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 臨床症例報告No.16
 
免疫細胞療法(CD3-LAK法)と ビスフォスフォネート(パミドロン酸)が
  有効であった乳がんの全身多発骨転移症例

(瀬田クリニックグループ/瀬田クリニック 院長 後藤重則

Introduction
 乳がんは骨転移をきたしやすく、疼痛などからQOLの低下が著しいケースも少なくない。転移性乳がんに対してはタキサンを中心とした化学療法の有効性が高く、繁用されている。近年、乳がんの骨転移に対してはビスフォスフォネートの有効性が明らかにされ使用されている。乳癌の溶骨性骨転移の成因には、破骨細胞の骨吸収作用が大きく関連しており、ビスフォスフォネートは破骨細胞の機能喪失、アポトーシス誘導作用を有する。
ビスフォスフォネート製剤であるパミドロン酸ニナトリウム(アレディアR)は骨転移に伴う病的骨折などの骨関連合併症の発生を減少させ、疼痛を軽減させる作用が臨床試験により証明されているが、腫瘍そのものを寛解させる効果については明らかではない。今回、全身骨転移をきたした乳がん症例において、免疫細胞療法とアレディア R が有効であった症例を経験し報告する。

Case
 症例は61歳、女性、右乳がんにて右乳房切除術後、経過観察されていたが、2001年4月腰痛あり精査したところ、多発性骨転移による再発と診断された。ホルモン受容体(EgR, PgR)は陰性であり、化学療法をすすめられたが、辞退し、温熱療法を受けた後、某がんセンターの緩和ケアー科にてBest Supportive Care のみで 経過をみていた。疼痛はしだいに増強し、2002年11月に当院を受診した。受診時の骨シンチでは脊椎、骨盤、頭骨、胸骨、肋骨など多発性転移がみられ(Figure 1)、疼痛は強度で、ADL は著しく制限され車イスを使用していた。初診時、11月26日の血液検査ではCEAは15.1ng/ml(<5.0ng/ml)、CA15-3 は374 U/ml (<27U/ml)と腫瘍マーカーが異常高値を示し、骨転移によりALP は1718IU/L(<325IU/L)と上昇を観察した。CD3-LAK 法による活性化自己リンパ球療法を2週間間隔で行う方針とした。4 回の治療終了後の、2003 年2 月6 日にはCEA は12.3ng/ml、CA15-3は410 U/ml、ALP は1896 IU/L とCEA の若干の下降をみるも他は大きな変化はなく、また、疼痛の改善もみられなかった。活性化自己リンパ球療法を継続し、2 月13 日より、4 週間間隔でアレディアR の投与も併用して行った。その後、疼痛は次第に改善し、6 月17 日にはCEA は2.3ng/ml、CA15-3 は65 U/ml、ALPは417 IU/L と著明に下降した。8 月6 日の第12 回の治療時には疼痛も著明に軽減されており、以後、経過観察となった。なお、経過中のQOL については、図中に、栗原班のQOL 調査票の身体状況と活動性の項目のスコ ア(各々、25点、30点満点)を示すが、活性化自己リンパ球療法とアレディアR の併用治療後は明らかな改善が観察された。

≪Figure 1 治療前の骨シンチ2002 年9 月20 日≫
≪Figure 2 ビスフォスフォネートはγδT 細胞の増殖、活性化因子である。ビスフォスフォネートが骨髄腫やがんの骨転移に有効なのは、破骨細胞を抑制することによるだけでなく、γδT 細胞が誘導され、がん細胞を殺傷するなどの作用によることが示唆される。≫

Discussion
骨転移に対するビスフォスフォネートの作用期序は破細胞の抑制と考えられている。しかし、最近の知見によるとビスフォスフォネートはT リンパ球の1つであるγδT リンパ球(γδT)の活性化因子であり、これが作用期序の1つになっていることが示唆されている【参考文献1),2)】。ビスフォスフォネートはin vitro でγδT リンパ球を誘導し、このγδTリンパ球はlymphoma やmyeloma などの腫瘍細胞に対する強い傷害活性を有していることが、報告されている1)。また、実際に多発性骨髄腫患者にアレディアを投与すると55%の患者でγδT リンパ球の有意な増加が観察されて、特に部分寛解を示した症例ではすべて、γδT リンパ球が増加していたことが報告されている【参考文献2)】。
  γδT リンパ球は通常のT リンパ球が有する多型性のαβ鎖からなるT 細胞受容体(TCR)ではなく、多様性の乏しいγδ鎖型の受容体を発現するT リンパ球であり、強い抗腫瘍活性を有し、腫瘍に対する免疫応答に関与している。われわれのCD3-LAK 法において治療に供する細胞の約7% はこのγδT リンパ球がしめている。骨に親和性を持って、γδT リンパ球を誘導するビスフォスフォネートに、活性化自己リンパ球療法を併用することで、その効果を相乗的に高め、腫瘍を寛解に導く可能性が期待され、今後、検討をさらに進めていく。

参考資料 
AminobisphosphonatesがγδTリンパ球を特異的に増殖させるメカニズム AminobisphosphonatesはAPC細胞(抗原提示細胞)内のmevalonate 代謝系(Cholesterol産生等に関与)の代謝産物の一つである、FPP(Farnesyl Pyrophosphate)合成を阻害する。
  従って、APCをAminobisphosphonateで処理すると、FPP合成が阻害される結果Mevalonate代謝系が回らなくなり、APC内に代謝産物の一つであるIPP(Isopentenyl Pyrophosphate)が蓄積される。このIPPがAPC表面上の分子に提示されると、これをγδTCRが認識し、γδTリンパ球へ活性化のシグナルが伝えられることでγδTリンパ球が増殖する。
  IPPがどのような分子に提示されるかということについては、残念ながら現在では解明されていないが、この活性化には、LFA-1/ICAM-1-mediated cell adhesionが必要である※という報告がある。


※図表に関してはPDF版をご覧ください PDFファイルはこちら




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