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HOME > 細胞培養とは > NK細胞とCD3-LAKとの比較
 

最近「NK細胞療法」を標榜するクリニックが多く現れています。これらのクリニックからはNK細胞はαβT-LAKより優れているという主張もあり、患者様からこれに関するお問い合わせを多くいただいております。「NK細胞とは何か」また「NK細胞療法とアルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)との関係」について解説します。

まず、がん細胞を殺傷する免疫細胞の代表で、1 個、1 個の力が1番強いのは「 抗原特異的キラー細胞 」 (cytotoxic T lymphocyte, CTL)です

がん細胞の中で作られたがん抗原蛋白質は、細胞内で分解されて小片となり、主要組織適合抗原(major histocompatibility complex, MHC )という分子と結合して細胞表面に持ち出されます。これを「MHC による抗原提示」と呼んでいます。
一方Tリンパ球の細胞表面には「T細胞受容体」( T cell receptor, TCR )という分子があって、これが抗原提示したがん細胞の MHC に結合し、その結果 T 細胞は活性化されます。図1 ; MHC で提示されるがん抗原は患者様のがんごとに違っています。その一つ一つのがん抗原に対して個別に(特異的に)結合できるTCRを持ったCTLが、身体の中には少数ずつ存在しています。この CTL は結合できる抗原を提示した MHC に出会うと、爆発的に数を増やし、実際に相手の細胞を殺す力を持つようになります。
つまり、 CTL はMHCを持っているがん細胞でなければ殺傷することが出来ません。またT細胞は爆発的に数を増やす力を本来持っています。
ちなみに、 CTL を効率よく活性化させることを専門にしている免疫細胞が、樹状細胞ワクチン療法に用いられる「 樹状細胞 」という免疫細胞です。図 1;

では NK 細胞 はどうでしょうか。
NK 細胞はほぼ均質なリンパ球の一種として体中に多数存在していて、がん細胞を殺すために数を増やす必要はあまりありません。
NK 細胞は TCR を持っていません。その代わりに細胞表面に、 NKG2D や TRAIL などの分子を有し、これらがそれぞれ、がん細胞の表面にある MICA 、 MICB 、あるいは DR4 , DR5 などの分子と結合してがん細胞を捉え、これを殺します。( 図 1; これらの MICA 、 MICB 、あるいは DR4 , DR5 はがん細胞ごとに個別に違う抗原分子ではなく、いろいろな細胞が共通に持っている分子です。
一方、 NK 細胞の表面には KIR (killer inhibitory receptor) という分子があり、これが相手の細胞の MHC に結合すると、殺傷能力が阻害されます(注)。したがって、NK細胞は MHC を持っている細胞は殺さない のです。また、 NK 細胞には、 T 細胞のように爆発的に増えて働くという性質がもともとありませんから、培養してある程度増やすことはできても、 T 細胞のように大幅に増やすことは困難 です。
がん細胞の表面から MHC が消失してCTLの攻撃を逃れるようになっている場合もあることが、特にステージの進んだがんでは報告されています。このようながんに対しては、 NK 細胞は有効な治療用細胞になり得ると思われます。しかしがん細胞の多くが MHC を欠失しているというわけでは決してありません。

次に、瀬田クリニックグループの治療で用いる アルファ・ベータT細胞療法ですが、ここでは、 TCR に対する抗体( CD3 抗体)を用いて、抗原提示を受けたかのような刺激を T 細胞の全体に与え、同時に高濃度のインターロイキン2( IL-2 )で刺激します。そうすると、 T 細胞全体が爆発的に増殖し、高濃度 IL-2 の影響で NK 細胞と同じ NKG2D が大量に細胞表面に現れてきます。 図 1; 。実際に瀬田クリニックグループでの αβT-LAK の培養過程における NKG2D の発現量を図 2 に示しますが、高濃度 IL-2 による培養によって、培養細胞全体の総 NKG2D 量が数 1000 倍に増加してくるのが観察されます。 NKG2D は NK 細胞と同様に、がん細胞表面の MICA, MICB という分子と結合してがん細胞を捉え、これを殺します。 MICA, MICB という分子は、細胞にストレスがかかり異常となった時に出来てくる分子です。細胞のがん化やウイルス感染は細胞にとってのストレスとなります。つまりこれらは取り除かれるべき細胞の目印なのです。そして αβT-LAK は NK 細胞とちがって、活性を阻害する KIR を持っていません。したがって、 αβT-LAK は MHC を持っている細胞も殺します
勿論、同じ αβT-LAK でも培養条件などでその機能や活性は大きく変わります。培養条件等が十分検討され、十分管理されていることが、良いαβT -LAK 療法を提供する前提です。
このように、αβT-LAK 細胞は、大量に増殖させて治療に用いることができて、 MHC の有無に拘わらずがん細胞一般に結合してこれを殺傷するキラー T 細胞が主体です。それに加えて、抗原特異的な CTL や、キラー T を補助するヘルパー T 細胞や少数の NK 細胞も含まれています。 現時点で実用になる活性化リンパ球としては、考えられる最良のもの だと言えます。

注; T 細胞の重要な働きの一つは、ウイルス感染症の時に、ウイルスが住み着いた細胞をウイルスごと取り除くということです。細胞にウイルスが感染すると、細胞内で作られるウイルス蛋白が HLA によって細胞表面に抗原提示され、これをT細胞が見付けて殺傷します。ウイルス側としては T 細胞の攻撃を避けなければなりません。そのためにウイルスが持つようになった一つの性質は、感染した細胞が HLA を作らないようにしてしまう能力です。実際に MHC が細胞表面から消失してしまうという現象は、ウイルスの持続感染の場合によく見られることです。そうなると、生体は T 細胞によってウイルス感染を防ぐことはできなくなりますから、それに対して MHC を持たない細胞を殺すことを専門にするリンパ球として、 NK 細胞を発達させてきた ものと思われます。

* T 細胞の活性化には TCR からの刺激だけでなく、「副刺激」が必要であって、 αβT-LAK ではこれを与えていないから駄目だ、という意見もあります。 IL-2 濃度が低い場合にはその通りです。しかし、高濃度 IL-2 存在下では副刺激を与えた場合と同様の活性化が起こります。

図1 がん細胞に対するキラー活性 
     ※画像をクリックすると拡大します。


図2 αβT-LAK の培養過程における NKG2D の発現量

 

 


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