膜内に限局した腫瘍径7cm以上のT2は、Stage IIとされ、5年生存率は63%との報告があるが、遠隔転移のあるStageIVの症例では更に5年生存率は11%と低く、予後が不良である。

Case

症例は67歳男性で、既往歴はDMにてインスリン朝14単位夜10単位自己管理中。他特記すべき事項はない。
2000年4月22日、右腎細胞がんの診断にて右腎全摘術施行、病理:RCC、G1、inf:α、pT2であった。術後、2001年6月のCTにて両側肺転移発見。7月10日から2002年7月16日までスミフェロン600万IU週1回の治療を継続するも、副作用にて中止した。12月の骨シンチ上は骨転移はなかった。2003年1月14日CT上、両側肺転移はPDの評価にて当院を紹介された。
2003年1月21日に当院を初診された。
貧血等はなくPS:0、摂食:10/10であった。BUN:34、Cre:2.7、CEA:3.2 ng/ml (<5.0)、BFP:56 ng/ml (<75)であった。2週に1回のスケジュールで活性化自己リンパ球療法(CD3-LAK法) を開始した。4月25日のCTでは肺転移巣SD。更に2週に1回のペースで12回目のCD3-LAKを投与された7月8日までPSは0、摂食は通常量に保たれた。
6月24日、BUN:39、Cre:3.01、CEA:2.2 ng/ml、BFP:49 ng/mlであった。7月11日のCTでもSDの評価にてLongSDとした。その後は4週に1回のペースでCD3-LAK投与を継続したが、10月17日CT上は腫瘍面積で50%未満の増大を認めた。2004年2月18日20回目の投与まで4週に1 回のペースとし、その後2ヶ月毎に計22回目の投与まで施行した。2004年7月初めにCT上肺転移増大し、インターロイキン2(IL-2) 療法のため入院となり、当院治療を終了した。

Discussion

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腎細胞がんの治療は根治手術を原則とし、転移症例であってもdebulkingの意味で原発巣を切除することが多い。進行腎がんに関しては有効な治療法が確立しておらず、免疫細胞療法にも期待が寄せられている。
通常臨床で行いうるものはIFN-α・γ、IL-2で、奏効率15%程度、無増悪生存期間は6~18ヶ月とされている。両者を併用することによって奏効率・無増悪生存期間の延長が期待できるが、生存期間の延長には結びついていないという。
この症例は、腎細胞がん術後両側肺転移に対し、IFN-αを1年間投与されたが、副作用にて継続困難となった。そこでCD3-LAK療法を単独で施行したところ、CT上6ヶ月間の長期不変の評価を得た。しかし、治療間隔を延長するに従い再燃し、全治療期間1年半で治療終了となりIL-2療法に移行した。
CD3-LAK療法中は副作用もなくQOLの保たれた治療経過であったが、施行頻度と継続期間および他療法との同時併用の可能性の検討が今後の課題である。

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