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HOME > 免疫細胞療法とは> 免疫細胞療法の種類と実際

患者さんから得られる材料等の条件によっても実行できる免疫細胞療法の種類は異なってきます。

1 アルファ・ベータ T 細胞療法( αβT細胞療法);血液のみで可能

リンパ球画分を抗 CD3 抗体、インターロイキン-2( IL-2 )などによる刺激を与えつつ培養して活性化させると同時に増殖させます。

CD3 分子は T 細胞表面で抗原を認識する T 細胞受容体の一部を構成する分子で、 T 細胞を抗 CD3 抗体で刺激すると T 細胞一般があたかも抗原刺激を受けたかのような影響を受けます。実際には抗 CD3 抗体を固着させた培養フラスコを用いて培養を行うと、 T 細胞にこのような刺激を与えることが出来ます。

IL-2 は T 細胞の増殖・活性化の因子で、遺伝子工学的に作られたものを使用します。 IL-2 を培養液に加えると T 細胞表面にある IL-2 受容体に結合してリンパ球の中でも T 細胞の増殖が起こります。

培養の前半で上記のような刺激をリンパ球に加え、培養液を段階的に増やしながら炭酸ガス培養器中で培養を続け、培養後半は比較的低濃度の IL-2 を含む培養液と炭酸ガス透過性のバッグを使用して、約2週間培養を続けます。血液約 23ml から得られたリンパ球を増殖させ、標準的には最終的に 2.4 リッターの培養とし、遠心分離によりリンパ球を回収し、洗浄します。培養の開始、中間および最終に無菌試験と発熱物質の混入についての試験を行い、陰性だった場合に患者さんに戻します。
このようなやり方で、2週間の培養で数十億個の活性化された T 細胞を得ることが出来ます。この方法により得られた細胞( αβT細胞 と呼ばれる)は、がん細胞一般に対する強い細胞障害活性と、腫瘍壊死因子やインターフェロンガンマなどの有用なリンフォカインを生産する活性を持っています。しかしこの T 細胞は患者さん自身のがん細胞に対する特異性はありません。



2 ガンマ・デルタT 細胞療法(γδT細胞療法);血液のみで可能

血液中のT細胞はその受容体により、αβ T 細胞とγδ T 細胞に分けられます。ほとんどがαβ T 細胞でγδ T 細胞は数%程度の割合で存在しています。したがって、血液中の T 細胞全体を抗 CD3 抗体、インターロイキン-2( IL-2 )で増殖させた場合は、増殖する細胞のほとんどがαβ T 細胞となります(アルファ・ベータT細胞療法)。
瀬田クリニックグループでは、ビスフォスフォネートという薬品を応用することでこのγδ T 細胞を選択的に活性化・増殖させる独自の培養方法を用いて、 2007年10月よりガンマ・デルタT細胞療法を開始しました。リンパ球画分をビスフォスフォネートおよび IL-2 を加えた培養液中で約 2 週間培養します。ビスフォスフォネートとしては、がんの骨転移の治療に使用するゾレドロン酸(ゾメタ®)という医薬品を使用します。

ガンマ・デルタT 細胞療法は 2005年より日赤医療センター、東京大学附属病院との共同での臨床研究を進めてきました。γδ T 細胞は、その分泌する因子、がんを認識、攻撃方法などにおいて、αβ T 細胞とは異なった様々な機序を有しており、抗腫瘍効果を持つ新しい役割の細胞として、これまでの治療法に加えてさらなる選択肢を提供できるものと考えられます。また、骨へ集積しやすいゾメタ®を併用し、骨腫瘍、骨転移への応用が期待できます。また、γδ T 細胞は抗体医薬の作用機序の1つである抗体依存性細胞傷害作用に働く細胞であることから、抗体医薬と併用することでも相乗効果が期待されます。
※ゾメタ®はノバルティスファーマ社の商品名です。


3 CTL療法;患者さんの腹水などからがん細胞が得られる場合

患者さんの胸水、腹水を無菌的にいただける場合には、その中に存在するがん細胞を用いてより有効な刺激を行うことが出来ます。
この場合、培養初期の刺激として の IL-2 や抗 CD3 抗体を使わずに自分のがん細胞だけで刺激を与えて培養します。
その後 IL-2 と抗 CD3 抗体を同様に用いて培養を行います。
このようにして得られた培養リンパ球は、患者さん自身のがん細胞に対する特異性を持った細胞障害性 T 細胞( cytotoxic T lymphocyte 、 CTL )を多く含みます。
腹水から遠心分離によりがん細胞を分離して、細胞凍結保存用の培養液を用いて細胞浮遊液とし、液体窒素中で凍結保存します。使用時に解凍すれば生きた細胞が得られ、これを用いてリンパ球の活性化と培養を行うことが出来ます。



4 樹状細胞ワクチン療法、樹状細胞ワクチン療法+アルファ・ベータT細胞療法);患者さんの手術からがん組織が得られる場合

樹状細胞( Dendritic cell, DC )は T 細胞に対する抗原提示を専門に行う細胞です。

血液より比重遠心法で得られたリンパ球画分に含まれる単球を分離し、これを GM-CSF および IL-4 を添加した培地中で培養して、樹状細胞に分化させることが出来ます。
これにがん細胞から抽出した蛋白質を貪食させると、取り込まれたがん抗原蛋白質が細胞内で分断されて異常ペプチドを生じ、これが抗原として樹状細胞表面に提示されます。

この抗原は通常、患者様、一人一人で異なっており、患者様自身のがん細胞を使用します(自己がん細胞感作樹状細胞ワクチン療法)。また、一部のがんにおいては、この抗原となる異常ペプチドが共通して存在しており、その構造も解明されているものがあります。
その場合は人工的に合成したペプチドを抗原として使用することが可能となります(ペプチド感作樹状細胞ワクチン療法)。

この樹状細胞を患者さんに注射することにより、体の中でがん細胞に対する特異的な CTL が誘導され治療効果がえられます。
なお、体外で樹状細胞に抗原を取り込ませるかわりに、分化させ、抗原を取り込む前の樹状細胞をそのまま患者様の体のがん病巣へ注入することも行われています(腫瘍内局注樹状細胞療法)。
注入された樹状細胞は病巣内でがん細胞を貪食して、抗原を提示することになります。腫瘍内局注樹状細胞療法を行うには、安全にがん病巣に針を刺して樹状細胞を注入することができなければなりません。身体の表面に腫瘍が存在する場合に主に行われますが、最近では身体の内部のがんに対しても内視鏡を使用して行うことも試みられています。

なお、リンパ球画分に含まれる単球以外のリンパ球を用いることにより1の方法でアルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)を同時に行うことが可能で、より有効な方法と考えられます。


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