臨床症例報告No.6 (PDF版はこちら 卵巣がんⅢc期術後化学療法後の腟断端再発に対し、放射線療法に続いて単独の免疫細胞療法(CD3-LAK 法)を施行し寛解導入に至った症例 瀬田クリニックグループ/新横浜メディカルクリニック 院長  金子 亨

  • 種類:卵巣

Introduction

Ⅲ期卵巣がんの初回治療は、手術療法前後に、プラチナ系+タキサン系を中心としたアジュバント化学療法を施行するのが一般的であるが、組織型や残存腫瘍の量が予後を大きく左右し、特に治療後に再燃した症例は治癒が期待できないことも多く、より患者のQOL を考慮した治療計画を立てる必要がある。 

Case

症例は38歳女性で、既往歴には特記すべき事項はない。平成12年3月3日、右卵巣腫瘍の診断にて右付属器摘出され境界悪性の病理結果にて外来管理していた。
平成13年12月6日、再発を認められ、Monthly-TJ療法2クール施行後、平成14年4月4日セカンドルック手術(子宮全摘+左付属器切除+大網切除)施行、Ⅲc期、漿液性乳頭状腺がんの診断であった。術後、4月22日からWeekly-TJ療法4クール施行しCA125は137から20へと正常化した。
その後Weekly-Taxotere+ADM療法4クールを追加施行されたが、腟断端に40×75㎜大の再発腫瘍を認め、CA125も26.5とやや上昇してきたため、3月19日から5月13日にかけて、骨盤腔外照射(60Gy)を施行された。照射直後のCA125:142と上昇を見、5月14日のMRI上も腟断端腫瘍はSDであった。 
平成15年6月3日に当院を初診時のPSは1、摂食は3割程度であった。CA125:72と依然高値で、2週毎のスケジュールで単独の活性化自己リンパ球療法(CD3-LAK法)を開始した。6回投与後8月14日のMRIで腟断端腫瘍は10×22㎜とPR、CA125:45.2と低下した。12回目のCD3-LAKを投与後PSは0摂食は5割に改善した。CA125は(9/17)24.6まで低下し、13回目からは4週毎の投与としていたが、ハワイ旅行後に帯状疱疹を併発してからCA125は、(11/4)26→(12/11)32.8→(2/4)48.4→(3/23)53.9と漸増してきた為、17回目からは再度2週毎の治療に戻し、(4/20)59.1→(5/27)55.3と上昇を抑えている。 
平成16年4月27日MRIにて腟断端腫瘍消失(CR)し、その後経済的な理由から、平成16年6月15日、21回目の治療にて治療終了とし、以降の管理を主治医にゆだねた。

Discussion

抗がん剤不応となった卵巣がんIIIc期の腟断端再発症例に対し、全骨盤腔外照射に続けてCD3-LAK療法単独で腟断端腫瘍のCRを達成し、治療間隔の調節により、CA125の上昇を食い止めている興味ある症例である。
この症例のPR・CRの経過の主因を抗がん剤に続く骨盤腔外照射による晩発的影響に結論付ける議論も成り立ちうるが、CA125の再上昇の時点で、CD3-LAKの投与頻度を密にして、上昇を抑えた事実からは、上記の晩発的影響に加えて、CD3-LAKが相乗的に作用したものとの考えを否定できないであろう。更に照射後の患者は、むしろQOLを改善しながら治療を続けることができた。 

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