日々、先端医療機関で研究が進められています
1980年代後半に創始された活性化自己リンパ球療法、1990年代から開始された樹状細胞ワクチン療法が、がん免疫細胞療法として現在まで行われてきています。瀬田クリニックは1999年の開院以来10年間、これらの治療を実地医療として広く提供してきました。その間、併せてわれわれは基礎免疫学の進歩を背景に本療法の進化、発展を目指して多大な研究開発を行ってきました。
免疫細胞療法はいわゆる分子標的治療の一つです。分子標的薬とは、従来の細胞毒性をその作用とする化学療法剤とは区別され、がん細胞あるいはそれに関係する因子に特異的あるいは過剰に発現する分子を標的とする薬剤です。上皮成長因子受容体(EGFR)、血管内皮増殖因子(VEGF)、Her-2、CD20などを標的分子として作用するたくさんの薬剤が開発され、承認されてきました。免疫細胞においても同様で、がん細胞上に特異的に発現する分子が同定され、それを標的として攻撃、殺傷するさまざまなタイプの細胞が明らかにされました。免疫細胞としては、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)およびそれを誘導する樹状細胞、アルファ・ベータT細胞、ガンマ・デルタT細胞、NK細胞、NKT細胞などに関してそれぞれの免疫応答の機構がかなりのレベルで解明されています。CTLの標的分子はがん細胞上の主要組織適合抗原(MHC)とそれに結合したがん抗原ペプチド(9mer程度のアミノ酸)のみです。また、活性化されたCD8+アルファ・ベータT細胞、ガンマ・デルタT細胞、NK細胞などは、異常細胞に特有に発現するMIC/A、Bをはじめとしたさまざまな分子を標的とします。また、ガンマ・デルタT細胞、NK細胞はがん細胞に結合した抗体のFc部分も標的として抗体依存性にがん細胞を殺傷します。なお、NK細胞はMHCにより抑制を受けることから、いわば、MHCが負の標的分子ということもできます。したがって、免疫細胞療法はこれらのがん細胞上の分子を標的とした分子標的治療なのです。
患者さんごとに、最良の治療法を提供していきます
分子標的薬においてその有効性を引き出すうえで重要なことは、その標的とする分子が治療を受ける患者のがん細胞上に発現するか否かを予め調べ、治療法を適応することです。単に病名、病状によって治療法を決めるのではなく、治療法の個別化が必要になってきます。ハーセプチンはHer-2陽性の患者に適応となり、イレッサはEGFRの変異のある患者さんにおいて奏効率が高く、リツキサンはCD20陽性のBリンパ腫に適応となります。
この治療法の個別化は、分子標的治療である免疫細胞療法においても同様であり、実際の医療に応用されなくてはいけません。たとえば、樹状細胞が誘導するCTLの標的となるMHCの発現は、約半数の患者さんのがん細胞で消失あるいは高度に低下していることが明らかになりました。これらの例では樹状細胞ワクチン療法などの効果の期待は薄く、また、逆にMHCが強く発現している場合はNK細胞は抑制が働き、作用が乏しいということになります。抗体医薬を使用するケースでは、がん細胞に結合した抗体医薬のFcを標的としてガンマ・デルタT細胞療法等を併用することによって、抗体依存反応の効果を高めることが強く期待されます。
瀬田クリニックグループでは、各免疫細胞を選択的に培養することに成功し、患者さんごとに最良の免疫細胞療法を選択し、個別化医療を推進しています。それによる成果は今後、学術的な場を中心に発表していくことになるでしょう。



