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【はじめに】
前立腺癌はアンドロゲン(男性ホルモン)依存性の腫瘍である。近年欧米並みに罹患率が増加傾向にあり、ごく初期のものを含めると50 歳以上の日本男子の20.5%に発生しているとされている。時に骨転移を起こし、内分泌療法・化学療法・骨転移部の疼痛緩和のための放射線照射などが主な治療となる。
【症例】
64 歳男性で既往歴と家族歴に特記すべきことはなかった。腰痛を主訴に2004 年9 月に精査したところ、PSA 値152 (ng/ml) と異常高値を指摘され、生検にてGleason score 8 の前立腺癌と診断された。同年12 月の骨シンチグラムとMRI 検査骨上、胸椎・腰椎・仙骨・肋骨に計12 箇所の多発骨転移を指摘された(Figure 1)。酢酸リュープロレリン、インカドロン酸二ナトリウム、ビカルタミドによるホルモン療法を開始し、2005 年6 月にはPSA 値は14.8
まで低下したが、7 月以降に再上昇してきたため、免疫細胞療法の併用を希望され2005 年8 月2 日に当院を紹介初診された。9 月5 日のPSA 値は17.2 と上昇傾向で、腰椎圧迫骨折による杖歩行の状態であった。
【培養方法】
HLA-A*0201; PAP-5, PAP-10, HLA-A*2402; PAPの3 種類の合成ペプチドを抗原として選定し、8 月25 日にアフェレーシスによって回収した単核球中の付着細胞をGM-CSF, IL-4 で刺激して樹状細胞を分化、誘導した。これに3種類の合成ペプチドをパルスした後、培養9 日目にTNFα, PGE2 で成熟化刺激して樹状細胞ワクチン(以下DC と略)を調製した。また、リンパ球は抗CD3 抗体とIL-2 存在下にて培養し、CD3-LAK(LAK)を得た。
【治療方法】
DC は投与日に1.0 ml の生理食塩水に浮遊させ、0.9 mlをそけい部に皮下投与、0.1 ml はDTH 反応に供した。同時にLAK の点滴を施行した。ホルモン療法は継続した。
【経過】
右季肋部痛に対して鎮痛剤を使用していたが、4 回の治療終了後の2005 年10 月以降は不要となった。PSA 値はDC およびLAK を6 回投与後に8.7 まで低下した。DTH反応は1 回目から徐々に反応が強くなり、4 回目には強い膨隆と掻痒感を伴い33×40mm で中心部は17×20mmの強い発赤が1 週間持続するに至った。治療後の患者末梢血中のPAP5 特異的CTL をテトラマーアッセイにより測定したが、テトラマー陽性T細胞は検出されなかった。
その後、DC およびLAK を4 週毎に12 回まで投与中に再度PSA 値が上昇してきたため、3 月6 日よりビカルタミドからフルタミドに変更した上で、DC およびLAKを2週毎に18 回まで投与した。腰椎転移部のサイズを評価病変として、2005 年12 月14 日対2006 年9 月11 日のMRI による評価で不変であった(Figure 2)。第15、16回目のDC+LAK の投与開始5 分後から全身に蕁麻疹を発現したが強ミノC静注点滴によって軽快し、第17 回目以降には蕁麻疹は発現しなかった。肝機能検査値に異常なく原因不明であるが、内分泌療法の負荷もかかっており、何らかの即時型アレルギー反応と思われた。
【結語】
脊椎の圧迫骨折を伴う多発骨転移を有する前立腺癌に対し、DC およびLAK とホルモン療法との併用により9 ヶ月に渡って骨転移巣の拡大進展を抑制するとともに痛みと歩行の点でADL の改善に至った。免疫細胞療法をホルモン療法に併用することで効果の上乗せおよび、PSAの抑制期間延長につながる可能性が示された。本例では
DTH 反応が強く誘導され、治療によって非特異的免疫応答が非常に効率よく誘導されていたものと考えられたが、
tetramer assay によりPAP を認識するCTL の増加を示すことはできなかった。
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