がんに対する薬物療法などの全身療法の治療効果は腫瘍の縮小をもって判定する直接効果を評価尺度とすることが多い。この直接効果は、化学療法剤の場合ではその毒性、短い奏効期間を考慮すると、かならずしも患者のQuality of Life (QOL)等を含めた患者全体に対する治療の有効性を示しているとは限らない。また、免疫細胞療法は毒性・副作用が少ないと期待されている。さらに、我々の施設において、免疫細胞療法は、毒性・副作用のために治療がやむなく中断されるようなことが少ないこと、6ヶ月以上で効果の持続のある例ではその後の長期的な観察でも効果が持続することを観察している。
1999年から2004年までの間に瀬田クリニックグループにおいて1コース(患者より血液採取、体外での活性化、患者への点滴投与を1サイクルとして計6サイクルを1コースとする)ないしはそれ以上の治療を受けたがん患者は2055例であった。この内、測定可能病変を有しかつ治療前後で腫瘍の測定が行われた例は835例であり、これらの症例で治療による腫瘍の縮小効果の評価を行った。835例のうち、369例は免疫細胞療法単独で治療、466例は化学療法など他の治療法を併用していた。評価対象例は大半が切除不能の進行がんであり、臓器は肺、胃、乳、大腸、肝をはじめ各種が含まれている。また、患者の多くがFirst lineの化学療法に抵抗性の症例である。
835例のうち、完全寛解、部分寛解が観察された患者数は各々、8例、120例で奏効率は15%であった。不変のうち、最低、六ヶ月以上不変が持続している例を長期不変として算出したが、この長期不変は72例あり、これを含めた有効率は24%であった。免疫細胞療法単独で治療したグループ(369例)では、完全寛解、部分寛解あるいは長期不変は71例で、19%であった。その他の治療を併用したグループ(466例)では、長期不変を含めた有効率は28%であった。
このようなRetrospectiveな観察では治療例がすべて評価できているわけではない。先に述べたように2055例中、評価可能であった症例は835例である。評価できていない症例は治癒切除後にAdjuvant Therapyとして本治療を受けている例なども多く、評価対象から外すべき症例である。しかし、仮に評価できていない例がすべて非有効例であるとすると、有効率は長期不変も含めた場合で10%ということになる。この検討では六ヶ月以上の不変を観察した場合に長期不変として算出した。この長期不変は乳がんのホルモン療法などにおいて評価尺度の1つとして用いられてきたものである。化学療法が奏効した場合においてもその奏効している期間は平均六ヶ月前後であることも少なくなく、本治療においては毒性のほとんどないことも考慮すると長期不変は有効と判定されるに十分に足る効果と考えている。
免疫細胞療法の奏効率に関するこれまでの報告からは【参考文献1-23)】、本邦で行われる毒性の軽微な現在の方法による治療成績に関しては、直接効果である腫瘍の縮小効果で判断する場合、奏効率は、化学療法に比較して低く、10〜20%程度の報告が多い。1980年代後半から1990年代はじめの海外での報告では奏効率は20〜40%程度となっているが、これは高用量のIL-2の併用投与を行っていたことによる影響もあったものと考えられる。なお、これらの報告は多くがretrospectiveな解析であり、その場合は使用したサンプルに大きなバイアスがある可能性を常に考慮すべきである。奏効率に関しても他家の報告とかけ離れているものは、症例数が極端に少ないか、あるいは評価対象群に何らかのバイアスが生じ、非奏効例の多くが評価対象から脱落している可能性も考えられる。Retrospectiveな検討で生じがちな大きな問題点であり、最低限、検討を行った期間におけるその施設での治療を施行した全症例数を明記すべきである。これは様々な代替療法におけるデータの信頼性を問われる大きな理由にもなっているものと思われる。正確なProspective Studyあるいは無作為化比較試験による評価が望ましいのはいうまでもないが、その場合は、いうまでもなく臨床試験として正式に行う必要がある。われわれは、臨床試験としての部分は研究医療機関との共同研究として行う方針をたて、現在、大学病院を中心に5つの共同臨床試験を倫理委員会の承認を受け、開始している。
なお、われわれも含めて免疫細胞療法を施行する場合は、臨床的には様々な工夫が施されることになる。現在、本邦では活性化自己リンパ球移入療法は高度先進医療としては癌性胸腹水を対象としてはじめて認可を受けたものであり、その後に残存肝腫瘍、脳腫瘍、頭頚部がんなどで認可されている。癌性胸腹水に対しては体腔内への投与が基本であり、胸腹水が減少、消失する有効率は81%と極めて高いと報告されており【参考文献16)】,肝腫瘍に対しては肝動脈からの投与することにより【参考文献24),25)】、また、食道癌などに対しては内視鏡的に腫瘍内投与が行われ【参考文献26)】、高い奏効率が報告されており、臨床的な有用性が高い。また、化学療法との併用による有用性の報告も多い【参考文献27)】。
免疫細胞療法は細胞毒である化学療法剤などと比較して短期間で腫瘍細胞を減少させ、退縮させる効果は乏しいことが予測される。その作用機序から腫瘍細胞の量が少ない状況での効果がより高いと考えられる。したがって、手術で切除可能であった後に、残存した腫瘍細胞を排除することでの治療効果がより期待が高いと考えられる。すなわち、手術後の補助療法における再発予防効果である。現在、数多くのレジュメにしたがって様々ながん治療の現場で術後化学療法が、行われているが、再発のリスクが高くはない群においては、化学療法を施すことによる毒性を被る点に関して批判も多く、化学療法の今後の課題ともなっている。また、化学療法による再発予防に関する有効性に乏しいがんもある。その観点からも再発予防目的での、副作用の少ない免疫細胞療法が注目されている。これに関する過去の無作為化比較試験は3つの報告がある。いずれも本邦で行われたもので、肝細胞癌、肺癌、卵巣癌の手術後に行われた【参考文献28-30)】。いずれの試験においても免疫細胞療法をAdjuvantとして術後に施行することで生存率あるいは無再発生存率の有意な増加が観察されている。
本邦治療成績報告
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