免疫とは広義には非自己としての異物 ( 自己体成分以外のもの ) を認識し排除する機構であり、非自己とはたとえば、がん細胞、ウイルス感染細胞、病原微生物、寄生虫などである。がん細胞に対しての免疫応答に直接にかかわる主要な細胞群としては T 細胞、 Natural Killer(NK) 細胞、樹状細胞 (DC) が挙げられる。がん細胞はその癌化の過程で生じる遺伝子の異常の結果、正常細胞が産生し難い蛋白を異常に産生することになる。その異常蛋白は細胞内で分断され、一部分は主に 9 個程度のアミノ酸からなるペプチド ( がん抗原 ) として、がん細胞表面に発現する主要組織適合抗原( MHC )クラスIに結合し提示される。このように、がん細胞表面に提示された MHC クラス I と異常蛋白由来のペプチドとの複合体を、この複合体に特異的な細胞傷害性 T 細胞 (CTL) の TCR が認識すると、がん細胞は CTL によって殺傷されることとなる。 MHC 分子にはクラスTとUの 2 種類があり、ヒトの場合、白血球抗原 (HLA) と呼ばれ、 HLA- クラスTとUがこれに相当し、移植などで問題となる白血球の型として知られて遺伝的に多型性を有している。これら MHC 分子の機能は抗原ペプチドを提示することで、 MHC クラスTは 8-11 個のアミノ酸からなるペプチドを結合して、主に CD8 陽性 TCR+CTL に提示して、ウイルスあるいは細菌に感染した細胞やがん細胞の傷害する。一方、 MHC クラスUは 9-20 数個のアミノ酸からなるペプチドを結合して主に CD4 陽性 TCR+ ヘルパー T 細胞に提示して種々のサイトカイン (IL-2 等 ) の産生を促すことにより、前記 CTL の活性化と増殖を促進させる。

<図1>
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ここで、免疫系の主役を担う CTL やヘルパー T 細胞を効率良く活性化し、増殖させるためには、 MHC クラスTとUを発現している免疫応答の第二の主役、抗原提示細胞 (APC) を必要とする。 MHC クラスTは、ほとんどの細胞が発現するが MHC クラスUは B 細胞、マクロファージ、単球、 DC など限られた細胞のみが発現していて、これらの細胞群を APC と呼ぶ。これら APC の中でも特に DC はがん細胞を貪食する能力が優れている上に MHC クラスTとUの細胞表面発現量が最も高いため、例えば、がん細胞を貪食した DC は異常蛋白由来のペプチドを最も多く細胞表面に提示することが出来る。さらに、 DC の表面には共刺激分子である B7(CD80/CD86) 分子と CD40 分子が大量に発現しており、 T 細胞上の CD28 分子と CD40L(CD154) 分子とそれぞれ結合し、これが副刺激として T 細胞の一層の活性化と増殖をもたらす。その結果、より多くの CTL とヘルパー T 細胞の両方を効率良く誘導することができるため、 DC を APC として用いることでより強い抗腫瘍免疫応答が誘導されると考えられる。
抗原特異的細胞性免疫の主体をなすものは、前述したような αβ型の TCR を持つ CTL で、がん細胞の MHC クラスTに提示されたペプチドを認識して殺傷するが、がん細胞の中には MHC クラスTを発現していないものもあり、このときは CTL の標的とはなり得ないので、 CTL によってがん細胞を排除することは出来ない。そこで、 MHC クラスTを標的することなしに、がん細胞を殺傷することができる能力を有している、 γδ型の TCR を持つ γδT 細胞と NK 細胞が免疫応答に重要な役割を担ってくる。すなわち、 γδ T 細胞と NK 細胞は MHC クラスTを発現していないがん細胞を殺傷することができる。
ヒト末梢血中の γδ T 細胞の割合は 2-6% で、そのほとんどが V γ 9V δ 2 と呼ばれる一定の γδ TCR を発現しており、更に、最初に NK 細胞表面上でその発現が確認された活性型の NK 受容体のひとつである NKG2D などを発現している。この NKG2D は、骨髄腫を始めとして多くのがん細胞表面にその発現が確認されている MHC Class I chain-related molecules (MIC)A/B を認識し、これに結合すると、がん細胞を MHC の発現の有無と型とは関係なく ( これを MHC の非拘束性と呼ぶ ) 傷害する。最近では、末梢血の PBMCs 培養中にビスホスホネート系骨代謝改善薬である aminobisphosphonate と IL-2 を加えると γδ T 細胞を大量に増殖させることが出来るようになり、 γδ T 細胞を用いた細胞治療の道が開けてきた。 γδ T 細胞は、皮膚や、腸管にも存在するが、 V γ 9V δ 2 とは異なった γδ TCR を有していて、主にストレス蛋白質等を認識する。
一方、 NK 細胞は CD3 陰性、 CD56 陽性の細胞で、 γδ T 細胞と同様に活性型の NK 受容体である NKG2D を発現しており、 MIC A/B を発現しているがん細胞を認識して MHC 非拘束性にがん細胞を殺傷する。 NK 細胞は NKG2D 以外にも、 NKp46 、 NKp30 及び NKp44 などの活性型の NK 受容体を発現していることが知られている。 NK 細胞も IL-2 の作用により、活性化し増殖する。
